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【詩】薔薇のはなし
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薔薇のはなし
ばらばらになったものをひろいあつめたってジグソーパズルのようには
つながるわけではない 夜と朝もめったにないたまたまで
つながっているようにみえてるだけだ
空き瓶に挿した薔薇がまだあるという奇蹟
曇り窓に朝のひかりがとどまり、ヘアピンが部屋の隅に咲いている
ハンガーにはワンピースが生乾きのままぶらさがり
シンクの皿に残る薄切りのレモンと青白いシーツが
昨夜の雨をよみがえらせている
この朝の部屋には いつもと同じ いくつかの断片が
川辺の小石のように散らばっている そして
その愛しい断片たちは 午後にはもう まどろむ陽のなかで
薔薇の花びらように散っていくのだ
結局のところ記憶は 彼方の岸の城でしかない
遠ければ遠いほど それは 完璧な様相で自分の前にそびえ立ってくる
もういいだろう ばらばらになったものを
いくらひろいあつめたってつながりはしない
バラバラになった薔薇の美しさほどにはなにごとも美しくないのだ
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