私の子育てはまだまだ甘っちょろいもんだった
今回の記事はある本と出会い、
①子育て感が変わったということ
②障害を持った子供を育てる家族の見方が変わったということ
③医療者としての態度が変わったということ
について書いています。
今、子育てに悩み「少し、しんどいな」と感じている人、子供と接することのある医療者に読んで欲しいなと思います。
今回、読んだある本とは「私たちはふつうに老いることができない:高齢化する障害者家族」と言う本です。これは2020年5月に出版された比較的新しい本です。すごく考えさせられる、「はっ」と気づかせられる本でした。
私の日々の子育ての奮闘
子育てをしたことがある人なら必ず、子育てに悩み、体力的にも精神的にもしんどいと感じることが1度や2度くらいはあると思います。
かく言う私も1才の子供と一緒に暮らしていますが、悩むことや不安に思うことは当然あります。
また仕事との両立が難しく、時にはイライラすることも・・・頭で分かっていても、ダメだって分かっていても少し態度に出てしまうことがあります。
今回、私は先ほど紹介した本を読んだことでいかに、自分が未熟だったかということに気づかされました。
子育ては「地獄」
この本は障害を持つ子供を育ててきた親へのインタビューをまとめた本になっています。
そのインタビューの中で多くの親から言われたことは
「子育ては地獄」
と言う言葉。
確かに子育ては簡単ではありません。
思うように寝てくれない、なんで泣いているか分からない、ご飯を食べてくれない、ヤダヤダばかりで言うことを聞いてくれない・・・でも仕事も家事もまあある・・・「あーーーーー!」みたいな感じで夫婦共にグッタリなんて日がほとんど。
でも地獄だなんて感じたことはありませんでした。
それは、我が子は可愛いし、日々成長する姿に驚き、喜び、そして将来どんな大人になるんだろうと勝手に夫婦で想像してみたりすることが出来るからなんですね。
どんなに毎日大変でも、その日々の連続の中で将来への希望があるから、地獄とまで感じることはありません。
でも障害を持つ子供を育てる親のほとんどは「地獄」と答えたそうです。
この記事を読んでくださっている方の中にも障害を持っている子供を育てている方がいて、気分を害したとすれば申し訳ありません。もちろんそんな風に感じていない方もいらっしゃると思います。あくまでも今回の読んだ本でインタビューされた方々の発言です。
障害も本当に様々で知的障害や発達障害、先天性の心疾患から脳血管疾患、遺伝性の疾患など多岐にわたります。
私も理学療法士として医療従事者の端くれですが、正直言って全ての病気について知っているわけではありません。この本を読んでから改めて子供の障害について調べてみましたが知らない疾患名ばかり・・・。
普段から医療に関係があまりない方なら尚更知らないですよね・・・。
ここにまず1つ目の「地獄」と言われる要因があるのです。
それは世間の目です。
人は自分の知らない物に対して良く知りもしないのに勝手な解釈をつけて理解したかのように振る舞います。
今、世界中で大問題となっているコロナの感染者に対する差別・偏見・嫌がらせを思い出してみるとわかりやすいですよね。
子供の障害にだって同じことが言えます。
障害を持つ子供の家族に向けられる世間の目
この本は障害を持つ子供の家族へのインタビューによって構成された本です。
私には理解し難いのですが、こんな風に言われてしまうのが現状のようです・・・。
「あなたがタバコを吸ったからよ」
「○○と言う名前の画数が悪いからいけなかったんだよ」
「自分が好きなように働きたいから子供を施設に入れたのね」
「要は子供を施設に捨てたんでしょ」
良くも知りもしないのに、こんな風に言われてしまうのです。ちょっと信じられませんよね。
その他にも「育て方が悪い」「しつけ方が悪い」などは日常茶飯事、お前に何がわかんねん!です。
またこんなこともあるようです。
「あんた偉いねぇ」と大袈裟に褒められる
「頑張ってね」と湿っぽい声で激励される
「乙武くん(五体不満足の本で有名になった)のようなお母さんもいるんだから、あなたも頑張るのよ」と訳のわからない説教をくらう
最後の言葉はさすがに出てこないですけど、言い方はさることながら1つ目、2つ目はつい言ってしまいがちな言葉ではないですか?
わざとらしい「善意」の裏に「かわいそうな人」と見下す感じと差別意識を敏感に嗅ぎ取り、子育て中の親たちは本当は傷ついていたんだと記されています。
私たちも本当に気をつけなければなりません、言葉、態度、そして思考に。無知は罪です。知らないうちに傷つけている可能性があります。
「この子を連れて死のうか」と本気で考えた親が複数人いたこともインタビューでわかったそうです。
そんな気持ちに世間一般の私たちがさせていたのかも・・・。
今でこそ障害に対する世間の目は少しずつ変わってきているようにも思いますが、まだまだです。
田舎などの地域ではすぐに根も葉もない噂が周りますし、同居している家族などは世代によって考え方・理解度に差があるため苦しい思いをしたと言う話も聞いたことがあります。
また現に障害を持った子供を何十年と育ててきた親は高齢者となっており自分の体力や寿命、子供の将来など不安で仕方がない・・・。でも頼る人もいないそうです。
障害を抱える50歳台の子供と同居する80歳台の親が、自分の子供を殺害するという事件があったりします。もっと何かサポートが出来なかったのだろうか・・・。
方策を見つけてやれない苦しみ
障害が生じる疾患名は本当にたくさんありますが、その1つ1つの疾患によって生じる症状も多岐にわたります。
その症状に対する良い方策を見つけてやれない苦しみをずっと抱えているのです。
それが2つ目の「地獄」。
何らかの刺激に敏感に反応してしまうため外出時はなるべく人の少ない場所、騒音の少ない場所など選んで行動をする。
夜になかなか寝ないため車で人気のない場所に移動して夜明け近くまで抱っこをしてあやす。
障害を持った子供以外の兄弟の発言・行動により子供が起きてしまう、パニックになる。
ある方は障害を持った子供の兄弟が母親に話しかける時に「お母さん、今話しかけてもいい?」と聞いてくることに気付き「はっ」としたと言っています。
毎日が本当に大変なのです。本当にちょっと目を離した好きに行方不明になってしまう子供、母親の手から血が出るほど噛み付いてしまう子供・・・。
毎日どのように一緒に過ごせば良いのか試行錯誤・・・でもうまくいかない、そんな毎日なのだそうです。
そしてそんな大変な毎日を過ごしていると神経が過敏になっていて、兄弟にも少し強くあたってしまうこともある。普通であれば「今話しかけてもいい?」なんて子供は言ったりしませんよね?大人が上司に相談する時に使うくらいです、こんな言い方をするのは。
医療者はどんな言い方をしているか
この本では医療者の対応についてもふれられていました。
ある方はこのように話しています。
生活の中ではできることがいっぱい増えているのに、通園施設に行くようになると3ヶ月ごとの発達チェックで「伸びていませんね」と言われるんだよね。親としては生活の中では変わっているという実感があるのに、そんなことを言われると帰り道の車の中で涙が止まらなかった。
医療者の発言は非常に大きな影響を与えます。特に医師からの発言は。
医療従事者の端くれとして言わせてもらいますが、医師からの発言は非常に大きな影響力を持っています。
看護師や私たちリハ専門職がいくら説明をしても納得してもらえなくても、医師の発言1つですんなりと上手くいくなんて経験はざらにあります。(こちらとしては悔しい思いもしますが。)
だからこそ発言には注意をしなければなりません。
障害を持つ子供を育てる親は以下のようなギャップ、違和感を抱えているそうです。
専門職に指導される「目指すべき正常な発達」と目の前の我が子が着実に「成長している」と感じる親の実感とのギャップ
「異常」を「正常」に近づけることだけが目指される専門職の指導への違和感
我が子が障害を持っていると分かったその時から医療者も親に対して「こうした方が良い」「あぁした方が良い」など指導・説明、手技などの練習をします。
親も真剣で必死です。
真剣に向き合って行っていることを否定するような発言にだけは本当に注意しなければなりません。
さいごに
まだまだ書きたりないことだらけです。これまで書いてきたことは今回の本のまだ前半部分です。
私も子育てに悩むことが多いですが、この本に登場する方々のような悩みを感じたことはありませんでした。
なんて小さなことで悩んでいたんだろうかと恥ずかしくなります。
この本は子育ての方法が書いてあるわけではありません。でも私は今感じている子育ての悩みがいかに小さいものであるかということに気づくことができました。
また障害を持つ子供の家族に向けられる目がいかに大きな問題であるかを知ることができました。
そして医療者の言葉1つで家族の心が大きく左右されるんだと言うことに気づくことができました。
この本を読んでから、私は親として、街中では一般人として、病院では医療者として少し変われるような気がします。
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