『タクシー』 著名な占い師に薦められ、タクシーの運転手に転職した。当初は生活も不安定だったが、ある客を乗せてからは事情が変わった。それはもうこの世の者ではなかった。が、実に羽振りがよかった。その仲間も次々と乗せ、思い出巡りを手伝った。彼らの間で私は“故人タクシー”と呼ばれている。
深夜、全長160メートルの大仏が眩い後光を発しながら匍匐前進していた。山を砕き川を溢れさせ、町や村を破壊しつつどこかを目指していた。軍も出動し、包囲こそするが御仏への攻撃は躊躇され、解決の糸口は掴めずにいた。明け方、その終焉は目的地に着き呆気なく訪れた。自らの掌の上に着いたのだ。
流れ星だけで作られたという星に辿り着いた。思いのほか青くにじんだ星だ。零れ落ちた空の涙で出来た星とも言われているらしい。ここには宇宙の流れ者達が長い間降ろすに降ろせなかった傷を埋めにやって来る。その傷を養分にして育った樹が青く輝き、星の道を照らして次なる巡礼者を呼び寄せるのだ。