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詩まとめ

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詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
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#散文

【詩】十五夜の詩

「僕には誇れるものなんてなにひとつないけれど、それでも君のことが好きだから、僕はこの命に懸けて、君を一生守っていこうと思うよ。」
そんな純粋にも見える言葉が、ただなにもないことの言い訳だと悟られずに、君から、ずっと愛されていたかったのに、そうなるには僕ら(僕らと思っているだけの僕)、ぜんぜん才能が足りないみたいだった。口下手はただの怠惰だし、誰も僕のことを分かってくれないのも、みんなと友達になる努

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【詩】碧虚

【詩】碧虚

綺麗かどうかを棚に上げて、
雲によってしか、そこに模様を描くことができないのなら、空もまた虚ろだ
僕と同じようにからっぽ、と言って
死骸の瞳がそうするように、青空を眺めて
空に空という名前をつけた人となら、友達にだってなれるかもしれないと思いながら
本当は、その世界で自分だけ、自分で自分を満たせるくらい、清潔になりたかった。

【詩】堕落の詩

【詩】堕落の詩

他人に寄り添うことが、世界を救うのだとしたら、僕は、人類の為に、ずっとずっとひとびとに寄り添っていよう。歌手になるためではなく、ただ心の響きを見せつける為だけに、唄い続け、吹き抜ける風を感じる為だけに、並木道を練り歩く。春が渦巻くなか、思い立ったように立ち止まっては、誰かに共感するように涙を流し、そして、時間が止まらないことを知りながらも、なおのこと泣き続ける。そういう怠惰なきみたちに共鳴して、僕

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【詩】泥のように眠、れず

【詩】泥のように眠、れず

頭痛。溶解しない沈殿。
もう一生分眠ってしまって、僕は、眼を瞑る口実を見つけられない。
見ないことを選べず、ただ見ることしか出来ない光景を前に、夢を、いつか見ていたことを思い出しながら、
沈殿して往かない意識を、重々しく、頭の重さそのもののようにもたげている。
泥のように眠っても、眠っているから、泥のようであること、なにも気にしなくてよかったのに、眠りにつけなければ、ただ取り残されるのだ、存在、泥

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【詩】海

【詩】海

どれだけ僻んだって、きみは海。砂浜の砂を少しだけ濡らして、歪んだ月の光を、その淀んだ水面に映し出す、ただ僕に疎らな詩を想起させるだけのもの。
僕はきみのことが好きだけれど、きみを、本当の意味で好きになることなんてないのかもしれないね。みんな、生まれたときから詩人で、目の前にあるものを、象徴的にしたがっている。それはきっと僕も同じで、砂浜で微かに輝く貝殻を拾い集めるみたいに、そして、その音に神経を研

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【詩】砂粒の詩

【詩】砂粒の詩

虚ろに、窓の外にある夜を見つめて、
嫌いな人の話をしながらしか、恋ができない。
きみの寝息が聞こえる午前2時、
ただ後ろめたさから、夜空に平和を願って、そして、その願いが、いつか、ふとした瞬間に叶ってしまったとしたら、そのときは僕たち、もっともっと広い世界の話をしよう。
いっしょに空を見上げて、
大きな世界の前で、いつまでも一番の被害者でいよう。

【長編詩】紅い花

【長編詩】紅い花

        Ⅰ

対話するってことは、人に銃口を向けるってことなんだけどなあ。でも快感なのかもしれない。空気を貫いた先、きみの眼の上で、紅く、触手みたいに延びた彼岸花が咲いて、僕は、初めて、僕がきみに与えた影響力について思った。それは愛だね。けれども、きみのことを心から綺麗だと思うのと同時に、きみは、僕にとってただの作用点でしかないこと、僕の一生のうちに起こる幾つかの現象のひとつでしかないこと

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【詩】都会の星

【詩】都会の星

躊躇うという感情。こんなにも鍵穴の形をじっと見ていたことなんて、いままでなら、ありえなかったかもしれない。煤けたみたいな色をした新宿駅に夜がやってくるように、公団住宅にも、白夜じゃない夜がやってくる。僕がこうして昼間中、ずっと仕事をして、燃料を補充するように食事をして、夜、魂を一旦放棄するように眠りにつく以前、それは僕が、人間じゃなかったころのことだけれど、僕は瞬いても瞬いても消えない星で、けれど

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【詩】氷

【詩】氷

形も大きさも違う氷が数個転がっていて、何かの拍子にそれらは砕けて、いつか溶けて水になる、水になると元あった形なんて関係なくなって、もともと他の氷だったかどうかも関係なくなって、あたかも自然なことであるかのように混じり合い、溶け合い、いつか誰かに取り分けられて、小さな容器に等分になるように振り分けられて、つまり、みんな同じ人間だって言うのは、そういうことを指して言っているのでしょう?みんなみんな幸せ

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【長編詩】masturbate

【長編詩】masturbate

        ※

無為にしたくないと思いながら、あっという間に、泥のように形を無くし、けれども完全に溶けきることのない多色の沈殿物のような、、、それを、そういうものを日々と呼んで、僕は、なんだか、毎日、吐けないのにむりやり吐こうとしているみたいだ。体内に溜まった毒素をひたすら嫌悪するだけの生活。舞台に、(指をさして)きみとかきみとかきみとか、そういうきみたちが観客の舞台に、僕が立ったことは一度

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【詩】オルゴールの詩

【詩】オルゴールの詩

貴方が欲しがっているのはきっと、いつだって、病院の待合室みたいな会話だけだったよ。
オルゴールの音がして、
貴方は、わたしのことを、どこかにある星のように見ていた。どこかから流れてくる音楽のように感じていた。唯一性なんてどこにもなく、貴方もわたしも、幽体としてしか、他人を認識することができなくて、お互いの血液がどんな風に脈打つのかも知らないのに、「好き」というただその言葉だけで、鎖のように繋ぎ止め

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【詩】泥黎

泥濘と同化したみたいな身体で、それでも、手を伸ばせば地上に届く。もしも、それくらい僕の腕が長くなったのなら、きっと、なんの変哲もない甃の上を、なにげなく、途端に不幸になるとも知らない足取りで、歩き続けているきみの足首を、ずっと掴んで離さないだろう。僕が、生き返ると確信するそのときまで。
「わたしの手となり足となって」
それが本当の愛の告白であるような気がして、そして、余多の色の絵の具が混ざりあった

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【詩】朗読者の詩

つまらない、僕の言うことがつまらないとか、そんなことを言うのなら、きみは、ずっと映画館にでも居座っていればいいんだ。きみは、きみが思っている以上に物語を求めている。冬の空気が、ほんの少し濁って、温くなる、僕の言葉が、それくらいの役割しか持っていないこと、特に意味も持たず、ただ空気中の粒子そのものみたいに、ちりぢりに分散してゆくだけのものであること、そしてそれはきみも大して変わらないこと。
原風景に

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【詩】星屑の詩

ただ怠惰なだけだよ、謙虚さっていうのは。
自分で自分に価値を見いだせないからこそ、他人に、その価値を見いだしてもらおうとしているのだ。いつしか現れるかもしれないきみが、「あなたは、この世界にたったひとりだけしかいないんだよ」と言ってくれること、虚ろに、けれども、それでも確かに待ち望んでいるように、殺風景な部屋のなか、僕は、意味もなくずっと夜空を見つめていた。
なにもしなくても綺麗と言ってもらえる、

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