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短歌入れれます(2020.02~全首評)⑩

最後3首です。よろしくお願いします。

沙羅粗伊さん

好ましいものの列挙から逆接の接続詞が挿入されたところで、別れのシーンを想起しました。その状況が導かれた過程や理由はよくわからないのですが、接続詞がかぎカッコに入れられて強調されているところから、なんらかの決意をもって告げられたように思います。初句二句と三句四句での描写が、名詞の並列なので光景が像として結びづらかったのですが、おそらく主体は対象を見る→対象に触れる様子だと思うので、その移行の接続がよりなめらかになると明確になるように思います。

三浦なつさん

このタイプの歌は、欠乏×欠乏で惨めさの表現になるケースをしばしば見かけますが、すごく素直によろこんでいる点があまり見ないようにと思いました。ちょうどその瞬間に居合わせた喜びの表れでしょうか。一首としては、ストレートに表現していて「その出来事がうれしい」ということ以上の広がりはないように思うので、描写や別の角度から場面を立ち上げることも考えていいように思いました。

永峰半奈さん

主体は、現在の環境において自身(と自身が所属する共同体や同じ意識を持つ仲間)が弱い立場に置かれていると認識しつつ、その環境とは別の(やさしい)世界への憧れを提示していると解釈しました。そこには自己卑下というよりも、自分にあった世界へシフトしていきたい気持ちがあるように思いますし、そのような自分への矜恃もあるのかなと思いました。
個人的に「不可能性」の表現が持ち出されるときは、その理由が言及されるか、もしくは絶対的に不可能なことでない限り、「主体にとっては不可能」であるという域をでないと考えるので、一首が共感される範囲は限定的になるようにも思います。

おわりに

ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。更新がゆっくりですみませんでした。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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