【書評】私たちは、チンパンジーに負けたままでいいのか?【レビュー】
「チンパンジークイズ」なるものをご存知だろうか?
このクイズは、「世界の事実」に関する問題が12問、3択形式で出題される。
貧困や教育、人口分布と未来の人口予測など、世界に関するあらゆる事実についてのクイズだ。
3択だから、チンパンジーが無作為に「A・B・C」と書かれたバナナを一本ずつ選べば、正答率は33%(12問中4問は正解できる)になるだろう、という確率論からネーミングされている。
そしてこのクイズの正答率は、8割の人が30%を切る。つまり、8割の人がチンパンジーに勝てないのだ。
かくいう私もこの本「FACTFULNESS」を読むまでは、チンパンジー以下だった。
・チンパンジーに勝てない私たち
人間である私たちには、太古の昔から培ってきた本能がある。
それらの本能は、自然界で他の脅威となる生物や災害から身を守るためには、ともて役に立つものだった。
しかし現代社会に生きる私たちにとって、それらの本能は「事実をありのままに見つめる」ためには役に立たない。
むしろ、思い込みや勘違いを引き起こす原因になってしまい、結果的に私たちの判断を「チンパンジー以下」にしてしまう。
残念ながら、私はこの本を読むまで、自分が「チンパンジー以下」だとは思っていなかった。ちゃんと大学は卒業したし、新卒でそれなりの企業へ就職することもできた。
だけれど、冒頭の「チンパンジークイズ」は、いわゆる「先進国」と言われる国に住み、「優秀」だと言われる大学や企業、団体に所属している人たちの8割が、「チンパンジー以下」であることを証明している。
率直に言って、プライドがどうこう感じる余地もなかった。
「このままではヤバい気がする」という危機感を一番に感じた。
・「本能」に踊らされる私たち
私たちの「本能」は、実にいい加減だ。
例えば、「〇〇さんて〇〇だから、〇〇なんじゃない?」と、わずかな行動でその人の性格を決めつけでしまったり。
ちょっと仲の良い友達同士で盛り上がった話を、「今世間で流行ってるらしい!」と拡大解釈してしまったり。
この本では「本能」を10個のパターンに分けて、どうやって私たちが「本能」によって誤った思い込みに踊らされてしまうのかが言及されている。
私たちはこの「本能」によって、あらゆる物事を「単純で、白黒はっきりしていて、パターンによる繰り返しでできていて、原因と結果が直接結びついており、効果はすぐ現れる」と勘違いしている。
しかしながら、私たちを取り巻く世界は「複雑で、グラデーションがあって、単なる繰り返しとは限らず、原因と結果が複雑に絡み合い、効果は遅れてやってくる」ものなのだ。
私たちの「本能」は、目の前の現実をどうしても"ドラマチック"に捉えてしまう。世界は恐怖に満ち満ちていて、遠い世界では恐ろしい犯罪や災害が起きていると思い込んでしまう。
そんな"ドラマチックな世界の見方"に踊らされていては、世界を誤った方向へ導いてしまう可能性が極めて高いのだ。
・チンパンジーに勝って、世界をより良くするためには?
「FACTFULNESS」の中では、様々なデータに基づく事実が紹介されている。
例えば、世界では過去20年間で極度の貧困にある人の割合は半分に減っているし、世界中の1歳児の80%が、なんらかの病気に対して予防接種を受けている。
世界は確実に進歩し、よくなっている。
しかしながら、私たちはメディアやネットの悪いニュースばかりに踊らされて、「世界はどんどん悪くなっている」と思い込んでしまっているのだ。
そのままではいつまでも、チンパンジーに勝つことができない。
私も正直、この本を読むまでは、「世界は悪くなっていて、遠い国ではテロや戦争が起きていて、貧困はいつまでも無くならず、人口は増え続けて資源が枯渇してしまう」と思い込んでいた。
だけど、本当は違う。よくなっていることだっていっぱいある。
それにテロや戦争よりももっと多くの人を死に至らしめているのは、もっと他に原因があるのだ。
そういった「世界に関する事実」を、正しく知らなければならない。
この本を通して、「正しい世界の見方」を知ることができると、心配や不安が少なくなっていることに気がつく。
チンパンジーに勝つのは、簡単だ。
人間がどんな本能に影響されやすいかを把握し、「正しい世界の見方」ができているか、自分を常に疑い続ければいい。
事実をきちんと認識できれば、その問題に対する解決策もより良いものが見つかるはずだから。
・大切な人や子どもにも読んでほしい本
この本は、自分にとって大切な人や、いつか大きくなった子どもにも読んで欲しいと思えるものだった。
この本は共著で、メインで紹介されるエピソードはTEDトークでも有名なハンス・ロスリング氏のものであり、息子夫婦のオーラ氏、アンナ氏の3人によって執筆されたものだ。
ハンス氏が貧困地域の医師として、また公衆衛生学の教授として体験されたエピソードはどれも心を揺さぶるものだったし、ハンス氏を取り巻く家族のエピソードも心温まるもので、分厚いボリュームがあるこの本を何とか最後まで読んで欲しい、という思いが伝わるものだった。
特に、作者あとがきは涙無くしては読めなかった。
世界をより良くしていくのは、他でもない私たち一人一人の力だ。
この世界の一員として、未来を担う子供達のために、何を選び、何を守り、何ができるのか。
そんなことをこれからずっと考え続けていくための、コンパスとなってくれるような、素晴らしい本だった。
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