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【詩】Licorice

【詩】Licorice

リコリスが咲いている
ときどき白く
迷いのない赤さを振りまく
正しさを選ばず
言葉に臆することなく
ただ風のままに佇む

かつて君にこう言われた
「逃げることができてラッキーとか思ってるでしょ」

取り憑いて回る過去
なんで?どうして?それから?
奇妙な変遷は人の心を掴む
嫌でも否は選べない

分からないよ
君には永遠にこの苦い痛みが
分かるわけもないよ

突風に吹かれて
好奇心なんて飛んでいけ

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【詩】バンシー

【詩】バンシー





ひとつの文字
ひとつの発音





いくつもの呪縛
いくつもの恐怖

あなたの知る私は
あなたの鏡

本当の私は
あなたから見えない場所で
ひとり泣いている

窓辺のサボテンが静かに溺死するほど

画像:自作

【詩】ポラリス

【詩】ポラリス

詩を束ねるとき
言葉を結うとき
常々あなたを想い浮かべているので

したがうと私は
あなたのために書いていることになります



波が消えていく
あらゆる塵を含んだまま
しとしと彼方へ向かっていく

感情がつんのめって
前へ進めないときには
その口ぐせを愛します

まだまだこれから
まだまだこれから



知らない街の
知らない笑顔が私を擽る
心は呼吸を知った

隙間なくカモフラージュしても

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【詩】そんなプロット

【詩】そんなプロット

少し寂しくなった
月の夜の中 君は白く消えて
僕のままで追いかけた
足跡だけがまだついてくる

心の糸をなぞったら
君の名前にたどり着いた
紡いで気づく
きれいな世界と傷の色

ふくれ雲が浮かぶ
ゆらいだ記憶の反対側に
まだ知らない君がいる
漣だけが今は懐かしい

いつか会いに向かうよ
まだ裸足だけれど
何遍もの詩を綴りながら
僕はきっと大人になります

画像:個人撮影

【詩】風鈴を追いかけて

【詩】風鈴を追いかけて

手のひらにつたわって
腕をとおって
肩をすぎて
喉までとどいて
口からでた

「 好き 」





でももう遅い
私の顔を凝視する君

風が運んでくる涼しさに
遠のいた煌めきが
戻ってきそう

無人駅に
等身大の影がふたつ

「 うん 」

アイスキャンディーみたいな
冷たい返事
なんて思って見たら
真っ赤な君が隣にいた

汗ばんだまま
古びたバス停まで歩いた
夏霞の中で
溶けてぽたぽた落ち

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【詩】対峙

【詩】対峙

世界と対峙する心を持つ

それは

風に吹かれても
雨に打たれても
私はここにいるということ

及第点

私は私のままでいることで
私という存在の
しなやかさを磨くことができるということ

人という生き物を
特筆すべき理由はいくつもある

見渡す限り人知の産物
あれもこれもそれもこれも

いらぬ言葉に踊らされて
食いちぎられて
見るも無惨な姿 滑稽な装い

罪深きを知るものは
自らを律することに徹

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【詩】あっちむいてほい

【詩】あっちむいてほい

あなたはわたしを
いともかんたんに

ていぎする
ていぎする
ていぎする

ぬるいことばで
そのうつろなせかいで
ねずみほどのしりょくで
ちっぽけなおくそくで
たかがすうじゅうねんのけいけんで

うちゅうではじめてのわたしを

ていぎする
ていぎする
ていぎする

がむしゃらにいきる
わたしのさいぼうをけとばし
さけぶこえをほうりなげ
ききなれたことばでこっぱみじん

でも

わたしのことなんて

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【詩】あしあと

【詩】あしあと

ねえ君は何が書きたいの

知らない
わからない
でも言いたいの
言いたい何かが喉の奥につっかえてる

だから

書いた

本能に支配されてばかりの獣も
人間らしく人間を生きる自分も
届かないあの人への祈りも

たぶんきっと書いてきた

それなのに
まだ空っぽになれなくて
全部全部ここにいて
変われない自分を生きている

何度タイプしても
やっぱり楽になるなんてことない
幸せはここにあるわけじゃない

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【詩】頁

【詩】頁

廻る線を
すこしだけ引っ張る
何もくっついてこない
糸が意図を絡みつけて
眼前に迫るまで
ただこの部屋で息をする

そうこうするうちに
次の頁がいなくなる
君の母は偉大だ
君のような世界を
その体だけで生み出せるのだから

頭が生きている
分かろうともがいている
そんな気持ちがひた走る
人生の中の人生にもぐり
俄かに信じがたい彼らを
気づけば再び愛している

画像:自作

今日、久々に本を読みまし

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【詩】こわい

【詩】こわい

こわい

こわい

息を止める寸前みたいに生きてたら
社会とかいう周回軌道上に乗っかっちゃって

うまく笑えてる?
上手にできてる?

そまることに慣れてしまうのは
悲しさだって
叫ぶことさえできない檻の中

それっぽいことをそれっぽくやって寝る
それっぽいことをそれっぽくやって死ぬ

意思のない怪物みたいだよ

こわい

こわい

そんなふうに生きるのがこわい

でも、こわいじゃなくて怖いを知っ

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【詩】ただいま

【詩】ただいま

覗けるところは覗いたし
歩けるところは歩いたし
それでもずっと見つからない

いきなり土砂降り
泥まみれでも気にしない
見つけたいの
探し物が何なのか知りたいの

ぬかるむ道を歩く
転んですりむいても気にしない
わからないの
自分が誰なのか知りたいの

人波が教えようとする
お前は偽物だって
どっかいけって
どうでもいい存在だって

うるさいくらいに光る星を
右手でつかもうとする
君は今もそこにい

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【詩】君の春

【詩】君の春

ふと蘇る声
歩く町の風
忘れるのはきっと
ゆれる桜の中

もう大丈夫って
言い聞かせるだけじゃ
体は動いてくれない

木漏れ日に濡れた
アスファルトを跨ぐ
会いたいって言ったら
君は何て言うかな

水槽を泳ぐ魚みたいに
きれいに泣けたら
コップの中は満たされたかな

今分かることだけで
息をする今日を
少しでいいから照らす何かが
君の春にも
きっと訪れますように

画像:自作

【詩】やまのぼり

【詩】やまのぼり

裸のまま
私のまま
歩いていただけ

生身のまま
ありのまま
歩いていただけ

ただそれだけだった

いつからかなぜだろうか

殴られて
叩かれて
蹴飛ばされて
罵倒されて

もう何も感じなくなるくらい

森の中で目が覚めた
小鳥が鳴いているなんてことはなくって
綺麗なお花も咲いていなくって

ただ
こんなところまで来ていたことに驚くばかり

それでも私はまた歩き出した

前にしか進めないことを

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【詩】よく見て

【詩】よく見て

街灯ひとつとっても
いろんな個体がいて
謙虚に俯いたまま
通りすがりの人を照らしている

よく見て

息をしているものと
息をしていないもの
本当に分けることができる?

かわいそうを乱用して
更なるかわいそうが生まれることを
本当に許せる?

他がためだけに
そこに居座るあれこれを
当たり前に当たり前と呼んで
君は今日も平穏を手に入れる

よく見て

君を囲うすべての事象を
君を誘うすべての存在

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