解説:ディアベリ変奏曲 ⑤

(2.の項続き)

⑤ 大きな流れ
この変奏曲は大きく4つの部分に分けることができる。各グループの名称はウーデの見解による。

<第1変奏~第10変奏 上昇のグループ>
ウーデは第10変奏までを、壮大な導入であり、徐々に盛り上がりを増す方向にあると説いている。
<第11変奏~第20変奏 コントラストのグループ>
穏やか、静かな曲想と、快活で騒々しい曲想とが代わる代わる現れる部分。その転換は時に異様なまでの激しさを伴う。
<第21変奏~第30変奏
(フゲッタをトリオとしたスケルツォのグループ)>
滑稽さや様々なユーモアに満ちた変奏が連続し、間に挟まれたフゲッタはその休息ともいえるトリオ的な立ち位置であるとウーデは説く。彼はこのグループを第28変奏までとし、第29変奏以降を4つ目のグループに収めている。それは、第29、30、31変奏でハ短調が連続し、前二つの変奏を第31変奏の前奏曲と捉えているためである。
しかし、私は第30変奏までをこのグループへと収め、最後の3つの変奏のみを終結部と考えている。第31変奏以降、テーマからの発展の仕方が他とは一線を画すものであること、第30変奏の最後に他にはない最後4小節のみの繰り返しがあるうえ、最後の音にフェルマータが書かれており、一時的な終結を感じ取れることが主な理由である。
このようにとらえた場合、このグループは「スケルツォ」だけでなく、そこから精神的深みへの足取りも含むと言えるだろう。
<第31変奏~第30変奏 終結のグループ>
全く形の違う3つの変奏から構成される。テーマからは一気に離れていき、その原型をもはや思い出させない。最後久しぶりにハ長調に戻ったとき、今までのどの変奏よりも高く遠くに到達する。


次項で各部、各変奏についての詳細を記載する。


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伊澤悠 ピアノリサイタル
2020年3月7日 18:30開演
於:サロンテッセラ(東京・三軒茶屋)
チケット:https://tickets-order.stores.jp/


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