NOTE11_サムネ

風船🎈とサイコロ🎲でなぁんとなくイメージをつかむ熱力学入門用語2

今回は自分が物理・化学で一番苦手な「熱力学」のはじめの方で出てくる用語をかみ砕いて自分なりの言葉で説明してみようというぱわぽdeプレゼン企画NOTE第2回目です。第1回は内部エネルギーでしたね。

今回は名前が似ているエンタルピーエントロピーについて書いていきたいと思います。よかったらこの名前が似てる2つの概念がどんなものなのかを覚えて帰ってください。それでは、まずエンタルピーから始めましょう。


2.エンタルピー H

エンタルピーは記号Hで書かれまして、内部エネルギーUと考え方が似ています。とりあえず、第1回でやったUについて簡単におさらいをしておきましょう。

<RPG風に捉える内部エネルギーU>
   内部エネルギー U = 体力(HP)
   与えられた熱 Qin  = ポーション(POT)
   膨張 Wout      = ダメージ(DAM)
と書くと戦闘前後のHP変化量 ΔHP は
   ΔHP =POT-DAM
この式を熱力学に当てはめて
   ΔU  =Qin-Wout  (熱力学の第一法則)
風船内のガスが基準なんで、添え字 in はエネルギープラス、out はエネルギーマイナスだと分かるようにわざわざ書いてあります。

復習
風船が膨張しない場合の内部エネルギー変化量 ΔU(条件:等積)

内部エネルギー変化量 ΔU は熱 Qin を与えても風船が膨張しない条件で考えました。これを熱力学の第一法則の式に当てはめると ΔU=Qin となり、ガスは熱 Qin を獲得して分子運動を活発化させて ΔT だけ温度上昇が起こりますよってことをやりました。今度のエンタルピーHは「ほな、普通に風船が膨張したらどうなんねん?」ってことを考えます。

とはいえ、それほど難しいことではありません。ガスが獲得した熱 Qin のうち一部が風船の膨張に使われますよっていう話です。もし、風船の外の圧力がずっとPで一定で、風船の体積が ΔV 増えたとしたら膨張に費やされるエネルギーは PΔV となります。そうすると、ガスが獲得するエネルギーは Qin から PΔV だけ目減りします。これが膨張しない場合との違いですね。

風船が膨張する場合のエンタルピー変化量 ΔH(条件:等圧)

熱力学の第一法則の式に膨張に費やされるエネルギー Wout=PΔV を放り込んで整理してみましょう。
   ΔU =Qin-Wout   (外圧P一定で Wout=PΔV)
     =Qin-PΔV
   ΔH =ΔU+PΔV=Qin
エンタルピー変化量 ΔH の定義は内部エネルギー変化量 ΔU と膨張エネルギー PΔV を足し合わせたものです。気づいた方がいらっしゃるかもしれませんが、風船が膨張しない場合の ΔU と風船が膨張する場合の ΔH、どちらもガスに与えた熱 Qin そのものを指していますね。

上2つのスライドで比熱がCvからCpに変わっているのは、風船の膨張の有無による数値の違いがでてくるからです。ここで補足として求めてみましょう。
   ΔH = ΔU + PΔV 
ここに、
   ΔU = nCv ΔT(膨張しない方の式)
  PΔV = nR ΔT (膨張する方の理想気体の状態方程式)
を放り込むと
   ΔH = nCv ΔT + nR ΔT  
   ΔH = n(Cv+R)ΔT 
Cv+R=Cpと置き換えると
   ΔH = n  Cp  ΔT 
となって、比熱CvとCpは気体定数 R だけ差があることが分かりました。言い換えれば、ガスの温度を1℃ 上げようと思ったら、風船が膨張する方は R だけエネルギーが余計にかかってしまうのです。Cに付いている添え字はvが風船の体積が一定であること、pが外界の圧力が一定であることを明記するためのものです。結局、ΔU と同じように ΔH も中学理科の水を温めるときの熱量計算と同じで、量n×比熱C×温度変化 ΔT っていう式の構造自体も同じになりましたね。まぁ、どちらも与えた熱 Qin を意味しているわけですから、逆にそうならないとおかしいっすよね。

比熱の違い

3.エントロピー S の感覚的な捉え方

エンタルピー H と名前が似ているエントロピーは記号Sで書かれるもので、もしかしたら「魔法少女まどか☆マギカ」でキュゥべえがセリフで覚えている方がいらっしゃるかもしれませんね。一般に、エントロピーを説明する言葉を検索してみると乱雑さだとか、情報の分野では不確定さを表す度合いだとか書かれていてしっくりきません。ここは一つ、厳密には間違っていますけれど、感覚的に捉えやすい例を出してみます。

エントロピー変化量 ΔS を一言で説明するなら、状態変化の起こりやすい方向・矢印を教えてくれる状態量(数字)になります。例えば、無限個のサイコロを同時に振ることを考えてみましょう。あらかじめ、ゾロ目を状態[1]、ゾロ目以外の目を状態[2]と呼びます。

エントロピーの感覚的な捉え方

状態[1]からスタートしてサイコロを何回か振ったらどうなるでしょうか?さすがに全部同じ目がでるようなことはなくて、バラバラの状態[2]になるはずですよね。この時、レアでキレイに整った状態[1]をエントロピーが小さい、バラバラで乱雑に散らかった状態[2]をエントロピーが大きい、と表現します。

また、状態[1]のエントロピーをS[1]、状態[2]のエントロピーをS[2]とするとエントロピー変化量 ΔS は下の式で表すことができます。

   ΔS =S[2]-S[1] (S[2]>S[1]なので)
   ΔS >0 (エントロピー増大の法則、熱力学の第二法則)

ΔS>0 は状態[2]の方が起こりやすいことを意味します。スライドの中にデカデカと赤色矢印で書いてます通り、向きは右向きになります。こういう風に ΔS は状態変化の方向を教えてくれるのです。もし、状態[2]からスタートしたとしても状態[1]にはなってくれません。なぜなら、状態[2]の方がエントロピーが大きいからです。

このサイコロの例のように、世の中や宇宙はバラバラになったり、乱雑に散らかる(エントロピーが大きくなる)方へと変化しています。実はこの ΔS>0 がエントロピー増大の法則、熱力学の第二法則を表す式なんですね。本当は過程の話をしなきゃいけなかったんですが、ここでは感覚的な分かりやすさを最優先したためにぶっ飛ばしました。これは機会があれば第3回で触れましょう。

3'.ΔSが分かったら何が嬉しいの?

ΔS が分かったら何が嬉しいのかを知るために身近な例を挙げましょう。
① 氷の融解と② 熱湯の蒸発、どっちの変化が起こりやすいでしょうか?

  状態[1]    状態[2]
① 0℃ の氷     → 0℃ の水      (氷が融ける)
② 100 ℃ の熱湯 → 100℃ の水蒸気  (熱湯が蒸発する)

「いやぁ…… さすがに評価基準がないから比べようがないっしょ?」ってのが第一印象なんですけど、ΔS を使えばこれが一発で分かっちゃうんです。両者の ΔS は次の通りです。

① ΔS ≒ 1.2[J/K] (氷が融ける)
② ΔS ≒ 6.0[J/K] (熱湯が蒸発する)

この2つの ΔS が言っているのは、液体になるより気体になる②の方が水分子が動きまわりやすくてバラバラ度合が大きくなるよってことです。一見比較できなさそうなものを比べることができるってのがエントロピーの凄いところですねぇ。いかがでしたか?エントロピーについては他に量子力学とからめたNOTEも書きましたので併せてどうぞ ( 'ω' )っ📒

今回はここまで

第3回はエントロピーの続きと2つの自由エネルギーについて語る予定です。今回もどうもありがとうございました ( 灬'ω'灬 )੭⁾⁾

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