解説:ディアベリ変奏曲 ⑩

Ⅲ おわりに
ピアノソナタを32曲書き上げたベートーヴェンが、作曲技法をすべて詰め込むかのような意気込みをもって、バッハのゴルトベルク変奏曲に並ぶ変奏曲と言われる巨大な作品を書き上げる気力を持っていたことは、驚くべきことである。またその中で、充分な実験を行いながら、当人が楽しんで筆を取っていたであろうことが、この作品から手に取るように伝わってくる。その過程で生まれた「最大限の不自然さ」とも言えるものが、変奏曲の概念を覆し、私たちに壮大な物語を残してくれた。
ウーデはディアベリ変奏曲に関する評論の最後に次のように述べている。
“ベートーヴェン自身の考え方は神秘のままであり続ける。そしてその神秘こそが、この作品の構成要素そのものなのである。”
ベートーヴェンのほぼすべてのピアノ作品を緻密に分析し、評論した彼が、このように締めくくったことは非常に興味深い。永遠に神秘的であるものが、ファンタジーと追究心を与えてくれることを、ベートーヴェンの音楽はいつも私たちに思い出させてくれるのである。

当日はできうる限り力を尽くして演奏いたします。

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伊澤悠 ピアノリサイタル
2020年3月7日 18:30開演
於:サロンテッセラ(東京・三軒茶屋)
チケット:https://tickets-order.stores.jp/

※新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念されておりますが、国や自治体の情報に留意しつつ、ご来場いただくお客様に対し、できる限りの感染予防策を講じて、本公演を実施いたします。

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