見出し画像

短歌入れれます(2020.02~全首評)⑥

本日4首です。あと4回で終了予定。

凍る火鳥さん

一首に盛り込まれた情報が多く、読みが確定しづらかったです。初め、下の句は表現の通りに読みましたが、途中からは二句・三句目も含めて暗喩として読みました。歌が3つのパートにわかれており、初句のアルファベット、二句目の名詞、四句目の名詞で語のイメージを連関させてあるものの、それぞれの接続は論理的に展開されていないのが、情景を確定できない理由のように思います。初句の表現は初めて見たので面白かったですが、初めて見る分、読解の難易度は高くなり、補足がないと意味内容を伝えきれないタイプだと思いました。結句の音数の不足は、歌における気持ちの欠乏感のしりすぼみな様子につながっている感覚があります。

西淳子さん

主体の心情を明確に読むのは難しかったのですが、四句目のポジティブな行為の価値を、結句で一気に転覆させる力がすごいです。初句から三句目にかけてそのための助走があるので、そういう意味では読者がついて行きやすい作りになっているのですが、四句と結句のあいだにある読点が、タメ(時間)をつくる効果があり、それによってこちらに迫ってくる速度をあまり減速させずにいるように思いました。

殉月さん

擬人化と初句二句の景色によってやや幻想的な情景を描こうとしているように思いました。
個人的には、擬人化の対象に発話させることで、主体の意識や気分になにが生じるのかに興味があるのですが、この歌はあまり明確に踏み込まず、一時の喪失にを描くことで、はかなさの美しさを醸し出すに焦点があるように思いました。気になったのは、初句の言い回しで、現状の言い方だと初句の名詞がちりぢりになっているように思われるので、〈名詞+に+動詞〉だと違和感がないと思います。

月本ゆみさん

ひとつだったものがバラバラになる悲しみを感じました。切迫しているというよりかは、気分としてじわじわと広がっていくような感覚です。三句目の境目に曖昧さが感じられるぼんやりした時間帯も、その効果があるように思いました。初句二句の表現から、人間関係における状況を想像しましたが、下の句で具体物を用いた観念的な情景が出てくるので、前半が比喩なのか、後半が比喩なのか、読みとしては確定しないように思いました。個人的には、後半を比喩としてとりました。

前回はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?