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#小説 私だけの世界

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オリジナル小説です。ある少女が世界の真実を知り、未来を選び取るまでのお話。
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記事一覧

小説 私だけの世界 エピローグ

小説 私だけの世界 エピローグ

 私だけの世界。

 ずっと、欲しかった世界。

 私の現実は、家と学校とこの街だけだった。

 テレビで流れるニュースも、インターネットで飛び交う芸能人の噂も、現実ではあったけれど――私にとっての現実ではなかったんだ。

 私の現実は、とても狭く小さかった。それをもっと広く、外へ広げることができなかった。

 ……もしかしたら、しようとしなかったのかもしれない。

 でも。

 自分の狭い現実を

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小説 私だけの世界 Ⅴ、真実④

小説 私だけの世界 Ⅴ、真実④

「できないよ」

 私は今でも覚えている。あの感触、あの激情。

 心によみがえってきた映像から目を逸らすように、ぎゅっと瞼を閉じた。もちろん、そんなことで目を逸らすことなどできないけれど。

「私は、亜梨沙を刺してしまったんだよ」

「だが、ここは現実じゃない」

 私は首を振る。ここが現実か現実じゃないかなんて、なんの意味があるというのだろう。

「それでも、あの、はさみを手に取った気持ちは本

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小説 私だけの世界 Ⅴ、真実③

小説 私だけの世界 Ⅴ、真実③

 もとの世界に戻る決心はついたか。

 それは不意の質問だったので、すぐには答えられなかった。

 そうだった、少年は最初から言っていたじゃないか。魂を現実の身体に戻すために自分はいるんだって。

 このままでいられるとは思っていなかったけれど、少年と話している今が比較的穏やかだったから、事実を直視する勇気がなかったのだ。

 戻らなくてはいけないんだろう。少年の言葉の端々から、それが伝わってくる

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小説 私だけの世界 Ⅴ、真実②

小説 私だけの世界 Ⅴ、真実②

 少年はなにか言いたそうだったけれど、私が目を逸らして無視を決め込んでいると、やがて諦めたらしい。彼も素直に説明を続けることにしたようだ。

 「……お前の無意識が小世界に反映されているということまでは話したな? 

 おそらく今も、お前の無意識と小世界は結びついている。小世界はお前の意思次第で変幻自在だが、もしかしたら影響するのは明確な意思だけじゃないかもしれない。

 つまり、お前の無意識や眠

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小説 私だけの世界 Ⅴ、真実①

小説 私だけの世界 Ⅴ、真実①

 私は、ふらふらと意識なく歩き続けていたらしい。気づくと、あの商店街の路地に入っていて、その出口にあの少年がいた。

 私は驚かなかった。なんとなく、わかっていた。少年がそこで私を待っていることを。

 雨はまだ降り続けている。さっきよりは弱く、まるで霧のように視界に移る、細い糸筋の雨だ。

 目の前の少年はビニール傘を差している。対して、私はびしょ濡れだ。まあ、構わないけれど。

 少年が私のほ

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小説 私だけの世界 Ⅳ、再生②

小説 私だけの世界 Ⅳ、再生②

 その数日は、最悪最低な数日だった。

 おかしいな、とは思っていたのだ。けれど、それを深く考えなかったのはなぜだろう。

 覚悟をしておかなかったことを、私は後悔した。まあ、覚悟の有無で事実が変わるわけじゃないけれど。

 それでも私は、あんなに唐突に、勝手に決められた知らせを母から聞きたくはなかった。

 夏休みのある日、母は、私たち姉弟にこう告げたのだ。

 「お母さんたち、離婚するの」

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小説 私だけの世界 Ⅳ、再生①

 こんなに全力で走ったのは久しぶりか、もしかしたら初めてかもしれない。

 校舎を出て、校庭を抜け、校門のところに差し掛かる。そのまま走り去るつもりだった――けれど、思わず足を止めてしまった。

 不意を突かれたからだ。

 校名が彫られた石碑に背中をもたれさせ、腕を組んでいた少年は、私が足を止めたことに気づいたようで、目を開けた。その眼は相変わらず、厳しいものだった。

 「これでさすがにわかっ

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小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊⑧

 東階段のほうから三階へ上がり、廊下を西へ進む。ひんやりと静まり返った廊下に、人気はなかった。ほとんどの生徒は下校したのだろうか。

 ――と思っていたら、向こうから女子生徒が歩いてくる。

 一瞬、亜梨沙かと身構えてしまったけれど、彼女ではないようだった。まだ幼い感じがする女子で、どうやら一年生のようだ。すれ違う際、シューズとリボンの色が見えた。

 瞬間、私の目の前で、その女子生徒は派手に転ん

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小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊⑦

小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊⑦

 先生によると、亜梨沙は風邪で休みだということだった。

 本当に風邪なのかどうか、私にはわからない。けれど、私は、どうしたらいいのだろう。いや、できることなど、今の状況ではなにもないんだけれど。

 学校が終わったら、亜梨沙の家にお見舞いに行ってみようか? 

 今朝の私なら、迷わずそうしただろう。でも、今は。

 私は、亜梨沙に避けられている。それは、たぶん、確定で。

 とすると、私は……ど

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小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊⑥

小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊⑥

 おかしい。

 私は、顔をしかめながらそう思った。

 なにがおかしいのかというと、亜梨沙のことだ。何回かメッセージを送ったんだけれど、妙な感じがする。

 まず、私は「お疲れさま~」と送信し、亜梨沙からは「ありがと」と返ってきた。これは別に変じゃない。いつも通りだ。

 そのあと、私は駿河くんを見かけたことを報告した。「どこで?」と亜梨沙も興味津々のようだった。駅前で、とかいろいろ報告したんだ

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小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊⑤

 夕方。

 夏は日が暮れるのが遅いので、夕方といってもまだ明るい。

 ふと私は思いついて、駅前の塾の近くに行ってみた。亜梨沙が通っているところだ。

 今日は確か、五時からだと言っていた。今の時間なら、塾があるビルの中へ入る時に会えるかもしれない。

 数人、塾生と思しき人たちが、ビルの中に入っていく。私の座るベンチからは、ちょうどビルの入り口付近がよく見えるのだ。

 けれども、亜梨沙を見か

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小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊④

小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊④

 午後は、私ひとりきりだった。弟はまた遊びに出かけ、母はパートに行った。

 家の中でひとりきりだと意識すると、いつもはそう感じないのに、ざわざわと落ち着かなくなった。まだ、午前中の気持ち悪さが尾を引いているのかもしれない。だいぶ薄らいできたとはいえ。

 だから、私は外へ出ることにした。気分転換をしたかったのだ。

 本当は、あの商店街に行って、路地裏を通って土手に出るコースを歩きたかった。

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小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊③

小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊③

 母が帰ってきて、私はリクエストしたチョコアイスを渡された。

 大好物で、しかも今日の暑い日にはちょうどいい冷たさなのに、なぜか私は気分が悪くなった。アイスの冷たさがいつまでも喉元に残っているようだ。

 それとも、この気分の悪さはアイスを食べる以前からのものなのかもしれない。ただどちらにしろ、アイスを食べなければよかったと思った。

 そのあとのお昼には、遊びに行っていた優希も帰ってきた。私は

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小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊②

小説 私だけの世界 Ⅲ、崩壊②

 夏。

 刺すような暑さがやってくる。そして、夏休みもまた。

 受験生には、勉強の夏だ。

 私も必然的にそうなり、参ってしまう。頭に詰め込み過ぎて、パンクするんじゃないかってくらい。

 毎日友達と遊びまわっている弟が恨めしい。いいさ、そのうち夏休みの終わりが来て、宿題をやっていないことに気づいて慌てることになるから。

 勉強と言えば、私は今、亜梨沙と同じ塾に行こうかどうか迷っている。塾に

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