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「摂食障害」と「骨盤矯正」

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どうもこんにちは。


「摂食障害」と「骨盤矯正」を並べて語るセラピストは、業界を見渡しても花田隼人ただ1人だと思います。


はじめに申し上げておきますと、
骨盤矯正したら摂食障害が改善した!
という記事ではございません。


今回は骨盤、もっといえば体の歪みについて、精神医学的な観点から紐解いていきます。







自分の体を正しく認識できないクライエント

ハナダもそれなりに業界に身を置いていますので、歪み系の臨床経験は相応にあります。

しかし、中でも不可解なのが、
「訴えと実際の偏位が一致しない」
クライエント
です。

「体の歪み」を訴えてやってくるクライエントの中には、「ここが下がってて、ここが曲がってて、足の長さがこうなってる」といった具体的なイメージを持って来られる方もいます。

でも実際に診てみると、「強いて言えば、数ミリの左右差があるかなー?」ぐらいしか偏位がみられなかった経験はありませんか?


「わたし猫背なのよ」と言うクライエントで、どこからどう見ても猫背には見えない症例の経験はございませんか?

これは、クライエントがイメージする身体の形状と、実際の形状に大きな乖離が見られる状態、と言い換えることができると思います。


───自分の体が実際以上に、
歪んでいるように感じる。


なぜ、そのようなことが
起きるのでしょうか?


これは摂食障害で生じる、
「身体イメージの異常」という症状と、
成り立ちが非常によく似ています。





摂食障害とは

摂食障害とは、その多くが「やせ願望」を背景に、必要な食事を摂れなくなってしまう精神科・心療内科領域の疾患です。

無秩序に大量の食事を摂ってしまう「過食」。食事量が極端に減ってしまう「拒食」などが代表的な症状です。日本では年間約21万人が病院を受診する疾患で、その多くが若い女性に見られます。近年では拒食と過食の両方が見られる症例報告が増えているとされています。

アメリカのモデル団体は、ファッションモデルの31%が摂食障害を持ち、64%が痩せろと言われた経験があると報告しています。

https://nanba-nagata.com/medical/eatingdisorders/overweight/



そんな摂食障害では
「身体イメージの異常」
きたす場合があります。


客観的に見て明らかに不健康な痩せ方をしていても「私は太っている」と認識してしまい、どれだけ痩せ細っても「私は太っているから痩せなきゃ」が長きにわたって続きます。自分の体型を正しく認識できなくなるというわけです。

クライエントを壁に立たせて、体の輪郭をペンでなぞり、そのシルエットを見せても「自分の輪郭ではない」と受け入れ難くなるケースもあります。

これが摂食障害でみられる
「身体イメージの異常」です。





体の歪みと身体的自我

ではこの摂食障害の知識をもって、改めて冒頭でお話しした、クライエントが認識する体の歪みと、実態に大きな乖離が見られるケースを思い返してみて、いかがでしょうか?

体が歪んでいる、という認識は少なからず「体の歪み=不調の原因」とする社会、文化の影響を受けて形成されています。

そのような情報に触れなければ、「私の体は歪んでいるのかも…」といった考えにはならないのが自然です。

つまり外部から「言葉」という刺激が
加わることが引き金となります。



そうした成り立ちを踏まえれば、
「自分の体が実際以上に、歪んでいるように感じる。」という“認知のゆがみ”は、身体イメージの異常そのものではないでしょうか?

そういう視点で見ると、整体分野での「体の歪み」と、精神医学での「身体イメージの異常」は非常に親和性が高いように見えます。これがハナダが構築しようとしている臨床哲学の土台にあります。






歪みの指摘は体型の指摘に等しい

歪みの矯正を求めるクライエントを相手にする中で、「私、以前かかった整体で『体が歪んでる』って言われていて、以来サポーターが外せないの...」という人に出会うことがあります。

自分が伝えた「体が歪んでいますね」という言葉が、クライエントの中で一人歩きした結果、一生涯不安の種になることなど、きっとこれを読んでくださっている先生方も望んでいないはずです。

このように、
「骨盤が歪んでいる」「体が歪んでいる」、あるいは「太ったね」「痩せたら?」というような「外部から受ける言葉の刺激」は、身体的自我の認知を揺さぶるだけの力があります。


ですから、
女性に「あなた太ってるね」と言うことと、腰痛のクライエントに「体が歪んでいますね」と言うことは、そう大差のないこと
だとハナダは考えていて、この警鐘を業界に向けて鳴らしています。





伝える際のポイント

だからといって、
「歪んでいますよ」と伝えることが必ずしも悪だとは言いません。クライエントが自分の体の状態を知ることは治療上大切なプロセスです。

注意すべきなのは、

歪みに限らず何かマイナスな要素を伝える際には、なるべく施術者とクライエントの間で「認識の差」が生まれないように配慮が必要だということです。

分かりやすくお伝えすると、
「5」と伝えた体の状態が、実はクライエントの中では「10」と認識されていたり、「2」と認識されていたりすると、施術者、クライエントの双方にとって後々不利益が生じかねません。

例えば、腱板の微細損傷として伝えたはずなのに、患者の中では「断裂」をイメージされていたとしたらどうでしょう。その患者の受けたショックは必要以上に大きくなります。体の歪みを伝えるときも、同じ配慮が必要だということです。

体に詳しくない一般の方は、提示された情報がどの程度の悪性があるもので、どんなリスクを伴うものなのか?といった情報を持ちません。どう伝えたか?よりも、どう伝わったか?をよく時間を取ってクライエントとすり合わせることをお勧めいたします。





経緯を聴くカウンセリング

ハナダは「体の歪みを正して欲しい」というニーズのクライエントには、「なぜ体が歪んでいると思うようになったのか?」について深く掘り下げて問診していきます。

他の整骨院で
言われたのかもしれません。

そこの整骨院の先生とは
どのくらいの付き合いだったのか?
長く通っていたのか?

職場や学校の人に
言われたのかもしれません。

すごく仲の良い人に
言われたのかもしれませんし、
尊敬している人に言われたのかもしれません。

テレビや雑誌などの情報から、
あるいはこの業界の広告を見て
そう思うようになったのかもしれません。

そういった「思考の経緯」に対して深いヒアリングをしていくことで、骨盤矯正を行ってあげるべきクライエントかどうかを見極めています。





クライエントの未来まで預かること。

かつてUEFA(ヨーロッパサッカー連盟)のテクニカルダイレクターを務めた、アンディ・ロクスブルク氏が残した名言がこうあります。


「指導者は選手の未来に触れている」

アンディ・ロクスブルク


卵を手に握っているイメージをして下さい。

その卵が選手の未来です。


かける言葉、行う指導、伝える指示、築く関係性の全てが、その選手の未来を変えてしまう力を持っています。その気になれば、簡単に握り潰してしまうこともできます。指導者の手と、選手の未来はそんな距離感で接しています。



我々セラピストは、
クライエントの未来に触れています。


我々が伝える言葉にはそれだけの力があります。どんな言葉を選んで伝え、どう伝わっているか? についてアンテナを張ると新たな発見があるかもしれません。


この記事が、誰かの明日のためになれば嬉しく思います。




花田は新患対応で何を見ているか?

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