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記事一覧

【詩】calm

【詩】calm

街角に月が上る
なんてことない日々の隙間から
ふと君の名を口にする

夜話しのつづき
君にだけ使えた言葉
もう忘れてしまった声

叶わなかった夢を
君は寂しさと呼んで
何一つ言えない僕の横で
そっと撫子に水をやった

とけた雪の消える朝
旧り行く全てに
終わりを告げた君のこと

ここに花束
僕の心は凪いだまま
無情な秒針だけが音を立てる

画像 : お借りしました

【詩】杪夏

【詩】杪夏

窓辺に日は射す
ほったらかしの文字は
どうしようもない僕に比例する
君は僕にやさしさを教えた

とけている僕らに
ことばはいらなかった
忘れた心音が響きわたる

気まぐれに雨は降る
燕はもうじき去るだろう
追い風にのって
またくる春をその羽に待って

大人になっても
分からないことだらけだ

でも、全てそのままでいいから
君のいる記憶だけは
消えないでほしいと願う

杪夏
君のワンピースがゆれてい

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【詩】月のうさぎ

【詩】月のうさぎ

軸のない夜
ふやけた心臓
街があって月のうさぎは踊る

底なしの二人ごっこ
一と一にしかなれない僕ら
そっと目を背けた
宵の静けさに埋もれる声

心も体もここにあること
なにもかも忘れる
言葉の届かないことすら
気づけなくなる

剥き出しの命
伝えること 疎うままで
エンターキーを連打して

こんなに真っさらで
距てるものはなくとも
離れていくもの

僕らは間違って、月のうさぎは帰る

画像:お借

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【詩】花束

【詩】花束

花束抱えて
アスファルトを歩く
さよならの愛に含まれるのは
寂しさの中の儚い光

君と僕が永久に離れることは
君と僕のたましいが
隣りあわせになることをいう

もっとずっと近くなって
君がふわふわと
僕のまわりを飛んでいく

見えなくなることは
終わりじゃない

今までとは異なる僕らの
はじまりの合図
髪を撫でる風にも君を想う
ありがとうは色づく

さよならの愛は
昇華することを知らない
透明の糸

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【詩】only U

【詩】only U

コペルニクス的転回の
訪れを予感させる
音のなる方には
待ちくたびれた夜

走る

うつくしい玻璃を
ふりそそぐ世界の中から
掬いあげる
僕の五感をもてあそぶもの

only U

冒険心をつかんだ
そのまま飛びこむ
ままならないスニーカーは
川のほとりに置いたままで

走る

今わかることだけで
息をしていたい

I only wanna be with U.

このストーリーはフィクションです

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【詩】バスタブ

【詩】バスタブ

スピーカーから流れる
バスルーム・リフレクション
音と音にはさまれて
私はくもった鏡に落書きする

水に浸したロンリネス
じゃぶじゃぶ洗って
ぷかぷか湯船に浮かべる

裸になれば分かること
見ないフリして
ひとりぼっちになる私を
誰かタオルでぐるぐる巻きにして

泣かなくなる日なんて
いらないけれど
気づかれたくない心の弱さは
バスタブにこぼしたまま

そんなこと忘れたみたいに
星たちの声がとどろ

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【詩】なんでもない

【詩】なんでもない

日に灼けたページに
はさんだままの思い出
ヘッドフォンからこぼれた
心の惑いと韻と光

ひとりきりの夜
止まない五月雨
しゃがみこむ僕
堰きとめるのは
君のくれた言葉

なんども書いて
なんども消して
ループをループするうちに気づく

とぎれることのない日々の中で
生きていたいのは君のせい
もがいているのも君のせい

白いリネンのシャツに
そっと咲う横顔
ひなたに風が吹く
透いた空がきれいだ

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【詩】Just be with me.

【詩】Just be with me.

なだらかに凪ぐ
そして分かる
君は自分を蝋燭だと、
はじまりもおわりも
選べないとこぼす

透きとおった肌
おとといの呟き
空の上の光になりたい

雨のベールはきれいだ
君のこぼした涙も
含まれているのだろうか
ビニールの傘で受けとめる

所在なげに舞う
ぶっきらぼうな天使
空はすぐそこだよ
しゅんとした僕に囁く

息のつづかない可惜夜
僕はまだ、
ここで君と今を知りたい
ただ僕のそばにいて

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【詩】夏影

【詩】夏影

仄々明け

海岸へと続くゆるやかな坂

にぎりしめた記憶

ウミネコの繊細な羽 

清も濁もいつくしむことができたなら
あふれやまぬ焦燥感を
すこしは手放せただろうか

何もない日なんてないこと

心の隅になつかしい音色

夏影に君は咲く

終わらない宿題は今でも散らかったまま

まわりを見てばかりの扇風機は
いつからだろうか
跡形もなく消えていた

晴れた日の午后

レモネードに氷がとける

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【詩】古の迹

【詩】古の迹

少年は森へ往く
葉がひらり飛来する
おとぎにつられて
畏怖のつめたさに触れた

まどろみをくぐる
枯れた木のそばで眠る
消えていったものたちが
僕らに語るもの

だれひとりとして
気づくことのない深層に咲く花
洞の奥に光る涙
生きるものたちの旋律
ほほえみは幻

記されることのない古から
廻りつづける道

旅人であることを忘れ
抗い争い戦い傷つき
無情を怖がる

落とし物が ぽつり ぽつり 
幽か

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【詩】勿忘草

【詩】勿忘草

野に咲く勿忘草に
君をさがしている
湖に映りこんだ月光は
きらきら瞬く記憶へと帰る

僕が僕でいられたこと
風になびく教室のカーテン
君の放った言葉
さかのぼる景色を抱きしめる

春のかたみを拾い集めた
初蝶が舞っている
ひらひら ひらひら
星に紛れてあの日の君が呼んでいる

此処にいるよ

あふれた僕が滔滔とながれていく
もっと君を見せて
思い出せなくなった声を
もう一度聞かせて
いつまでも僕を

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【詩】3階のベランダから

【詩】3階のベランダから

これまでのことを借り物と思えば 
すっかり手放してしまえる
そうノートに書きとめた

つぶれた心が床に落ちる 
ぼとり 重たい影をのこして

窓を開けて風をまねいた 
今日はどんな一日だったの?
頬をなでる涼しさは
小さな孤独をふくらませる

笑われることにはもう慣れた
そんな生き方しかできないことを
責めたてる自分はもういない

刻一刻と迫る明日に
気まぐれと衝動をこじつけて 
遠ざけた嫌悪をま

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【詩】右左右

【詩】右左右

右左右

忘れじの昼下がり
からからとした空気
標識の色彩にたじろぐ
対岸に咲こうとする君が
音もなく佇む

横断歩道の白い線を
僕と君の境界線を
ぼかすばかりの春霞

右左右

君といると僕は重力を知らない
幽玄な君の雫が
くぐもった世界をも潤した
ただ此処で息をしているだけで

行き止まりには印をつけて
手間を疎わず進んでゆく

右左右

透明な膜は消えてゆく
花の香がたち込める
いつになく解

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【詩】一輪草

【詩】一輪草

さざめく心を陽の光に晒した

縋りついている
記憶に生かされている
僕はまだ君のせいで生きている

残ったものを何に喩えよう
託された祝日を愛のありさまを
表したいのだ
思わず君が息を吹きかえすほどに

この唄の意味さえ
風は蝕んでゆく
葉が朽ちてゆく
その夜に一輪草が芽生える

はじまりは花筵
おわりは春の星
忘れることのない日々のかけら

僕のランゲージは
君のくれた本当で満たされている
異な

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