マガジンのカバー画像

ドローンで見た火山

15
「鳥の目で地形や風景を見てみよう!」と題して古今書院地理に2016年8月から20回にわたって隔月連載したドローン写真を再構成しました。
運営しているクリエイター

記事一覧

溶岩と溶岩ドーム

本栖湖に流れ込んだ富士山の青木ヶ原溶岩。平安時代の864年、中腹の長尾山付近に開いた割れ目火口から遠くまで薄く広がった玄武岩である。水に接触して多数の指ような構造をつくった。 ドローンを下降させて指ような構造に近づいてみると、水面下にもそれが伸びていることがわかる。曲がりくねった尾根に火口割れ目が開いている。 静岡県伊東市の大室山スコリア丘を取り巻く溶岩も、太平洋に届いたところで指のような構造を示す。4100年前。→伊豆大室山から流れ広がった溶岩 岩手山から1732年に

マール・タフリング・スコリア丘

草津白根山の山頂部には、火口をもつ小さな火山がいくつもある。手前の緑は逢ノ峰スコリア丘。その右上に弓池マール。中央に湯釜。これはマールとタフリングの中間だが、右端に溶岩ドームもあって複合的な様相を呈する。遠方の右に傾く斜面は横手山。古い火山だ。 霧島山の御池マール。4600年前。向こうに高千穂峰。 赤城山の山頂部にある小沼(この)はタフリングだ。2万6500年前。右側の縁は溶岩ドームで締められている。遠くの大沼(おの)は火口ではない。4万4000年前に鹿沼軽石を噴出したも

軽石堆積物

十和田湖の五色岩とその上に乗る中掫軽石(6300年前)。中掫軽石の分布は丸い。中湖の四周で地表に降り積もっているが、御倉山の上だけは欠けている。御倉山が平安時代915年の噴火でできた新しい溶岩ドームだからだ。 瞰湖台(かんこだい)の脇に露出するのは南部軽石だ。中湖中心から9500年前に噴火した。そのとき中湖はまだなく、円錐形をした五色岩火山だった。東南東に細く伸びる分布軸の真下に当たるから厚さ40メートルもある。 榛名山の二ッ岳溶岩ドームと伊香保軽石。 四半世紀前に同じ場

カルデラと火砕流

大量のマグマが地下から一気に地表に噴出すると、空になったマグマだまりの中に天井が落ち込んで地面に大きな窪みができる。これをカルデラという。しばしば水面でおおわれている。その直径は10キロを超える。カルデラの周りには例外なく大規模な火砕流堆積物が分布している。 九州島の中央部に位置する阿蘇は日本を代表するカルデラである。その直径は、南北24キロ、東西17キロに及ぶ。内側に街がいくつもあって、大勢の人が生活している。 27万年前、15万年前、11万5000年前、8万7000年

山体崩壊と土石なだれ

円錐形に大きく成長した火山は、やがて山体崩壊して大量の土砂を麓に一気に押し流す。浅間山は、2万4300年前に東に向かって崩壊した。湯の平を取り巻く黒斑山の急崖がそのときの崩壊残りである。 崩壊土砂の流れを土石なだれという。黒斑山の崩壊で発生した塚原土石なだれは、長野原町応桑に多数の流れ山をつくった。現在、平坦面は畑として利用されているが、流れ山は林のまま放置されている。 岩手山が6900年前に崩れて山麓に展開した平笠土石なだれの表面にも多数の流れ山が見られる。手前の大きな

地層に割り入ったマグマ

富士山の宝永火口北西壁に露出するダイク群。十二薬師岩という。中心火道を上昇してきたマグマが、放射方向に水平に移動してつくった。1707年噴火で噴火口が拡大したときの浸食に抗して残った。  ダイクは脈(1次元構造)ではなく板(2次元構造)であることがよくわかる。多くは平行しているが、一部は交差している。ダイクの数だけ地表で割れ目噴火が起こった。 榛名山の掃部ヶ岳に露出するダイク。掃部ヶ岳は30万年前にできた古い火山体である。浸食によって周囲にあったもろい地層だけが失われて露出

火山と都市

盛岡市内を流れる北上川。左から合流するのは雫石川。背景に岩手山。中央左寄りに新幹線盛岡駅の大きな駅舎が見える。岩手山は6900年前に北東方向に大きく崩壊した。大更付近に展開した平笠土石なだれは北上川をせき止めて、下流の盛岡市に泥流被害を長くもたらしたはずだ。もしかすると、平笠土石なだれそのものが一気に盛岡市まで届いたかもしれない。 桜島と鹿児島市。鹿児島市の中心部は桜島の山頂火口から10キロしか離れていない。火砕流は海を渡ってまっすぐ届く。鹿児島市の人口は60万人。 9万

草津白根山

手前に湯釜。向こうに逢ノ峰を手前に配した本白根山。逢ノ峰の右に弓池。右遠方に四阿山。左遠方に浅間山。 本白根山の山頂域に並ぶ火口列は4800年前にできた。この大きな火口は底の中心部に鏡池をもつ。すっかり緑に覆われている。 鏡池には多角形土がある。凍結融解でできた。 本白根山は2018年1月23日に突然噴火した。東西に伸びる長さ140メートルの割れ目が主火口だ。噴出物が飛び散った範囲の樹木が枯死している。 湯釜の底には溶融硫黄がある。湖面に浮上して尾を引いている。188

浅間山

浅間山の山頂には直径400メートルの大きな穴が開いている。火口だ。火口縁に鎮座する大きな岩が千トン岩。1950年9月23日の爆発でここに着地した。火口縁ぐるりで真北を示すよいランドマークになっている。 クリックすると球面パノラマがご覧になれます。DJI Mavic 2 Proで2019年8月5日に撮影。 360度展開した写真。 2568 m 釜山東縁最高点 2500 m 釜山北縁最低点 2460 m 釜山スコリア丘/鬼押出し溶岩 火口内壁に近づいてみた。縞模様が顕著

富士山

東空中から見た富士山頂火口。最高峰は剣ヶ峰(3776m)。その右に白山岳(3756m)。手前のピークは成就岳(3733m)。その右に伊豆岳(3749m)。火口内左側に虎岩。火口内右側の平坦面は金明水溶岩湖。 山頂火口の東縁を構成する伊豆岳スコリア丘。中央にフィーダーダイクがあって、左右にスコリアが積もっている。南翼は高いところまで溶岩が迫る。北翼のスコリアの下は複雑。 北翼の拡大。下部にパッチワークが見える。2900年前の御殿場土石なだれではなかろうか。 金明水溶岩

阿蘇

阿蘇カルデラ内に3300年前にできた米塚スコリア丘。背景は北側カルデラ縁。 中岳火口から噴煙を上げる。2019年12月28日撮影。 中岳火口と高岳(1592m)。火口内に湯だまりがある。その表面から青白い煙が上昇して右にたなびいている。2018年12月25日撮影。 草千里ヶ浜から3万3000年前に噴出した軽石を含む厚い降下堆積物が烏帽子岳の上に積もっている。中景に阿蘇大橋を流した2016年4月崩壊斜面。遠景に雲仙岳。 3300年前にできた米塚スコリア丘の頂部に、201

ハワイ島

ハワイ島は、キラウエア、マウナロア、マウナケア、フアラライ、そしてコハラの合計5つの火山からなる。 フアラライの黒い溶岩と、サンゴのかけらでできた白いビーチ。砂丘の表面をグンバイヒルガオの緑が覆う。砂丘と溶岩の間には樹林帯が形成されていて、中央に池がある。遠くのスコリア丘はプウクイリ。 ハワイ島を東西に横断するサドルロードの中間点にあるプウフルフル・スコリア丘からマウナケア山頂(4205m)に向かってアクセス道路が伸びる。手前はマウナロアの1935年溶岩。 ハレポハ

地震で隆起した海岸

(扉写真)青森県深浦町千畳敷。波浪浸食でできた波食棚が1793年2月8日の地震で隆起した。できたばかりだ。山側に広い平坦面がもう一段見える。これは10万年くらい前の古い段丘だろう。 千葉県白浜町野島崎。1923年9月1日に起こった大正関東地震で1.8メートル隆起した。隆起した波食棚で灯台が取り囲まれている。海岸段丘のなかに、地震によって隆起したものがあることがここでの研究でわかった。 山際の家並みは1703年12月31日の元禄地震で隆起した段丘の上にある。その下には大正関

海がつくった地形

静岡県大瀬崎。岬の先端から駿河湾に突き出す砂嘴(さし)。ただし、この浜は砂ではなく大礫からなる。中央の神池は淡水。 千葉県屏風ヶ浦。高さ50メートルの海食崖が東西に10キロ続く。太平洋の荒波が下総台地を削ってつくった。 崖の下部30メートルは海底に水平に堆積した砂。その上に砂浜で斜めに堆積した砂が20メートル重なる。最上部には陸上に毎年少しずつ積もった泥(ローム)が5メートルある。 静岡県堂ヶ島。象島が、干潮時だけ、トンボロで伊豆半島につながって陸繋島になる。 沖縄県