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短歌入れれます(2020.10~)⑦

前回評は上のリンクからよろしくお願いします。

本日の一首

新しい話始めるとき君は僕を通して何を見てるの / 酒池肉林

会話しているはずの状況なのに、〈僕〉に話す〈君〉とは通じ合うことのない疎外がある。〈君〉は〈僕〉を、鏡が反射して像を結ぶような、何かの媒介にしてるだけで〈僕〉とコミュニケーションはしない。一方〈僕〉もその事態を不思議には思っているけれど、そこにディスコミュニケーションがもたらす孤独はないように感じられるのは、感情を見せたり相手を責めたりしないからかもしれません。

細切れに情報は拾えるんだけど、一首のみで状況を把握するのは難しくて、それは〈新しい話〉が何を指すのか読者に共有されないこととか、君と僕の関係までは描写されないこととか、なのだと思います。ストレートに観念が投げかけられると、その声は響くけれど、イメージを描ききるには至らなくて、共感を誘うような発言の説得力だけで勝負しないといけない難しさがあるなあと思いました。

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