③ 第21変奏~第30変奏 神秘的な時間を経て、勢いよく第21変奏(a,c,f)が現れる。この変奏では唯一、同一変奏内で2種類のテンポが交互に登場する。第22変奏(b)はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」からのパロディで、ドン・ジョヴァンニの家来であるレポレッロが、主人にいいように使われることへの愚痴を歌う冒頭のアリアから取られている。 第23変奏(g)は左右が反行する部分と、和音を代わる代わる
② 第11変奏~第20変奏 休息とも取れる第11変奏(a)で第2部は幕を開ける。その雰囲気を引き継いだまま穏やかに川のせせらぎのような第12変奏(a)が奏でられるが、それは第13変奏(c,e)のイ短調の和音によって急に断絶される。この変奏での衝撃と静寂の繰り返しは、聴き手に息をつかせない。そこに今度は、荘厳な雰囲気を伴って第14変奏(a,c)が現れる。ここまでの変奏では、例外なくテーマ1小節あたり
2. 全体像 ① 調性 ベートーヴェンは、この変奏曲でほとんどハ長調を貫いている。同じ音を主音とするハ短調は4つにとどまっているし(第9、29、30、31変奏)、主音から離れるのはフーガである第32変奏(変ホ長調)のみである。調性の変更を最低限に抑え、ほかの作曲技法でもってどのような面白さを提示することができるか、彼の挑戦を感じ取ることができるだろう。
Ⅱ 楽曲1. 主題 まず、主題となるディアベリのワルツについてよく理解しておく必要がある。このテーマからベートーヴェンは次の7つの要素を、動機として変奏に利用している。 a 装飾音または前打音 b 4度と5度の音程 c 同音、同和音の反復 d 分散和音 e 3拍子の2拍目に休符を持つリズム f 反復進行 g 前後半、それぞれ最後4小節に現れる旋律曲線