【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 26(了)

中大兄の称制6(667)年2月27日、宝大王と間人大王を小市岡上陵(おちのおかのえのみささぎ)に、大田皇女をその陵の前に葬った。

 そして3月19日、天皇家誕生以来始めて、宮が琵琶湖の辺に建設された。

 近江大津宮(おうみおおつのみや)である。

 近江大津宮は、現在の滋賀県大津市錦織地区一帯に存在していた。

 その全貌は明らかではないが、発掘調査によって北側に大殿を持つ大王の政務兼居住区と

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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 25

しかし、こういった話は足が速いものである。

 宮遷しの話は、あっという間に広まり、飛鳥の住民を驚かせた。

 一番驚いたのは、難波派と飛鳥派の群臣である………………いまさら、宮遷しとは………………

 それも、いままで宮が置かれたことのない近江にである。

 彼らは噂し合った ―― これは、近江派の仕業に違いない、と。

 だからといって、宮が近江に遷されるのを黙って見ているほど難波・飛鳥派の群

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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 22

8月、百済の亡命貴族は、大友皇子に長門・筑紫の二国に山城を築くことを上申した。

 百済の亡命貴族が西国に山城を築かせたのには、唐軍の百済旧臣の残党狩りを恐れたからであった。

 大友皇子は、すぐさま中大兄に許可を求めたが、中大兄は、

「全て、お前に任せる」

 と一言言って、後はただ空を眺めているだけだった。

 大友皇子は、長門国に百済の亡命貴族である達率答本春初(とうほんしゅんそ)を、筑紫

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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 16

中臣鎌子の屋敷に着いた時には、安麻呂は肩で息をしていた。

これを見た馬来田は、

「普段、運動しないからこうなるのだ。歌ばっかり詠んでないで、たまには武人らしく、素振りの百や二百をやって見ろ! 少しは体力がつくぞ」

 と、甥の体力不足を諫めた。

安麻呂は、これに反論したいのだが、息が上がってなかなか話すことができない。

それを見て馬来田は、「情けない」と言いながら、

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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 15

大伴安麻呂は、彼の叔父である大伴馬来田連(おおとものまくたのむらじ)が乗る馬を引いていた。

 流石に2月にもなると陽気も良く、散歩にはもってこいであった。

「こう天気が良いと、気分が良いですね、叔父上」

「うむ、屋敷に籠もりっきりだと、体も鈍るからな」

 大伴家は、宮中では閑職に追いやられていた。

 群臣会議の中に一応席はあるのだが、末席のため、この一族に発言権はない。

 そのため最近

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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 14

大殿を出る時に、鎌子は金を呼び止めた。

「金、ありがとう、もう少しで衝突するところだった」

 鎌子は、金に礼を言った。

「いえ、とんでもない。内臣殿の力になれて何よりです」

 金は微笑んだ。

「如何もいかんな。どうしても中大兄と意見が衝突してしまう」

「お二人とも頑固ですからね。国を思う気持ちは同じなのですが」

「国を思う気持ちか……、そうだな」

「まあ、あまり宮内が揉めるのは如何

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お後が宜しいようで!
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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 13

唐からの表函には、飛鳥の群臣が危惧したような、戦の文字は含まれてはいなかった。

むしろ、関係を修復する趣旨の書状であった。

ただし、今回の使者は劉仁願の私的なもので、正式な唐からの使者は翌年に派遣されるとのことであった。

倭国としては、唐のこの申し出は願ったり叶ったりであった。

飛鳥の群臣は、すぐさまこの話に飛びついた、と言ったらことは簡単なのだが、やはりこ

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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 11

一つ、二つ、三つ………………

 ―― また見つめられている。

 四つ、五つ、六つ………………

 ―― あそこにも!

 七つ、八つ、九つ………………

 ―― いったい幾つあるのだろう?

 間人大王は、寝台に横になって天井の木目を数えていた。

 床に就いて以来、二ヶ月近く起きられない状態が続いたが、ここ数日は頗る調子がいい。

 しかし采女たちは、間人大王の体を慮ってか、それとも誰かに言

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第一巻 第六章 大化の改新

〇唐の最大支配領域
N「隋を滅ぼして中国を治めた唐帝国は、その支配領域の広さだけでなく、属国や周辺国からの文化を積極的に取り込む点でも、まさしく世界帝国であった」

〇飛鳥板蓋宮の一角
遣唐使が持ち帰った唐三彩(焼き物)や、ガラス器、書画などの数々の素晴らしさに、驚嘆している中大兄王子(少年)。
中大兄(M)「何という美しさだ……これほど素晴らしい芸術品の数々を、惜しげもなく下

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【歴史小説】『法隆寺燃ゆ』 第五章「法隆寺燃ゆ」 前編 10

彼は、いつの間にか宮門の前まで来ていた ―― 宮門を潜る中臣鎌子の姿がある。

 鎌子は、大海人皇子に気付き、頭を下げた。

 大海人皇子も彼に頭を下げて、通り過ぎようとした。

 ―― いた!

    ここにいた!

 大海人皇子は振り返った。

「内臣!」

 鎌子は、その大きな声にちょっと体をビクつかせた。

「は、はい! 何でしょう?」

 大海人皇子は周囲を見回す。

 宮門に2人の舎

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