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ブラウン管の生霊/連載エッセイ vol.37

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.39(2007年4月)」掲載(原文ママ)。

え~突然であるが…

『I love San Francisco!!』

…などと書き出すと親愛なる読者の皆様は

『アメリカ研修とかいって、ラスベガスだけでなく、今度はサンフランシスコでも油売ってきやがったか!!』

と思われるやも知れないが然にあらず。

この都市での滞在時間は、成田から到着した後、ベガスへの乗継を待つ僅かな時間のみ。
その短時間に遭遇する『イベント』といえば…、そう『入国審査』である。

当然、一般市民ましてやツアー旅行者にとって入国審査は、所謂『通過儀礼』に過ぎず、『Sightseeing(観光で来ました)』と『6days(6日間滞在します)』をとりあえず怪しげなJapanese Smile(愛想笑いのコト)を浮かべながら連呼すれば、ほぼ問題なくクリアできる。
(保証はしないが…)

しかしながら大学時代に客船でグアムを訪れた際の『出国記録』に不備があるワタクシは、そう簡単にはいかない。

(この件に関する詳細は、『ほねっこ通信vol.15』の名作エッセイをご参照頂きたい。まったく米国側のミスなのに…腹立たしい限りである)

以前のパスポートや状況説明の英文を持参したりしても、結局LA国際空港の『審査部屋』へ回されて、1~3時間程度のロスとなるのが常であった。(LAだけに…。)

今回は初のシスコ着。
しかも数時間後には乗継が控えている為、長時間の足止めは避けなければならない。

JAL便が着陸するや否や、エコノミー席の最後尾付近に陣取っていた私は『Excuse me!!』を連呼しながら出口へ向かって突き進む。

空港内でも『動く歩道』になんか乗らない。
その横を鬼気迫る表情で『競歩選手』の如く追い抜き突き進む。

入国審査コーナーでは少しでも並びが短い列を探し出し突き進む…。

努力の甲斐あって、仲間達よりだいぶ早く審査を受けられる模様。
あとはどれだけロスを短縮できるかだ。
満面の笑みを浮かべ、パスポートと英文を小脇に抱え
審査官殿!!
いざ勝負…!!

結論から言うと、審査は拍子抜けする程アッサリとしたもので、私は問題なく入国を許可された。

聞けばこれまで利用してきたLAの審査は米国トップ級の厳しさを誇り、一方シスコは古くから移民を受け入れてきた土地柄から比較的『緩い』のだとか。
旅行代理店の方に『来年以降もシスコ経由で行きましょう』と訴えたのは言うまでもない。

さてこんな具合に始まった今年のパーカーセミナー・ラスベガス。

昨年のパーカージャパン開催の影響が随所に見られて、日本人としても誇らしい充実したものであった。
まぁ詳しい(真面目な!?)報告は表面に任せるとして、珍事件はセミナー初日終了後の『パーカーセミナー55周年記念パーティー』で起きる。

その夜は師匠に連れられてベガス№1レストランで地中海フレンチを堪能し、ホテルへ戻った。
どうやらメイン会場ではまだパーティーが盛り上がっているらしい。

見れば様々なエンターテナー達が入れ替わり立ち替わりステージ上でパフォーマンスを繰り広げ、宛らダンスフロアの如し。
そしていよいよトリを務めるパワフルな黒人女性シンガーが登場、見物者を数人ステージに上げて踊らせ始めた。

私は逸る自らの『芸人魂』を押さえ込むのに必死であった。

仮にも自分は日本人参加グループの中枢の一人。
カイロプラクターとしてブレークする事はあっても、芸人として弾けては仕方がない。

落ち着け…静まれ…。

しかしその均衡を破る人物が登場した。
パーカーセミナー代表のDr.マンシーニである!!

彼は私を見つけるなり

『Tony!!お前の出番だろう!! You上がっちゃいなよ!!』

と再三に渡って『指令』を飛ばしてきた。

流石にセミナーの最高責任者のご用命とあらば仕方がない…。
私は渋々(!?)ステージに飛び乗り観衆に相対する…。

『さぁ…Show Timeのはじまりだ…』

出番を終え、喝采に包まれながらステージを降り、私は師匠の不在を確かめる。
バレたら怒られかねないパフォーマンスだったからである。
そして周りの日本人参加者にも堅く口止めしつつ、部屋へ戻った。

ベッドに腰掛け、訳もなくTVをつけ、ザッピングしながら今宵のステージの出来栄えを反芻する…。

すると…自分の視界に若干の違和感が生じた。
目を凝らすとどうやらブラウン管の中で踊り狂う東洋人の姿が…!!

そのまさかである!!

セミナー会期中は会場となるヒルトンホテル3000室は全てカイロ関係者で満たされる為、臨時の『パーカーセミナーチャンネル』が開局され、セミナーのダイジェストを24時間体制で放映していたのであった…。

狂喜乱舞する己の姿を虚ろな瞳に映し込みながら、そして私はふと考える。

『来年…入国審査は楽勝だけど…セミナー参加許可は下りるのだろうか…』と。

ゴ~ン…!!


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