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痛みのわかるオトコ…それは「反面教師!?/連載エッセイ vol.81

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.83(2014年・第4号)」掲載(原文ママ)。

最初にお断りしておくが、今回ご披露するネタは、少々…というか、かなり情けないオハナシである。

まぁ、一口に『情けない』といっても様々な切り口があろうかと思う。

『ヒト』として情けない…
『オトコ』として情けない…
『徒然ナルママニ』情けない…。

そんな中、今回はある意味、この紙面上に最も相応しくないであろう分野…『健康』、特にも『姿勢医学』に関するコト…そう…久々にヤラカシテしまったのである…『ギックリ腰』を!!

まず、言い訳がましく聞こえるかもしれないが、弁明させて欲しい…。

普段、特にも患者さんやセミナー受講者の前では、『エネルギーの塊』の如く、周囲へ無駄に元気を放射しているように見られるワタクシであるが、かつては酷い『腰痛患者』であった。

当時は、左下肢の臀部から足先まで、焼け付くような疼痛が発症し、長時間の車の運転にも支障きたしていた程であったから、おそらく『中程度の腰椎椎間板ヘルニアによる腰髄神経根圧迫』を生じていたのであろう。

あの『激痛と慟哭の日々』は、この仕事をするようになった今でも、思い出したくない苦悶の過去として胸中に刻まれている。

(それ故、ワタクシが『痛みのわかる臨床家』である…とも言えるのであるが!!)

その為、現在に至るまで、私自身が『定期的な姿勢調整』を必要としているのであるが、ここでもう1つ、厄介な事象が絡んでくる。

実はワタクシ…幼少時より、頸をバキバキ、背中をボキボキ、腰をバリバリとクリックさせる事に悦びを覚えてしまう性質で、時には独りで、時には相手にお願いして背骨中の関節を鳴らしまくっていたのである。

賢明な読者の皆様は、既にご存じの事と思うが、関節における『クリック音』と『正常可動域の回復』には、まったく因果関係がない。

関節構造へ瞬間的に強い力が加わる事で内圧変化の影響を受け、クリック音が生じるだけの事だからだ。
だから我々の姿勢調整の施術でも、『結果的に』音がする場合もあれば、音がしない場合もある。

ところが、医学的知識を持たない(かつての自分を含めた)一般の方は、『関節を鳴らす為』に強い刺激を加え続けてしまう。

刺激は一時的に痛みや不快感を誤魔化す事が可能だからだ。

虫に刺された際、その痒みを感じさせなくする為に、爪を立てて肌を掻きむしってしまうのと同様に…。

すると身体は、唐辛子の辛味調整がエスカレートしていくように、どんどんと強い物理的刺激を求め続け、『刺激を入れるとスッキリするが、すぐに不快感が再発する』といういわば『中毒状態』に陥る。

これで立派な『患者』の出来上がりである。

(また、この業界では、この『中毒状態』を作り出して患者を逃がさないようにする為、わざと強い刺激を入れ続ける臨床家が意外に多いのだとか!! お気を付け願いたい!!)

さて話が少々横道に逸れてしまったが、そんな生活を続けてきたワタクシの身体は、仲間のカイロプラクター曰く…『患者さんよりメンドクサイ背骨だ…』。

つまり、過度の刺激を成長期から加え続けてきた事によって、私の脊椎の配列はガタガタで、一般の患者さんよりも複雑怪奇な変位を呈しており、更に、少しでも技術の選択を間違えると、おかしな反応が生じて、かえって状況が悪化してしまうという…まさしく『メンドクサイ身体』なのである。

(それ故、ワタクシが『バキバキの怖さがわかる臨床家』である…とも言えるのであるが!!)

以上の理由から、ワタクシの身体を任せられるのは、必然的に、ある程度キャリアのある方に限られてしまい、そんな方は当然ながら、ワタクシ同様に忙しく日々活動している為に時間調整がつきにくく、しかもワタクシ自身が講師としてセミナーが続き準備に追われる中で、施術を受ける時間どころか、睡眠時間さえ十分に確保できない日々が続くと…そう…『悲劇』が生まれるのである!!

その日は、朝目覚めた瞬間から身体に強い違和感を覚えていた。

週末にセミナーの講師業を2つと重要な会議を1つ予定していた為、店舗での施術業務の後、急いで自宅へ戻って机に向かい、睡魔の限界まで到達したら、ろくにストレッチもせずに寝床へ倒れ込む日々を続けていたせいであろう。

今春に2店舗目としてオープンさせた盛岡のクリニックへ向かう車中で、『さすがにそろそろヤバいな…今晩、仲間のセンセイに無理言って施術をお願いしようか…』などと考える。

当たり前であるが、なまじ知識がある為、自らの身体が如何にエマージェンシー(危機的)な状況にあるのかは痛いホド理解できる。
ただ惜しむらくは、『影分身の術』を体得していないが故に、自らの手で自らの身体を施術できない事だ…。

そして…その瞬間は突然やってきた!!

仰向けになったお客様に対して、椅子に座った状態での頸部への施術を終え、立ち上がり足方へ移動し、どうしても気になる左足首の可動性を確認しようと、腰を少し落とし、踵を掴み、自分の身体を起こすか起こさないかの刹那…!!

…トゥクンッ!!

…はぅあ!!!!

ヤバイ…ヤッテシマッタ…。

額に脂汗の浮かぶのが自分でもわかる。

しかし今は『施術業務の真っ最中』。

まずは自分の身体の内面へ一瞬にして意識を飛ばし、『事故発生現場』をリサーチする。
どうやら左側の腰仙関節(腰と骨盤を繋ぐ関節)が『震源地』らしい。

次に、その箇所に極力負担がかからない様に自らの身体をコントロールしつつ、引き攣った笑顔を湛え、上ずった声で軽口を叩きながら、何事もなかったかのように残りの施術を終え、お客様を見送る。

大丈夫…バレていない…『ミッション1』完了!!

困った事に、その日店内には私とマネージャーの2名のみが在籍し、他の技術スタッフは不在であったが、他方、幸いにして、そのお客様は『午後の時間帯』の最後の予約だった為、すぐさま出来の悪いロボットのような足取りで裏の事務室へ生還し、症状緩和と予後ケアに効果が見込めるストレッチを無事開始…『ミッション2』完了!!

そして最後の『難関』…。

忙しくしているであろう仲間に電話をして…『お忙しいトコロ、大変失礼致します。
あのぅ…ごめんなさい、助けてクダサ~イ!!!!』 

その数時間後…『ただでさえメンドクサイ身体を、更にメンドクサクしてから来るなんて…勘弁してくれぃ!!』と本気で怒られながら、半泣き状態で施術を受けているワタクシがいたとかいないとか…『ミッション3』完了??

そんなワケで…賢明な読者の皆様は、これを『反面教師』として、『計画的な姿勢ケア』をしっかりと受けて頂きたいものである!!
(…説得力の欠片もナッシング!?)


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