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第2話 出来立てクロワッサンとおばあちゃんのお話

前回の話はこちらから💁‍♀️
第1話 時間との戦いの朝に、食パンの幸せを



いつも通りの、 退屈な学校が終わった。

今日はおばあちゃんがクロワッサンを作ると言っていたから、急いで帰らなきゃ♬

パンが作られていく姿も好きなんだよな〜♡

小走りで家へと帰る。

「ただいま〜〜〜〜!!!」

「おかえり〜。もうクロワッサン作り始めてるよ〜。」

「ほんと?!見る見る!!」

おばあちゃんはもう、パン生地をこねていた。

な、なんなんだあのっ!
気持ちよさそうに伸ばされ丸められる白い生地の、吸い込まれるようなもちもち感としっとり感は…!踊っているのか…?!

––––きっと、このときの私は、だいぶやばい顔をしていると思う。

パンが作られていく姿は何度も見ているが、毎回興奮してしまう。

うっとりしているうちに、パン生地はすべて丸められた。あとは、1時間発酵させてから、オーブンで焼くだけだ。


「焼きあがるのが楽しみだね〜💓」

「そうだね。美味しくできてると思う。」

「そういえば…おばあちゃんはいつからパンを作り始めたの?」

「もう20年くらい前からかなぁ。」

「そうなんだ!」

「そう。さと子のおじいちゃん…だから、私の旦那さんは、雄輝が小さいころに事故で死んじゃったでしょ?」

「(雄輝?あぁ、お父さんのことか…。)うん。知ってるよ。だから、仕事すごい頑張って育てたんだよね。」

「そうそう。だから、子育て中は自分の好きなことはなにもできなかったんだけど、雄輝が大きくなって稼ぐようになったから、余裕が出来て、好きなことを始めたの。50歳くらいのときかなぁ。ずっとパンが好きだったからパン教室に通うようになって。そしたらどハマりしちゃって、今に至る。」

「そういうことだったんだ!」

そのあとも私は、
最初はパン教室で習うだけだったのが、だんだん家でも作るようになったり、レシピ通りに作るだけではなく、レシピをアレンジしてみたり、今では考案したりと、、
おばあちゃんが、だんだんと深くパン作りを愛するようになった過程を、聞かせてもらった。

パンのことを話すおばあちゃんは、とてもイキイキしていて好きだ。
きっと私は、何もなくてもパンが好きになっていたとは思うけど、パンが大好きなおばあちゃんのおかげで、パンがもっと大好きになったのだと思う。

あ、良い匂いがしてきた…♬

おばあちゃんが、席を立ってオーブンの方に向かう。

オーブンから出されたクロワッサンたちは、この世のものとは思えない神々しさを醸し出していた。

なんなんだあのっ!焼きあがったクロワッサンの愛らしいフォルムに、憎らしいほど惹き付けてくる焼き色は…!!!

––––きっと、このときの私も、だいぶやばい顔をしていたと思う。


おばあちゃんが、お皿にのっけてクロワッサンを持ってきてくれた。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。いただきま〜す!!」

サクッ

出来立てを頂けるこの喜びは、なんと表現したら良いだろうか。

「美味しい〜💞💞 こんなに美味しいんだからお店作っちゃおうよ!」



––––このときはまだ、この言葉は、冗談のつもりでした…。



つづく

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パンをこよなく愛する高校2年生のさと子さん。パンを作るのが趣味なおばあちゃんと二人暮らし。それが、ある日、パン屋さんをやることに…?!気まぐれ更新中🍞

望月遥菜が書く初の小説です。

「さと子のパン屋さん」一覧はこちら

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