死生観 -織田作之助- 篇
1.浪速のユーモアの源流織田 作之助というと、もう今の人には馴染みが薄いのかもしれませんね。しかし、その絶望的なまでに暗い物語を、見事なまでにポップに描き切った文体は、明治初期までの候文(です・ます調ではなく、語尾が「そうろう」で終わっていた文体)を、現在の日本語に仕立て直して創作した夏目 漱石を経て、上方文学の集大成(それも全国的に売れた!)です。
昭和15年、織田 作之助こと通称、織田作(おださく)が27歳のときに書いた『夫婦善哉』は、五年間の雌伏の時を経て戦争が終わ