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遠浅で引き潮の世界 【Walking into nature #03】


土曜の朝

最近ようやく暖かくなってきたので、天気の良い週末は、朝ごはんをどこか外の気持ちよい場所で食べたい気分だ。
土曜は天気が良いらしい。段取りよく金曜の夜に予定をたててみることにした。
コロナの移動制限期間中は決まったスーパーでだいたい決まった食材を買うようになっていたせいか、ここ最近ずっと何か違ったものを欲している。ちょっと遠いけれど、ずっと行けなかったファームショップで食材の買い物をし、それから朝ごはんをテイクアウトして、その近くの森で食べることによう。
週末のスタートとして完璧なプランじゃないか。

翌朝土曜日はちょっとゆっくりめに起きてから、そうそうに車で出発。
途中でウォーキングガイドブックとお財布を持ってきたか自信がなくなり、リュックの中を確認。
幸いお財布はあったもののガイドブックは家においてきてしまったらしい。ごはんを食べるはずの森の名前も場所も覚えてないや。
金曜日の段取りはどこへやら。それなら、行き当たりばったりの場所に行こう。

ファームショップで買い物が終わったら、朝ごはんというよりはお昼ごはんの時間になっていた。コーヒーとサンドイッチとケーキをテイクアウトする。

森に代わるごはんを食べる良い場所を探そう。とても天気がいいので、海も気持ちよさそうだ。暖かいので足を波にひたしてバチャバチャしてみよう。海岸のほうへ向かった。
ちょっと車で走ったら、RSPB(王立鳥類保護協会)の野鳥の保護地区の矢印がでていたのでそちらに曲がってみた。季節が合えばいろんな鳥を見ることができる。駐車場もありそうだし、海の近くなのでそこから海岸に出てみよう。
駐車場に車を止めて、ファームショップで買ったごはんを抱えて、海岸に向かって歩きだした。
小さな沼のわきを通り、木々の間を抜けて、砂浜にでた。
お腹が猛烈にへっているので、さっそく砂浜に座って食べることに。お孫さんと砂遊びをしているご夫婦が童心に戻ったように高らかに歌ったり笑ったり楽しそうなのが聞こえてくる。

さて足をバチャバチャしたいけれど、引き潮でどうもここには水がない。
ずっと遠くのほうをみると、光ってキラキラしているようなので、あそこまでいったら水があるんだろう。行ってみよう。

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だいぶ歩いたけど、まだ水にはたどりつけないな。

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振り返ったら、ごはんを食べた砂浜はもうあんな遠くに見える。

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もっうちょっと行ってみよう。

まだ水にたどりつけないな。このまま歩いたらあっち側に、うっすらと見えるカンブリア地方まで歩いていて行けそうな気がしてきた。

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経験したことのない静寂さ。
波の音さえも聞こえない。鳥だっていったいどこにいったんだろう。

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鳥は、ここではもうさんざん餌をついばんで、どっかに移動したようだ。

生き物が見えない。

こんなのとか、

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こんなのとか。

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こんなのとか

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ばかりで動きのあるものが見当たらない。

でも痕跡はあるし、気配はする。

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プツプツと音も聞こえる。

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穴から出たのか、穴に入ったのか。

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ここでは事件があったらしいな。

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こんなしみみたいなのだとか。

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あの骨組みのような構造物はなにかな。
あそこまで行ってみよう。

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思ったより遠い。潮が満ちてくると帰れなくなりそうなので、やっぱり戻ろう。


こんなふうに地形が変わっている場所もある。

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少しだけのこされた草のパッチ。

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とても不思議な世界。

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砂の上をあっちこっち、10㎞近く徘徊したけれど、結局波には出会えなかった。



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ソルウェー湾マーズヘッドの干潟

家に戻ってから、このあたりのことを調べてみた。

この干潟はマーズヘッドといい、ソルウェー湾という、イングランドのカンブリア地方とスコットランドのダンフリースアンドガロウェイ地方にまたがる湾のスコットランド側にある。

一見生き物があまりいないように見える干潟だが、干潟特有の豊かな生物多様性がある。足元の砂の中には驚くほどのたくさんの生き物がもぐって生息しており、生態系の重要な役割を担っている。このあたりの干潟は有数の野鳥の生息地で、渡り鳥もやってくるそうだ。鳥たちは砂の中の貝やミミズを求めて集まってくるのだ。
鳥を見るには満潮の1時間前から満潮までの間が良いらしい。このタイミングだと岸に近いところで、エサを捕まえている鳥たちを観察することができる。


他の動植物の生息地と同様に干潟も危機にさらされている。温暖化による水位の上昇により、その面積が縮小する傾向にあることや、豪雨により汚染された水が内陸から流れ込み干潟環境に悪影響を及ぼすこと。
河口から流れ込む、生活排水、工業廃水や、農地から化学肥料や糞尿の流出による汚染。観光によるごみ汚染も深刻な問題だ。

それに加えて、イングランドのセラフィールドにある原子力施設が1994年から2013年にかけて放射能汚染水を海に放出していたため、ソルウェー湾にも及ぶ海域で、魚介類から高濃度の放射線物質が検出されたという科学者のリサーチ報告がなされている。
また、スコットランドのダンドレナンにある兵器試験場では1982年から1999までに6500発以上もの劣化ウラン弾をソルウェー湾に向かって撃ち込んだといい、海水への汚染や試験場周辺に住む住人の健康被害への懸念が報告されている。
どちらも最近の新しい環境調査報告はインターネットでは見つからなかった。

日本では目下、福島第一原子力発電所の汚染水の海洋放出の政府決定が懸念をよんでいる。


ネイチェーリザーブ、自然保護地区 

バードサンクチュアリ、野鳥の聖域

自然保護、生態系保護、環境保全などはとても大切な希望ある活動だと思う。
けれども、同時にもっとおおもとの大きなシステムの中にある、自然や生き物や未来の世代の生活に対するあらゆる破壊的、搾取的活動をどうにかしない限り、保護、保全では手に負えない状況になってしまい、この鳥の聖域だっていつか無くなってしまうだろうと強く感じる。



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