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短歌入れれます(2020.10~)⑨
最終回です。前号評は上から。
本日の一首カレンダーのマス、カップの丸い縁。目を凝らすとかみさまの指紋。/ 文(Twitter)
定型の音数だと
カレンダー・のマス、カップの・丸い縁。・目を凝らすとか・みさまの指紋。
意味で区切ると
カレンダーのマス、/カップの丸い縁。/目を凝らすと/かみさまの指紋。
でしょうか。句またがりの効果はあまり感じていなくて、頭韻の「か」にアクセント(音の強
短歌入れれます(2020.10~)⑧
前回評は上記からお願いします。
本日の一首理不尽は理不尽でしか冷ませないさけるチーズをさかないで焼く / 長井めも
一読して「理不尽に対する怒りを抱え、それをどうにかやりくりしようとする作中主体」の姿を思い浮かべました。
歌の構造としては、上の句が下の句の光景の説明として提示され機能する形です。
まず気になったのは上の句の表現でした。上の句は「毒を以て毒を制す」ということわざの形を借りている
短歌入れれます(2020.10~)⑦
前回評は上のリンクからよろしくお願いします。
本日の一首新しい話始めるとき君は僕を通して何を見てるの / 酒池肉林
会話しているはずの状況なのに、〈僕〉に話す〈君〉とは通じ合うことのない疎外がある。〈君〉は〈僕〉を、鏡が反射して像を結ぶような、何かの媒介にしてるだけで〈僕〉とコミュニケーションはしない。一方〈僕〉もその事態を不思議には思っているけれど、そこにディスコミュニケーションがもたらす孤
短歌入れれます(2020.10~)⑥
前回評は上記よりお願いします。
本日の一首白いからシロと呼ばれるその犬の親犬もその親犬も白 / ささくれ
個人的に、この一首を評することにそれほど面白さを見出だせていません。その理由としては「情報の提示」によって構成されていることが大きいです。
【テキストに書かれていること(短歌の内容)】
① (体毛が)白いからシロと呼ばれる犬(以下シロA)がいる。
② シロAの親犬(以下シロB)も白(い体毛
短歌入れれます(2020.10~)⑤
折り返しました、⑤です。前回評は上のリンクからどうぞ。
本日の一首月面でくしゃみをしたら果てしない宇宙旅行の始まりでした / 5.74ft(歌会サイト「うたの日」 2020/7/12 題詠『くしゃみ』)
意味内容は取りやすく「月面という無重力空間では、くしゃみをするというちょっとした衝撃で身体が浮いてしまい、そのまま宇宙に投げ出されてしまった」と解釈しました。この太字部分を〈果てしない宇宙旅行
短歌入れれます(2020.10~)④
短歌入れれます④です。前回評は上のリンクからお願いします。
本日の一首明日にも飲むかもしれない錠剤がさっきなくなって泣いちゃったんです / 坂本阪本
待って待って。
一瞬「それは困ったねえ」と声をかけたくなったんだけど、待って。〈明日にも飲むかもしれない〉って何。〈錠剤〉とあるから薬とかサプリメントだと思ったけど、基本服用する間隔って決められてるだろうし、習慣的に服用してなくても錠剤を飲むこ
短歌入れれます(2020.10~)③
「短歌入れれます」③です。評②は上のリンクをご覧ください。
臨月の母のお腹に還りたい眠りの海で数える羊 / 花房香枝
一首のなかで用いられる語同士の連関が重層的な歌だ。
「臨月」、妊娠中の胎内では、胎児は目を閉じ眠っているかのようにイメージされることが多い。このイメージを維持しながら接続する「眠りの海で数える羊」と言う表現は、「眠れないときには羊を数える」という謂れを踏まえつつ、「海」という
短歌入れれます(2020.10~)②
「短歌入れれます」②です。企画趣旨、前回の評①は上のリンクをご覧ください。
本日の一首静かに大地を割る指紋認証そんな気なしにこわせる世界 /ぱんにん
定型の音数で区切ると、上の句は
しずかにだ・いちをわるしも・んにんしょう
となります。意味で区切るなら
しずかにだいちを/わる/しもんにんしょう
そんな気なしに/こわせる世界
の8・2・7・7・7かな。抑制の効いた調べですが、「わる」の切
短歌入れれます(2020.10~)①
はじめにお久しぶりの「短歌入れれます」企画です!前回は2月だったらしい。
このたび募集したところ全部で9首いただきました。ありがとうございます。先着順で、一日一首ずつ評していきます。10月中にすべてアップする予定です。なお今回は作品も引用します。
またわたしの評を読んだことある方はご存知かと思うのですが、そんなに面白いことは書きません。ただし思ったことを真剣に書きます。よろしくお願いします。
短歌入れれます(2020.02~全首評)⑩
最後3首です。よろしくお願いします。
沙羅粗伊さん
好ましいものの列挙から逆接の接続詞が挿入されたところで、別れのシーンを想起しました。その状況が導かれた過程や理由はよくわからないのですが、接続詞がかぎカッコに入れられて強調されているところから、なんらかの決意をもって告げられたように思います。初句二句と三句四句での描写が、名詞の並列なので光景が像として結びづらかったのですが、おそらく主体は対象を
短歌入れれます(2020.02~全首評)⑨
三首アップです。次回が最後になります。
街田青々さん
下の句で提示される光景が、上の句で展開される主体の想像の根拠となる構造ですが、根拠として読むには若干の分断があるように思いました。二句目の動詞と結句の表現(特に名詞)にイメージ上の連関を見出すことはできるのですが、主体が上の句で言及したように想像する経路が描かれていないので、なぜ下の句から上の句の表現が引き出されたか、それによって上の句で言お
短歌入れれます(2020.02~全首評)⑧
四首アップです。
ゆあさん歌の解説をいただいているので、その解説と私が歌から解釈できたものとの違いについて書きます。二句目から四句目にかけて表現される主体の気持ちは、初句の発話をした相手となんらかの特別な関係性があるために、わきおこったものだと思いました。相手の発話には具体的な状況の想定があったようですが、一首だけではそこまで読み取れないように思いました。むしろ結句に関連する語が出てくるので、相
短歌入れれます(2020.02~全首評)⑦
四首アップです。
くわいさん結句の相手に対して、主体の心の動きが見える一首だと思います。景自体が良さを持っている分、結句の助詞によって関係性が垣間見える状況そのものよりも、相手自体に焦点が強くあたっているように見えるのが気になりました。また下の句へとつなぎわたす役目を持たせるには、三句目の接続助詞に少し負荷を感じました。個人的には一字あけによる飛躍の作用でつなげるか、論理性を導くタイプの接続詞を
短歌入れれます(2020.02~全首評)⑥
本日4首です。あと4回で終了予定。
凍る火鳥さん一首に盛り込まれた情報が多く、読みが確定しづらかったです。初め、下の句は表現の通りに読みましたが、途中からは二句・三句目も含めて暗喩として読みました。歌が3つのパートにわかれており、初句のアルファベット、二句目の名詞、四句目の名詞で語のイメージを連関させてあるものの、それぞれの接続は論理的に展開されていないのが、情景を確定できない理由のように思いま