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飲み会で「やっちまった」夜

やーね、オバサンったら。

若い子いじって喜んで。

恥も外聞もないんだから。


・・・と料理店の店員さんは思ってたことだろう。

今思い出しても顔から火が出そうなほど恥ずかしい。


先週末、職場と得意先との懇親会があった。

三密を避け、消毒、換気、席を離すなど配慮はされていたことを先に断っておく。自粛警察の方々のお仕事を増やしてはいけませんものね。ホッホッホ♪

総勢10名。

男性8名。30代~60代。

女性は2名。30代若い美女とアラカン私。


メニューはお魚がメインの懐石料理。

着物を着た若い女性店員さんがしずしずとお料理を運んでくる。乾杯の音頭が取られ、なごやかにスタートした。得意先のお偉い様が鎮座されます中央のテーブルには30代若い美女が配置され、花を添えている。で、平社員メンバーは離れたテーブルに配置され、中でも50代以上のおっさんチーム担当は私。いいのいいのおっさんには慣れてるから。

私の隣には60代のお喋り好きなおっさん・・ダメダメ、お得意様なのに。せめておじさま、と呼ぼう。そのおじさまのマシンガントークにニコニコと笑顔で対応。まだお酒が回っておらず、冷静そのもの。いいねー、余裕たっぷり、大人の女。

「最近ヨメに家事を分担させられてんだけど、アイロンのかけ方がうまくなって、クリーニング店に転職しようかと思ってんだ」

ってな、どーでもいいゆるーい話を「あら!すごい!」「さすがですね!」とリアクション豊かに合いの手を入れるもんだから’(演劇部出身だからこういうのは得意なんです)

「あんた楽しい人だね。芸者になれば良かったのに。売れっ子になれたよ。若い頃は可愛かっただろうし」

と褒めてくださるのを、「今も可愛いんだよ!」と心の中でツッコミながらも、

「あら嬉しい!今からなろうかしら?なったらご指名お願いしますね」

と適当に交わし、得意先との交渉をそつなくこなしていた。


それから2時間近く。

それぞれアルコールが回って来たものの、コロナのことを考えてか密接して話す人はいない。適度な距離で飲み、談笑し、姿勢を崩さずジェントルマンらしく振舞っている。

がっ。

私と言ったら!

例の隣のオヤジがグイグイビールを注ぐもんだから、すっかり酔いが回り、理性のブレーキが吹っ飛んでしまっていた。前の席にいた32才男子が独身と聞くや否や、「キター!(何がやねん)」とスイッチが入り、

「彼女いるの?」

と前のめりの私。

「いや、いないっす」

「え?なんで?モテそうなのに」

「んー・・・なかなか出会いがなくって・・」

うつむきながらシャイな笑顔を見せる32才。いやーん、カワイイ!

言っておきますが、シラフの時はこんなこと思いませんからね。仕事中は地味で真面目なフツーのオバサンそのもの。でもお酒が入るといっきにタガが緩んで「やっちまう」のである。若い子を見るといじりたくなり、おっさんが相手だとからかってみたくなり。それが面白いとよくお誘いを受けるのだが、調子に乗ると無理矢理デュエットを迫ったり、一人オンステージで踊ったり。とにかく醜態をさらしまくるので、ある年齢から飲み会の時はかなり自重するようにしていた。

しかし、今年はコロナで飲み会が全くなかったせいか、久々のお酒に私も浮かれていたのだろう。警戒ゾーンを超えて、すっかり地が出てしまっていた。

出会いがなくて彼女を作れないとつぶやく32才に、

「ね!私も独身よ!どう?年は離れてるけど!」

「えっ?」

「お料理得意だしよく働くし、あなたのお母さんと同じぐらいの年齢だから話も合うし、いいかもよー!」

「・・そ、そうですね。最高っすね」

「ね?ね?考えてみて♪ 私いつでもお嫁に行くから!」

32男子の顔が引きつっているのも無視して、酔った私はグイグイ責めていった。


そこで隣のオヤジが大爆笑。

「おいおい、保険のおばちゃんの勧誘かよ」

それを聞き、さらに引きつる笑顔の32才。

「ああ帰りたい。この場から消えたい」

と強く思ったことだろう。酔ってテンション上がりまくりの私にはそんなことすら思い浮かばず、キャッキャッとはしゃぎまくっている。


そして30分ほど経った頃、お開きの挨拶となり、晴れて彼は解放。逃げるように一目散で会場から姿を消していった。

「あらー。帰っちゃったの?」

とヘラヘラ笑う私。そして各自タクシーでさようなら。

ああ楽しかった。久しぶりの飲み会サイコー♪


・・と浮かれたまま一晩が経ち、激しい頭痛で目が覚めた。

「いってー!ううう、飲み過ぎた~!」

フラフラしながらキッチンに立ち、冷たい水をゴクゴク飲むと、ぼんやりしていた頭が少しはっきりしてきた。すると・・

「しまったー!やっちまったよ!」

昨夜の32男子にグイグイ迫る「勧誘のおばちゃん」化したわが姿を想いだし、いっきに顔が熱くなった。若い子相手にセクハラじゃん!取引先の人なのに!ああどうしよう!?

「私のバカバカバカー!!」

頭痛でフラフラの私はベッドに潜り、しばらく恥ずかしさに耐えた。きっと32男子はあの後

「痛いBBAに迫られてチョー迷惑」

なんてSNSで拡散していたかもしれない。そんな人じゃないと信じたい。ってか、してくれ。アホな私を改心させるために。

ベッドでもがきながら「二度と人前では飲むまい」と固く誓ったのであった。

懲りない私のこと、多分また「やっちまう」んだろうけどw




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