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#小説
触れ合わないグラスの音
「「かんぱーい」」
二人してグラスを掲げる。
それぞれ好きなお酒を買ってきて、それぞれの家で飲んでいた。
画面越しに相手の美味しそうな顔が見える。
「ほんと幸せそうに飲むね」
「そう? だっておいしいから」
世界的に遠出が敬遠されるようになってから、地元が同じでも都会に出た人と飲むときはオンラインで家飲みが当たり前になってきた。
でも、私はそこまで重く受け止めていなかった。
「この状況
山姥とお坊さんの恋愛譚
ある寺のお坊さんが、住職から「向こうの山の山姥を封印してこい」とおおせつかった。
しかし向こうの山の山姥に悪い噂はなく、それどころか彼女に助けられた童もいたという。
住職からは「その親を含め、皆が気味悪がって近づかぬ。あそこには山菜もたくさんあるし、山姥がいなくなれば皆が喜ぶ」と言われた。
確かに年齢の若い自分にはあまり納得できない話だが、我々の親世代は山姥の残酷な話を聞いて育ったこ