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Night Flight

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日常と非日常のはざま
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#死生観

悪魔の証明

悪魔の証明

 (心にとって)しずかなよるが、戻ってきた気がする。今日は書ける。
 そういう状態は予感めいてわかるものだ。

 おかえり

 なのか、

 ただいま

 なのか。

 こういう夜は眠るのがもったいなくて。
 そうきっと私は明日をもとめていなくて、明日を待つ夜だけがやさしい世界だと感じている。
 明るみに出なければ、なにもかもは希望のうちに終わる。幸せに暮らしました、めでたし、めでたし。
 明日な

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ぼくたちはかなしみのままで

 不安を緩和するクスリはあっても、
 かなしみを取り去るクスリはないんだ。

 窓のカーテンのすそから差し込む光をぼうっと眺めながら、ふと、そんなことを思った。

 喪ってしまったものは二度と戻らないし、また喪うことを想像すると明日を生きることすら怖くなる。

 ニュースは非情にも、すでに起きてしまったことを伝える。
 そんなことが、もう起きてしまって、ことはすんでしまったのだと。
 だれかが泣く

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イヤホンがエレベーターの扉のすき間に吸い込まれていったとき、えもいわれぬ悲しさがよぎったのです。

イヤホンがエレベーターの扉のすき間に吸い込まれていったとき、えもいわれぬ悲しさがよぎったのです。

それは一瞬のできごとで、
かちゃりぱたりと音がしたかと思うと、それはエレベーターの内扉と外扉のすきまの深い溝の、もう手を差し入れても届かないくらいのところに引っかかっていました。
何を落としたのか認識できずに覗き込んでみたら、暗い空間の上の方に、かろうじて特徴的なジャックと、白いコードが見えました。
私が確認するのを見届けるみたいに、一瞬の対峙はあえなく解かれ、どこへともなくしゅるりと吸い込まれて

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ゾウリムシ

ゾウリムシ

昭和の未解決事件、という文字列や画像を見た時に視界をこえて絡まってくるあの感じをどこで体験したのやら、
私の幼少期の片田舎のさらに田舎にはその香りがおそらく平成一桁いっぱいくらいまでは残っていて、だから私のふるさとは昭和なのだと思う。

なんだか自分でもよくわからないのだけど、6歳か7歳くらいで自分はもしかしたら死ぬはずだったんじゃないだろうか、と、唐突に思いついた。

この帰結はわりとしっくりく

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