麻木香豆

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小説、絵を描く人間。 小説は色々なところで。 https://potofu.me/yukai3dayo

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  • シノノメナギの恋煩い

  • エッセイ

    エッセイ集

  • (BL)李仁と湊音四コマ2022

    李仁と湊音の四コマ BL作品です

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    140字小説を新旧問わず置いておきます

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第一話:シノノメナギの恋煩い

とある収録スタジオ。 初めて訪れるテレビ局にわたしはとても緊張して手汗が止まらない。 そんなわたしのてにポン、と大きな手がのる。 「大丈夫やて、練習通りすりゃええわ」 安定の関西弁の彼のその載せた手も震えてる。 「わかってる……」 その関西弁につられてわたしの東濃弁はもともと関西弁に近いテイストだけどさらに関西弁ぽくなるけど彼が言うにはまだ違うらしい。 「すいません、本番ですー!」 呼ばれるスタッフさんたちの声。関西圏発の番組だから東京でも関西の人がいるのだろうか、関西

    • 第六話シノノメナギの恋煩い

      数日後のこと。 今私は図書館前の落ち葉を掃除している。 図書館の入っている施設には図書館以外にもカルチャー教室や喫茶店が入っているし、施設全体を掃除する清掃会社の人もいるけどすぐ落ち葉でいっぱいになるから交代で清掃をするのだ。 今日はわたし。1人でこれだけ拾うのか、と思う人もいるだろうがわたしはそれでいい。 1人でただひたすら履いていればいい。その時間こそ妄想できる時間の一つ。 一つ落ち葉を拾う。これは本のしおりになるかな、なんて思うんだけどそのまま本に挟んだまま返され

      • 第五話 シノノメナギの恋煩い

        「あなたー」 「おう」 門男のところに小柄の女性が駆けてきた。近くに住んでいるのであろう。スリッパである。見た感じ50前後。そしてわたしよりも背が低い。 「あなた、老眼鏡忘れている」 「ああ、助かった」 「今日は希美が帰ってくるから。莉乃ちゃんつれて」 「おう、そうだったか」 門男が少し声のトーンが上がった。 希美、莉乃……。 娘と孫の名前? そうか、彼はおじいちゃんか……。そして小柄な可愛らしい奥さん。 「おはようございます」 奥さんから声をかけられる。 「あ、お

        • 第四話 シノノメナギの恋煩い

          なんだかんだで今日も今日とて仕事だ。この図書館にはもう長く勤めている。 大学卒業してすぐだ。地元の図書館。 大学の時に研修としていた頃からだから……うむ、長い。 好きな本に囲まれとても幸せである。最新刊を利用者の方よりもいち早くスリスリ、いや、拝むことができる……だったら本屋でもよかったのであろうが図書館で、というのがわたしの夢であった。 カウンターでの貸し出し作業、イベントの企画運営、展示物の製作、おすすめ本の選出、製本……多岐にわたる業務のおかげで毎日充実している。

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        第一話:シノノメナギの恋煩い

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          第三話シノノメナギの恋煩い

          視力が低いことが助かってか本来の姿を薄目でみて現実逃避して湯船に浸かる。 わたし自身男の体を持って男という戸籍を持ちながらも心が女の子と自覚したのは結構早い時期だった。 両親がずっと不仲で小学校に上がった頃には離婚、母方の祖母に育てられていた。 その頃に気づき、祖母もわたしの考えを尊重してスカートやワンピースを与えてくれた。髪の毛も伸ばした。中学の頃には周りの友人や大人の理解があり女子の制服を着ることができた。 今では珍しいことだったのだが顔が広い祖母が仲間達を募り声を

          第三話シノノメナギの恋煩い

          第二話シノノメナギの恋煩い

          これは数年前に遡る。 わたしは家で「新婚ちゃん、おいでやす」をごろんと見ていた。日曜昼の番組だがルームシェアをしている相方が好きな番組だと言うことで録画しているものが流れている。 わたしは普通にやっている番組もつまらないし、昔からやっている番組ともあって惰性で見ている。 最近司会者がベテラン落語家から若手の落語家に変わったとのことだがわたしはあまり興味はないが素人カップルたちとの年齢差が無くなってとても和気藹々で楽しくなったと思う。 「あー、私っていつになったらこの番組

          第二話シノノメナギの恋煩い

          縁切り、縁結び

           私は父と母の元に生まれた。  両親との出会い、これがはじめての出会いとなるだろうか。  そこから今までいろんな出会い、そして別れを経験してきた。  いろんな出会い、別れ、それらは自分の人生に影響をあたえたものもあればそうでもないし、いいご縁だったり、悪い縁だったりもする。  社会人の時に嫌な人に出会った際には京都の安井金比羅宮に行き、えんがちょー! とかやってたもんです。  きっかけは20代前半、ちょいと困った男性とお付き合いしてて本当に如何にもこうにもできなかった時

          縁切り、縁結び

          最終話

           それから数ヶ月後。スーツも仕上がり、それを着て店を出る。 「本当にお似合いで。私もお店閉めた後に向かいますので」 「いつもありがとう……シゲさん。素敵なスーツ」  湊音も新しく仕立てたスーツを気に入って店の外の窓ガラスの反射越しに見える自分の姿を何度も見入ってしまう。 「湊音さんもお似合いで。李仁」 「いつもありがとう。またよろしくお願いします」 「はい、よろしくお願いします」  目を細めてシゲさんは手を振ってくれた。李仁は少し涙目である。  なぜなら初めてスーツを作

          第十九話 元彼?

           後日、李仁はバーの店長から退職届の受理された。辞める際には盛大なパーティーをしたいとのこと。 「そういえばさ、結婚したことは伝えたけどパーティーがお互い忙しくてできなかったしミナくんのこと紹介してない人もいるから結婚パーティーも兼ねてやろうってさ」 「今更ー」 「うん、今更」 「だからスーツ新調しに行こう」 「そこまでしなくても……」  と、数日後にいつもスーツを作っているテーラーに2人で行った。  そこには190超えの初老のベストスーツを着た男が待っていた。 「いら

          第十九話 元彼?

          第十八話 嫉妬

           いちゃついた後しっかりと朝ごはんも済ませて李仁は仕事、湊音は友人の美容院へ。  美容院に入ると担当でもあり湊音たち二人の友人でもある大輝が待っていた。 最近改装したばかりの店内。いつもの個室に通される。 「ねぇ、李仁は元気?」 「うん、あ……お見舞いありがとう。快気祝い……本当は李仁が渡したかったらしいけど予約が取れなくて」 「わざわざありがとう。また僕から連絡入れておくよ」  李仁の快気祝いの品を受け取った大輝。実は彼、李仁の元彼である。李仁がいなくて心なしか寂し

          第十八話 嫉妬

          第十七話 いちゃつき

           数日後の夜、2人は宅飲みをしていた。李仁が業者からもらったサーバーから出るビールと、つまみは焼き鳥とか皮とかネギマとか砂肝とかにんにく刺しなど。仕込みは全部李仁である。  湊音はビール片手に口は焼き鳥をもぐもぐ、左手にペンを握って2人の日記帳に今日のことを書いていた。 「ねぇ、ミナ君。日記書けた?」 「うん、あと少し」 「食べながら書くとは、行儀悪いわよー湊音先生っ」 「ハイハイ」 「ハイは一回よ、湊音先生!」 「ごめんなさいっ」  いつも通りのイチャつき。2人で一冊の日

          第十七話 いちゃつき

          第十六話 家族だもの

          二人がパートナーシップ協定を結んで数ヶ月後、現実を知ることになる。  李仁が倒れたと湊音は勤務中に連絡が来てタクシーで病院に向かう。  朝、李仁は普通に料理をしていて何も変わらない様子だった。  今まで大病も怪我どころか風邪でダウンしない李仁であったが……。  病院に着いた湊音は受付に行く。 「……槻山李仁は!」 「しばらくお待ちください……失礼ですが、ご家族の方で?」  受付の人は湊音をじっと見る。彼はあがる息をコントロールして落ち着かせて 「家族です! 李仁は僕の

          第十六話 家族だもの

          第十五話 一緒に

           とある夜。寝ている湊音を眺める李仁。見つめる先は湊音の指。 『サイズを図るには今しかない……』  指のサイズ。そうである、李仁は湊音へのプロポーズを考えたのだ。  彼自身、ゲイである自分が誰かにプロポーズするということは思ってもいなかっただろう。どちらかといえば待ってる方であった。 『指輪でプロポーズってありきたりすぎるわよね』  いろんなことは交際していた男性にしてもらった方だと李仁は思うがプロポーズや結婚までは進んだことがなくステレオタイプな方法しか思い浮かばない

          第十五話 一緒に

          第十四話 希望

           2人が同居を初めて数週間後の放課後。湊音は職員室で大島と話をしていた。 「なぁ、湊音。そろそろお前らの家行かせてよ」 「あ、じゃあ今度の日曜に」 「ん、まじか。よっしゃ」 「人手が欲しくて。マットレス解体」 「なんだよ、俺は解体業者か? 俺は。妻連れて行こうとしたのに」 「冗談ですよーっ……て? 妻?!」  湊音は驚いて席を立った。大島は笑った。そして手品のように左手の薬指にさっきまで無かった指輪をニヤニヤとつけて見せつける。 「実は今度結婚しますぅー」 「えっ、えっ!?

          第十四話 希望

          第十三話 僕のもの

           二人が結ばれてから1ヶ月後。湊音は完全に李仁に夢中である。自分から求め、自分から腰を振り……目をトロンとさせている。  あっという間に湊音の体が順応していく姿を見て二人はより一層仲良くなってきた。  いまだに外で出歩く際は周りの目を気にする湊音だが、二人でいる時はベタベタの甘々になる。  二人の息は荒い。手をしっかり握り合い、互いの温度を共有させて、湊音は李仁の白い背中にキスをし、たくさんキスマークをつけた。 「つけ過ぎ……」 「他の男に抱かれないように……」 「バカぁ

          第十三話 僕のもの

          第十二話 痛みを超えた向こう側

           部屋で泣きはらす湊音。部屋の外では心配してる広見と志津子。 「ミナくんたら、ずっと泣いてるのよ……部屋の中で」 「彼氏とやらと何かあったか」 「やっぱり普通じゃないもの、男同士なんて。また傷つくだけじゃない! 子供だってあっちの勝手なエゴでタネだけ貰われて!」 「志津子、落ち着きなさい……あっ」 涙でぐちゃぐちゃになった湊音が出てきた。鞄を持ってスマホを握り玄関に向かっていった。 「ミナくん! またどこいくの」 「湊音! いい加減にしろ!」  だが湊音は無視をして外に出

          第十二話 痛みを超えた向こう側