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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第215話:青春の影を口ずさんで。

「あれこれ忙しくしているうちに過ぎていくもの。それが人生なんだ」ジョン・レノン


 頭に中でずっとチューリップの「青春の影」がなっている。
 それはきっともうすぐ彼女と娘と一緒に暮らすことが決まったからだと思うのだけど、実は今日彼女と娘と夜ご飯を一緒に食べているときにふとその歌を思い出したのだった。

 もうすぐ家族になる。

 ぼくはただの男になり、彼女はただの女になる。

 今日はあわただしかった。
 朝から仕事でプールに浸かり、そのまま区役所に行って転出届を出して、近くのラーメン屋で飯を食べているときに彼女から電話がかかってきて、

「引っ越し業者と提携している電気会社とネット会社からの電話の押しが強くて辛い」

 という内容だったので番号を聞いてぼくからかけ直して向こうの強引な契約をすべてキャンセルし同時に少し荒い口調になってしまったことに対しての罪悪感を感じながら、家に帰ってクーラーの涼しみを全身に浴びてうとうとお昼寝し、そして娘が夕方から服を買いに行くというのでついていくことにしたのだ。

「今年の夏はどこには行けなかったから絵日記が書けないって昨日言ってたよ」

 今年はどこにも行けなった。
 だから少しでも喜んでもらおうと思った気持ちも確かにあった。

 だから娘とゲームセンターでたくさん遊んだ。
 そして時間が押して彼女はぐったりしてしまった。
 そのタイミングで晩ご飯を食べていた。
 頭の中で流れた財津和夫の声はとても遠くから聞こえた。

 ぼくは帰りの電車の中で日課のほぼ100字小説を書いた。

 ▲ほぼ100字小説▼(205) 
 きみを肩車して歩いたこの道を、今は私が車椅子に乗ってきみに押してもらっている。
 まだ思い出の中にいる小さかったきみの影を懐かしみながら、私の髪は今日も夏の風に揺れていた。
 人生は確かに幻想的だが、夢でも幻でもない。

#小説 #ほぼ100字小説 #ファンタジー

 人生はまるでファンタジーのように幻想的で、そして一瞬で終わるのかもしれない。

 ぼくはそんなことを考えながら、今はまだ肩車をせがんでくる娘の顔を思い浮かべて、いつか逆に自分たちが歩けなくなっていくそのときのことを想像していた。

 電車の音が過ぎ去っていく。

 彼女の顔と娘の顔と。
 二人を思いっきり抱きしめたい一人の夜は、もうすぐ終わる。

今日は付き合わせてくれて本当にありがとう。

いつかぼくたちも年をとって、

そして娘はいつのまにか自分の足で歩ていく。

ぼくたちもまだお互いに前を向いている。

でもいつか来るその時は、

またであった頃のように、

お互いに向き合いながら支えあっていきたいと、

心から思っているんだ。

愛してる。

今夜はきみがとても恋しいよ。

おやすみなさい。

初めての人生、このまま一生続くんじゃないだろうかと勘違いしてしまうほど美しい。

けれでも、

いつかは終わる。

ちょっと今日はなんだか泣きそう。

だから泣きます。

そんな夜があるから、

人生はやめられない。

今日もありがとう。

今年も、残り135日。

またね。

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