今日のお昼ご飯は、世界で一番おいしいサンドイッチです。
「ママ、長男くんと結婚しよ?」
そんな言葉と共に渡されたサンドイッチは、朝日の中でキラキラ輝いていて、うっかり「……はい」と答えそうになってしまう。
きっと今日のお昼ご飯は、世界で一番おいしくなる。
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「明日のお弁当はサンドイッチにしよう」と決めたのは、昨日の夕方だった。
帰路で立ち寄ったスーパー。
サンドイッチ用のパンが目についた。
ふむ。これに、家にあるトマトや、冷凍のコロッケを挟んで食べたらさぞかしおいしいだろうなぁ。むふふ。
サンドイッチ用のパンは普通の食パンよりも割高。けれど、私一人がひっそり食べるくらいだし…
たまにはよかろう。楽しみ。むふふ。
ああ、明日の朝、楽しみだなぁ。
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「ママー!起きてー!夢の入り口があるよー!スピノサウルスと一緒に行ってみようよー!」
朝。そんな誘い文句で私を起こしてきたのは2歳の長男である。
朝出かけるまえにサンドイッチを作ろうと目論んでいる時に限って、いつもより1時間以上早く起きてくる。つくづく子どもというのは、「そういうところ」がある生き物だ。
「夢の入り口〜?なにそれ行ってみたーい!」などと返しながら、出勤までの時間をカチカチカチカチ計算して……もうこうなったら仕方ない。
「一緒にサンドイッチ作る?」
「つくるー!!!おてつだいするー!!!」
カフェ猪狩の、モーニングキッチンのはじまりはじまりである。
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小さな「お手伝いテーブル」に、長男用のまな板、プラスチックのナイフとお皿を準備する。
サンドイッチ用のパン、ジャム・ハム・チーズなど彼が好きな具材を並べる。
好きなように具材を挟み込み、できたらその場で「いただきます!」とかぶりつく!
それがカフェ猪狩のサンドイッチスタイルだ!
わざとハムをチラ見せする、
当店自慢の「ずれちゃってるサンドイッチ」
ママのぶんも作る!と言ってくれたので、私のお昼ごはん分のサンドイッチ作りも手伝ってもらう。
最後のひとつ、ジャムをたっぷり挟んだサンドイッチを作り終えると、彼はできたてホヤホヤのそれを「はい、どーぞ」と私に差し出した。
ありがとう、と受け取ると、これは今この場で食べないといけないという思いに駆られて、「お弁当」をその場で食べる。いちごジャムの甘酸っぱさと、バターの塩気が口の中に広がった。
「おいしいねぇ」「うん、おいしいねぇ」
しみじみと言い合って、笑い合う。すると、長男はぽつりと言った。
「ママ、結婚しよ」
「え????」
「結婚」なんて単語、教えたこともないし、彼の口から出るのも初めて聞いた。保育園で女の子が言っているのかな…?思わず聞き返す。
「けっこん??? 誰と?」
「長男くんと。長男くんとママ、結婚しよっか!」
二人で朝ごはん作って食べて、美味しいねって言い合って、笑い合って、ほっこりしたタイミングでプロポーズとは……
お主、なかなかやるな!!!
でも、その言葉は、未来あなたが出会う大事な人のためにとっておいてね。
そんな気持ちを込めて、私は一言、「ありがとう」とだけ言った。
え???泣いてませんけど???
これは心の汗ですけど???
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食べちゃったいちごジャムサンド以外のサンドイッチをタッパーに詰めて、蓋を閉める。
可愛い息子たちを残し、私は今日も出勤だ。
でも今日は、いつもと一味、いや二味違う。
午前の勤務を終えて、次この蓋を開けるとき。
いちごジャムサンドの、甘酸っぱさとしょっぱさと、幸せが心に広がることだろう。
今日のお昼ご飯は、世界で一番おいしい。
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猪狩はな💙@hana_so14
https://twitter.com/hana_so14
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