麻木香豆

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小説、絵を描く人間。 小説は色々なところで。 https://potofu.me/yukai3dayo

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  • シノノメナギの恋煩い

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  • (BL)李仁と湊音四コマ2022

    李仁と湊音の四コマ BL作品です

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    140字小説を新旧問わず置いておきます

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第一話:シノノメナギの恋煩い

とある収録スタジオ。 初めて訪れるテレビ局にわたしはとても緊張して手汗が止まらない。 そんなわたしのてにポン、と大きな手がのる。 「大丈夫やて、練習通りすりゃええわ」 安定の関西弁の彼のその載せた手も震えてる。 「わかってる……」 その関西弁につられてわたしの東濃弁はもともと関西弁に近いテイストだけどさらに関西弁ぽくなるけど彼が言うにはまだ違うらしい。 「すいません、本番ですー!」 呼ばれるスタッフさんたちの声。関西圏発の番組だから東京でも関西の人がいるのだろうか、関西

    • 第四十七話 シノノメナギの恋煩い

      「あちらでのお知り合い? 応接室空いてるからそこで話してきたら?」  上司にそう声をかけられた。てかわざわざ大阪まで?! そうか、土曜日だし学校の仕事も休みよね。  久しぶりの仙台さん。今日はグレーのコートにその下はスーツ。  ……応接室に通した。卒業制作のことも相談を受けていたが、輝子さん(しか空いてなかった)に引き継いで大丈夫だったかなぁ。 「すいません、アポ無しで」 「……だ、大丈夫です。その」  言葉が詰まってしまう。ダメだ、仙台さんの前で。 「……彼のことか

      • 第四十六話 シノノメナギの恋煩い

         しばらく常田と会えない間は、次郎さんが大阪まで来てくれて。(女装はしてなかった)  なぜか夏姐さんも同じタイミングでこっちの研修の帰りにでくわし。そのまま三人でわたしの家で飲んだ。  夏姐さんは相変わらず仕事のことで荒れ模様。  すると次郎さんは好きだった人にふられたと言ったところから夏姐さんと共に二人は意気投合してすごく会話盛り上がってて。その隙に私はお風呂に入って出てきたら二人がキスをしていた。  そのあと二人はわたしの家に泊まってあっちの方でも意気投合してしまって

        • 第四十五話 シノノメナギの恋煩い

           あの後からの夕ご飯のきまずさといったら。  とうとうお父様にもわたしが男であることがバレてしまい(ほとんど全裸に近い形だった)、お父様は台所でお茶の用意をしていた。驚くなり怒ったりして顔も合わせてくれなかったらと思ったけど。  お母様はコタツに座って正月番組を見ている。着物でなくて黒のワンピースを着てとてもラフなスタイルである。 「さあさあみんな、すき焼き食べましょうー」  と割烹着姿の慶一郎さんがニコニコと運んできた。割烹着!! と思ったけどすごく似合う。  お茶を目

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        第一話:シノノメナギの恋煩い

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          第四十四話 シノノメナギの恋煩い

           わたしはとっさに手を隠してしまった。いつも大体手でバレるから。いや、慶一郎さんが言ったとか? そんな軽率な人には思えない、いやチャラそうだからありえる。 「手」  手を隠す、遅いだろうけど。……どうしよう、お母様にもバレてしまった。 「浩二、結構甘えてくるでしょ?」 「えっ、あっ、えっ、えっと……そうですねぇ」 「甘え上手でね。子供の頃から通院や入院中に看護師さんにデレデレして。でも口下手だからキツイこと言って嫌がられて」  あれ、わたしが男ってことはもう触れない? あ

          第四十四話 シノノメナギの恋煩い

          第四十三話 シノノメナギの恋煩い

           お昼は近くの定食屋。昔ながらのって感じね。お父様が店主さんに声をかけていて、馴染みのあるお店なんだなぁと。  どうやら予約していたようで、すぐに出てきた。幕の内弁当。豪華だし見栄えも良すぎる。これ、高すぎるよね。  この家族、無言で食べる。基本食べている時は黙ってるのかしら。  男性陣は全員食べるのが早い。そしてお母様はゆっくりゆっくり。よく見るとお母様のお重は小さめである。 「梛さん、お弁当大きめだったかしら」 「いえ、そんなことはないです……」 「浩二、やっぱり

          第四十三話 シノノメナギの恋煩い

          第四十二話 シノノメナギの恋煩い

           大阪駅の改札前に慶一郎さん……密かにまた逢えるの嬉しかったり。常田よりもすらっとしててシュッとしてて……。腕も長くて少しヤンチャそうな悪い男な匂いがする。  ……ああああああ、かっこいい。  わたしたちを見つけると彼はものすごくいい笑顔。  慶一郎さんのかっこいいスポーツカーに乗せられ、わたしは常田の実家へ。 「あそこが浩二の入院する病院。大きいやろ。んでなー……」  慶一郎さんが運転しながら教えてくれた。緊張もしてたし、常田は地元に戻ってリラックスしてポエーっとしてる

          第四十二話 シノノメナギの恋煩い

          第四十一話 シノノメナギの恋煩い

           あれから数ヶ月。わたしたちは大阪に引っ越す。 「梛ぃーもう出かけるの?」  眠気まなこで寝癖だらけの髪型の常田。あくびもしている。 「出かけるわよっ、あなたは車の中で寝れるけどわたしは寝られないんだからっ。ヒゲも今剃らなくていいから、朝ごはんも車の中!」 「眠いー、もっと寝たいー」  ダラーっとした常田。わたしだって眠いの! しかも今キャリーケース運び出すために夏姐さんと息子くん三人来てるし。 「この部屋とももうお別れやな……さようなら、て部屋に言ってもな」  眠そうな

          第四十一話 シノノメナギの恋煩い

          第四十話 シノノメナギの恋煩い

           仕事から帰ってきて先に帰ってた常田がおでんを煮込んでいる間にわたしは慶一郎さんと電話をした。  もう大阪に帰っているようだが、わたしの正体はお父様とかに伝えたりはしてないよね……。仕事の時ずっとそのことばかりで頭がぐるぐる。 『びっくりしちゃった。寝顔可愛かったんやけどねー。……浩二が結婚はせん、子供は作らへんって頑なに言うからなんのことやろと思ったらそう言うことなんやね』  わたしは寝相が悪すぎて服が胸のところまではだけていたのだ。それを見た慶一郎さんはそっと布団を

          第四十話 シノノメナギの恋煩い

          第三十九話 シノノメナギの恋煩い

           それはさておき。内密な話になるからと慶一郎さんは私たちが食べていたご飯代をスマートにカードで支払い、わたしたちの家で話したいと。しかも泊まって行く! だなんて……なんという展開?!  やだ、同じ建物にイケメン二人と一夜だなんて。だめだめ、変なこと考えちゃ。  常田の部屋で慶一郎さんは寝るらしいけど、ベッドに色々如何わしいもの置いてあるから帰ったら片付けないと。  部屋に入り、わたしはすぐ暖房をつけ、お風呂を入れた。 「はー、相変わらず部屋綺麗やなー。シンプルやし」 「

          第三十九話 シノノメナギの恋煩い

          第三十八話 シノノメナギの恋煩い

           夜、夏姐さんとわたしと常田の3人でバーに行った。  パッパと取り分けて目の前に置いてくれる夏姐さん。 「梛の件は前から上がっていたのよ。梛は児童書担当だし……ね。力は発揮できるし」 「うん……それはそうだけど」  市内の子供図書館に異動しないかと打診されたのだ。正直常田が大阪に帰ることになり、ついていきたい気持ちが山々である。  だが大阪に行ってもすぐ正規で司書として働ける保証はない。 「わたしは梛にとっては栄転だと思ってさ……市内だし、給料も上がるし、今の図書館と

          第三十八話 シノノメナギの恋煩い

          第三十七話 シノノメナギの恋煩い

           カウンターに戻ると返却図書がたくさん……やらなくては。そうすれば雑念は飛んでいく、はず。  並べて返却、どっさり。あと予約本のピックアップもしないと。やることは多いのだ。 「あった、あった……この本」  とわたしがさっき本棚に戻した本を手にする男の人。 「今検索したらあるって書いてあったのに無くてさ。作業中だったんだね」  ヒョイっと大きいその本を手にした彼。ニコッと微笑んでくれた。不意打ちの微笑みにドキッとした。 「す、すいません……お待たせしました」 「いえいえ

          第三十七話 シノノメナギの恋煩い

          第三十六話 シノノメナギの恋煩い

           次郎さんとは駅前で別れて駅前駐車場から車を走らせて病院まで行く。  常田……どうしたのよ。あんなに怒って拗ねて一人で病院に行くとか言ったくせに帰りは迎えに来い? だけど泣いてるような感じだったし。  目の前にある喫茶店に行くと窓際の席に座っている常田がいた。  常田、わたしを見てる。 「ちょっと、どうしたの」 「……来てくれた」  少し元気がなさそうだ。病院で何かあったのかしら。わたしは席に来た店員さんにお冷をもらった。 「梛、ごめんなさい。やっぱりお前がそばにおらん

          第三十六話 シノノメナギの恋煩い

          第三十五話 シノノメナギの恋煩い

           わたしは今、ボー然としている。  昨晩常田と喧嘩してその腹いせに次郎さんからもらった名刺のメルアドにメールをして明日会いたいですとメールして、すぐ返事きて。  朝起きたら常田はもういなくて、わたしは黒のセクシーなキャミワンピ、甘めの少し丈の短いワンピにロングコートを着て、ベレー帽を被り、黒のタイツにショートブーツという格好で外に出た。  彼氏いるのに喧嘩したからといって連絡先をもらった他の男に会いに行く、酷いゲスな女も悪くはないなと。  もじもじする次郎さんにグイグイ

          第三十五話 シノノメナギの恋煩い

          第三十四話 シノノメナギの恋煩い

           とある夜。次の日が二人とも休みだととてもリラックスした気持ちになる。そして自然と交わるわたしたち。  たくさんキスをしてキスをしてベッドの上に座る常田に乗っかる。  意外とエロいというか変態というか。健康的というか。何というか。 「梛は暗がりでしかしてくれんからなぁ」 「嫌だもん……」 「顔が見たい、感じてる顔見てたら興奮する」 「相変わらず変態だよね。でも見えなくなったら……」 「確かに見えなくなったら完全に見れなくなるわ、やっぱ今の顔、見せてや。焼き付けて思い出して…

          第三十四話 シノノメナギの恋煩い

          第三十三話 シノノメナギの恋煩い

           いつもどおり受付業務をこなす。 「お願いします。返却を」  この声は……。  次郎さんだった。わたしをじっと見てる。目を合わすとそらされた。  わたしは彼が出した本を受け取る。  彼の借りている本は恋愛系の本ばかりじゃない。人に気持ちを伝える方法とか、恋をしたときに読む本とか……借りる本は本人の関心を投影する、本当にわかりやすい。あら、一冊まだうちにあるようね……。  確認すると返却されていない本は、恋愛指南の本。 「……一冊、お家にありますか?」 「は、は、はいっ。

          第三十三話 シノノメナギの恋煩い