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「色の多様性」を追求して制作したアートワーク

こんにちは!
博報堂プロダクツの内田成威です。( MDビジネス事業本部/プロダクトデザインチーム所属)プロダクトデザインチームはクライアント商品の企画やカタチのデザインなどを手掛けるプロダクトデザイナー集団です。

今回は、フォトグラファーの平田正和さん(フォトクリエイティブ事業本部/drop所属)と共同制作した写真作品のご紹介です!dropは、商品の魅力を最大限に引き出すシズル専門の撮影チームです。


フォトグラファー&プロダクトデザイナーによる化学反応!

平田さんとはあるお仕事で出会いました。お互いのクリエイティブに関する好みやこだわりなどいろんな点で意気が合い、何かおもしろいものを作ってみよう!と昨年から実験的に創作活動を行っています。光を操り、ものを撮影するのが得意なフォトグラファーと、色や感覚をカタチに落とし込むプロダクトデザイナーの化学反応を楽しみながらものづくりをしています。

「光と感覚」を表現したアートワーク

今回ご紹介する作品は、色の多様性を追い求めた写真作品になります。
コンセプトは「光と感覚」です。

私たちが日々目にしている色は「光」と「感覚」によって変化します。昼や夕方の太陽光で世界の色が変わるように光の種類や角度によって、また、人それぞれの感覚・色覚によっても色の見え方はさまざまです。例えば、淡いピンクが水色に見える人がいるように、自分に見えている色が他の人にとっても同じように見えているとは限りません。

色覚多様性に配慮した、色を伝える折り紙のデザインでもお話しましたが、私自身が 色覚特性※ の目を持つデザイナー・クリエイターという背景があり、色に関して昔から疑問を持っていました。例えば、私には緑の葉は茶色に見えますし、紫は深い青に見えたりします。一般色覚の方とは違った色世界で生きています。人の感覚や色覚によって色の見え方は違うよね?そもそも色って何だろう?ということを考え続けています。

そういった色の多様性と不思議さを、デザインや広告制作の経験を活かしてクリエイティブに表現したい!という想いから、「光と感覚」のコンセプトを表現するために様々な試行錯誤を行いました。そして「偏光」という光を用いて「無色透明なフィルム」を被写体として撮影するところにたどり着きました。

賛同いただいた平田さんのおかげで実現した今回の作品は、実は600枚以上撮影をしており、その中から厳選を重ねた約10点の作品を紹介します。

※色覚特性(色覚多様性)とは、色の識別に特性を持つ人がいて、それぞれの見え方による多様性のことをいいます。色覚特性にはいくつかのタイプがあり個人差があります。
一般色覚と呼ばれる方は、日本男性の約95%、女性の99%を占めており錐体細胞(赤・緑・青を見分けるためのセンサーのような細胞)が3種揃っています。色覚特性の方は、3種類の錐体細胞のうち1つから2つ、またはすべての錐体が弱い、または無いという特性があります。こういった色覚特性の方が日本全体で320万人いるとされています。

今回の作品は、博報堂プロダクツの社内で展示を行っており(残念ながら一般の方は入場いただけませんが、どこかでみなさんにご覧いただける機会があればと思います)その雰囲気もあわせてご紹介します。前書きが長くなってしまいましたがぜひご覧ください!

社内の展示風景 とても大きな写真作品を展示しました。
(※一般の方は入場いただけません)
コンセプトボード

光・偏光が創り出す豊かな色

今回の作品は全て無色透明なフィルムを被写体に、偏光板の特性を用いて「色のない素材に色を見いだして」撮影しています。

偏光板とは、特定方向に振動している光だけを通過させる性質を持っている板です。自然光は無偏光ですが、光を偏光板に通すことである一方向に偏光した光を取り出すことができます。透明フィルムを偏光板の間に置くと、さまざまな色が現れます。透明フィルムと偏光板の角度や重なりによって色が変化します。

透明なフィルムに色が現れます

「透明なフィルム素材から見える色って何色なんだろう?」「変化する色ってどれが本当の色なんだろう?」といった疑問を2人で話し合いながら、目の前で起こる色の変化に驚きながら撮影を行いました。

撮影に使用した素材で制作した立体オブジェ

撮影に使用した同じ透明フィルムと偏光板を用いて立体オブジェも制作しました。透明フィルムから色が見える不思議さや変化をダイレクトに体験してもらえる装置もあった方が面白いと思い制作した作品になります。

黒く見える丸い板は、天井から吊るした偏光板です。ライトテーブルの上に形作ったフィルムが置いています。あまり説明的にならないように、見た目のシンプルさと魅力を考えながら試作を経てこの作品が完成しました。

透明フィルムから色が見える不思議さをダイレクトに感じてもらえる作品
天井から吊るした偏光板を回すと、色が変化し見える仕組みです

この作品を見ると、偏光板を通してフィルムに鮮やかな色が見えます。丸い偏光板が空調や人の動きによってゆるやかに揺れたり回転したりすることで、さまざまに色が変化する見ていて楽しい作品になりました。

感覚・色覚による色の多様性

最後の作品になりますが、これは「感覚」にフォーカスした作品になります。冒頭でもお伝えしましたが、人の感覚・色覚によって見えている色はさまざまです。自分に見えている色が、他の人にとっても同じように見えているとは限りません。

下の2つの写真は、色覚特性の方の色の見え方を再現した作品になります。
左側が一般的な色覚(撮影したままの色)、右側が色覚特性(1型色覚)の見え方を再現したものです。このように色覚には個人差があり同じ色でも人によって見える色には多様性が生まれます。

伝えるのが難しい色の見え方の違いですが、色覚の多様性をクリエイティブに感じていただけるように工夫しました。

左:一般的な色覚の見え方(撮影したままの色)
右:色覚特性の方の見え方をシミュレーションした写真
社内の展示風景 空間の中に色が引き立つようライティングも工夫しました。

まとめ

作品のご紹介は以上になります。
普段あたりまえに見ている「色」について面白いと感じてもらえたり、色の見え方について何かのきっかけになったりするとうれしいです。

今回の作品は、いろんな方のご理解とご協力のおかげで実現することができました。感謝の気持ちでいっぱいです。noteを通して作品と作品に込めた思いを多くの方に見ていただけることを願っております。これからも創作活動を続けていきますのでよろしくお願いします!

次回は作品の制作プロセスや撮影シーンなどを配信する予定です。
最後までご覧いただきありがとうございました!


PROFILE&COMMENT

平田正和 / MASAKAZU HIRATA
PHOTOGRAPHER
博報堂プロダクツ フォトクリエイティブ事業本部 drop
[ PHOTO CREATIVE ]
[ drop ]

今、見ている色は正しいのか。 そんなことを考えさせられる撮影でした。

そのように見える人の割合が多いから 葉は『緑』 空は『青』とされている。 それは私達からしたら至極当たり前のことですが、それを疑ってみる。 違う視点で見てみる。ピュアな心で、常識を疑っていきたい。 そこに新たな創造があると思います。

内田さんとは昨年から部署間を越えて共同で作品制作を行い、 様々な企画、試作を経て、今回の展示に至りました。 今回は『光と感覚』をテーマに透明なフィルムを撮影しています。


内田成威 / SHIGETAKE UCHIDA
CREATIVE DIRECTOR
博報堂プロダクツ MDビジネス事業本部 プロダクトデザインチーム
[ プロダクトデザイン部のアトリエ ]

色覚特性(色覚異常)の目を持つ私にとって「色」は永遠のテーマであり、
色彩豊かな作品を生み出すのは私の夢でした。

色は「光」によって変化し、見る人の「感覚・色覚」によっても変化します。
その面白さ、魅力、謎を探求することを作品のテーマにしました。
賛同いただいた平田さんの感性とアングルによって
素晴らしい作品が生まれました。そして、たくさんの発見もありました。
みなさんご自身の感覚で作品を楽しんでいただければと思います!
よろしくお願いいたします。





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