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薄楽俊
2024年3月21日 00:02
後朝のうた春はあけぼの山ぎわに目覚めた泡立つ光にふたりのときは美しくこわれ薄もやのたえだえにしずかに身を横たえるせぜのあじろぎ水おとはさやけくほそくまだ草むらに這うものの雲はすでに峰をはなれてたなびき 人の袖の涙もそのようにまたうつろいゆくものかしのぶもじずりわれならなくにまた巡り逢う日をおもいゆっくりと剥がれたときの表皮を抱くのみのわたくしなのです #詩 #現代
2024年3月16日 19:17
猫の噂 春雨のふるは涙かさくら花 ちるを をしまぬ人しなければ 黒主細い路地に入ってたぶんふと気を許したのかもしれないその猫は笑ったのであるちょうどそこに廃棄されたカーブミラーが放置されていたのがいけなかったどうもその猫は当局に拉致されたみたいだその前夜は春雨だったある子供が猫に踊りを教えていたという密告もあったようだ
2024年3月13日 23:55
春のわかれあの日 とぼとぼと歩いた その足跡を波がさらっていった 浜辺でもないのに ぼくは あのとき 泣いていた のかも しれなかったただ 立ち去っていく背中だけがみえた あれは なんだったのか 女といえばきこえはいいが そうだ あの波は 街の白昼の断崖まで ぼくらがわずかになった春をむしり取るように無言で働いた あのビルの解体現場まで たぶん 達してい
2024年3月10日 01:07
薔薇のはなしばらばらになったものをひろいあつめたってジグソーパズルのようにはつながるわけではない 夜と朝もめったにないたまたまでつながっているようにみえてるだけだ空き瓶に挿した薔薇がまだあるという奇蹟曇り窓に朝のひかりがとどまり、ヘアピンが部屋の隅に咲いているハンガーにはワンピースが生乾きのままぶらさがりシンクの皿に残る薄切りのレモンと青白いシーツが昨夜の雨をよみがえ
2024年3月7日 19:44
ミモザの頃用心しなければならない 今日が無事なのは 川面がひかりをはじき鳥の声がきらめいているからなのだ 朝からのこの道には ささやかな三月の平穏がながれ 午後のいつもの公園につづいている そこには昨夜の褥の春雷はなく ミモザの匂いの記憶があの噴水にたちあがるやわらかなはるのうれいああ 喪われている現在 恋は剪り時がむずかしいのだ #詩 #現代詩 #自由詩 #