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解読「羅生門」

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芥川龍之介の「羅生門」を中心に解読しています。
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#ニーチェ

「羅生門」を読む⑦ 完結編/観点別考察

「羅生門」を読む⑦ 完結編/観点別考察

これで「『羅生門』を読む」シリーズは完結です。だいたい書き尽くしたかなあ。まとめの意味で、観点別に述べてみました。長いので、興味のある項目を読んでいただければいいと思っています。お暇なときにどうぞ。

▢極限状況の創出

日本文学において極限状況下の人間を描く作品は、大岡昇平の「野火」「俘虜記」、武田泰淳の「ひかりごけ」、島尾敏雄「出発は遂に訪れず」、安部公房「砂の女」、中島敦「山月記」あたりが思

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「羅生門」を読む⑤ 精読編2-下人の憎悪と〈善/悪〉の相対化

「羅生門」を読む⑤ 精読編2-下人の憎悪と〈善/悪〉の相対化

芥川龍之介の作品を読むとき、絶えず意識されるのはこの作家の物事や人間を見る目である。それは容赦の無く対象を見透かす目である。そういう意味で彼は徹底したリアリストであるということができる。彼のこの目は自分にも向けられ、彼自身を毀損することにもなる。よく言われる「見えすぎる」苦悩というもので、それは決して人を「幸福」にするものではないだろう。

だがそのことが彼の作家として負の要素とはならないことは言

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