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薄楽詩集

40
詩をまとめています。
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#ひとり連句

【詩】黄昏ている

【詩】黄昏ている

黄昏れている

自転車が黄昏ている
ブランコが黄昏ている
物干し台が黄昏ている
ブラウスが黄昏ている
ジャングルジムが黄昏ている
コルセットが黄昏ている
鉄棒が体育館裏が素敵な先生が黄昏ている

黄昏ている たそがれている

スーパーマーケットが黄昏ている
きみの作ったおいしかったオニオンスープが黄昏ている
コンビニエンスストアも黄昏ている
カップラーメンも茶碗蒸しも黄昏ている
街のカップルも警察

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【詩】小町幻想

【詩】小町幻想

 

  
 はなの色はうつりにけりないたづらに 
            我がみよにふるながめせしまに  小野小町

ほほえんでみると
誰よりもうつくしかった

拗ねてみると
誰よりもあいくるしかった

いろんなをとこが
わたしを抱きにきた

無垢なる恋に飽き
自らの手管に溺れ
知恵の虚しさにくちびるを噛む日々
蛇の勝ちほこった笑い声が
十六夜の山あいに谺し
花の雨を降らせる

どれだけの生贄が

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【詩】挽歌

【詩】挽歌

 

挽歌

少しづつ距離ができる
希望が生まれるたびに
願うたびに

ぼくたちは言葉で幾多の景色をつくった
まるで国産くにうみのようだと君はいい
ぼくは初夏に横たわる丘陵のような
君のなだらかな腹を無言で撫でた

とるに足らない戯れの
過ぎてゆくほどに
たまらなく愛おしくなるのは
なぜか

希望がかなえられるごとに
言葉は単なるツールとなって
ぼくたちは
労働者の消えた鉄の街の
払い下げアパート

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