解説:ディアベリ変奏曲 ②

2. 題名について
 ベートーヴェンは多数の変奏曲を書いており、ほぼすべてにおいて“Variationen”というイタリア語由来の「変奏曲」という語を用いているが、この作品においてのみ“Veränderungen”というドイツ語表記で記している。この語はバッハが「ゴルトベルク変奏曲」に用いたものでもある。言葉の捉え方は様々だと思うが、Variationが「変化」と訳せるとすれば、Veränderungenは「変遷・変移」という要素が強いように私には思われる。終わりに向かうにつれだんだんとテーマからかけ離れていく様は、まさにVeränderungenという語にふさわしい。


3. 「33」に関して
 アルフレッド・ブレンデルは、自身の著書でベートーヴェンがこの変奏曲において「33」の変奏を書いたのは意図的だったという興味深い見解を示している。その理由として彼は主に2つ推測しており、ベートーヴェンのライフワークと言えるピアノソナタに続く作品として、最後の32番からの続きという意味を込め33という数字を意識したこと、そして、この作品を書くに至るまで、ベートーヴェンはいくつも変奏曲を書いてきたが、そのうち「自作主題による32の変奏曲」、「自作主題による変奏曲 作品34」そして「エロイカ変奏曲 作品35」を見ると、“33”という数字に関する変奏曲だけ書かれていないことになってしまうため、この作品でその穴を埋めようとしたのではないかという点である。
 この見方が正しいかどうかは永遠にわからないが、ベートーヴェンという人物が、ユーモアや遊び心を兼ね備えていたであろうことは彼の音楽から想像に難くなく、ここに紹介しておきたい。




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伊澤悠 ピアノリサイタル
2020年3月7日 18:30開演
於:サロンテッセラ(東京・三軒茶屋)
チケット:https://tickets-order.stores.jp/

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