見出し画像

我が街バンザイ from カナダ/連載エッセイ vol.51

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.53(2009年8月)」掲載(原文ママ)。

いきなりの内部事情暴露であるが、この通信の原稿締切は、発行の約1ヶ月前に設定されており、現在執筆中の世の中の状況は、まさに梅雨空真っ只中。
夏には終息すると言われていた新型インフルエンザの患者が、当初の予想に反してジワジワと確実に拡大しつつある。

そして今回のエッセイの舞台である『カナダ研修』は、その新型インフルエンザが北米大陸で発見された直後、WHOが警戒度を4に上げ、その結果、大型連休初日にも拘らず人出が極端に少ない成田空港から始まったのであった。

(そして…
 その異例っぷりを取材に来ていた
 TVカメラの前を
 姿勢を正して意味もなく何度も横切ったのは
 言うまでもない…)。

そんな訳で、帰国から既に2ヶ月が経過しているのだが、不思議な事にその記憶は一向に褪せる気配をみせていない。

初めてとなるWFC(世界カイロプラクティック連合)世界大会参加
歴代会長や役員の方々をはじめとする世界的要人との交歓
世界カイロ業界の中枢たるWFC事務局訪問
カナダ随一の規模を誇るカナディアン・メモリアル・カイロプラクティック大学訪問
フランス語圏であるモントリオールのヨーロピアンな街並
ナイアガラ滝の勇壮な流れ
多民族都市に相応しいエネルギーを内包するトロント…。

どれ一つをとっても、語れと言われれば平気で1~2時間は喋り続けられる様な、それ程インパクトの強い出来事の連続であった。
きっと今から5年10年後、「あの旅が転機だったな…」と振り返る事になるのであろう。

そして今思い返すに、陸奥の片隅で活動している私にとって一際大きかったのは、Dr.ギモンドとの出会いだったかもしれない。

彼は、読者の皆様お馴染み、組合加盟院に導入されている姿勢分析システム『カイロプリント』の開発者であり、そのサービスを世界中に展開する『バイオトニックス社』の社長でもある。

これまで何度か来日されているが、私はたまたまタイミングが合わず、今回が初対面。

WFC世界大会会場『ホテル・ヒルトン・ボナベンチャー(なんとも強そうな名前!?)』ロビーで待ち合わせ、我々一行は
モントリール近郊のバイオトニックス社や
その姿勢分析&エクササイズプログラムを
社員の福利厚生に活用している通信大手
『ベル社(日本のNTTをイメージして頂けるとわかりやすい)』
知り合いのカイロクリニックなどを廻った後
郊外にあるDr.の自宅兼クリニック目指して車を走らせた。

世界的に名の通ったDr.とは思えないくらい人当たりが柔らかく、フットワークの軽い彼は、遠い異国の地から訪ねて来た客人をもてなすのが心底嬉しいらしく、約1時間に渡るドライブのハンドルを上機嫌で握り続けていた。

(実際、ワタクシ初対面の時
 失礼ながらDr.ご本人と気付かず
 通り過ぎてしまったのだ!!
 有名なDr.故
 どれだけイカツイ方が登場するかと思いきや
 …小柄でコロコロっとした体格の男性が
 これまた人懐っこい満面の笑みを湛えて
 ご登場!!
 『キレンジャーや…!!
  スプーン持ったらあんたキレンジャーや!!』
 …と心の中でツッコミを入れたのは
 トップシークレットである。)

カナダ特有の針葉樹林を抜け、そろそろDr.の街に着かんとする頃、我々の乗った車に併走する車が1台。
さりげなく視線を向けると、向こうは若い男性が2人、コチラを覗き込んでニヤニヤしている。

『ヤバイ…!!』

私はとっさに身構えた。

『いくら比較的治安の良いお国柄とはいえ
 ここは北米。
 昨今の世界的不況の影響もある。
 もし何かあれば
 私は身を挺してDr.を守らねば…。
 キレンジャーを守る…そう!!
 私はアカレンジャー!!』

…などと助手席で妄想に鼻息を荒くしていると
向こうの車の窓ガラスが降りて開口一番…

『先生!!
 誰乗せてるんですかぁ??』

…戸惑う私を横目で見ながらDr.が一言。

『彼らは私の患者さんですよ。』

そこからはまさに圧巻。
交差点で車が停まれば、歩行者が寄って来て『先生先生!!』。
レストランでディナーをとっていれば、たまたま来店していたNHL(アメリカプロアイスホッケー)の選手がテーブルまで来て『先生先生!!』…。

街中がDr.を慕っているのが私達にも十分過ぎるほど伝わってきた。
陸奥の田舎とさほど変わらぬ人口わずか数万の街で、彼はまさに『我が街に欠くことのできない存在』として根を張っていた。

一方、リバーサイドに建つ
可愛らしい造りの自宅兼クリニックに入れば…

ゴルフのタイガー・ウッズ
ブラピ&アンジー
シュワルツェネッガー知事

…など患者である有名人のスナップが壁一面に張られ(ちなみに通信表面で私とDr.が手にしているのは『検査を受けるT.ウッズ』の写真デス!!)、彼が紛れもない世界的なDr.である事を雄弁に語っている。

『陸奥に国際基準のカイロを!!』の心意気でこの業界に飛び込み
『Think globally, act locally
 (地球規模で考え、地域ベースで活動する)』を標榜する私にとって、彼のそのスタンスはまさしく理想であり、確かな目標として心に刻まれたのだった。

(ありがとうDr.ギモンド!!
 今日からアオレンジャーに昇格デス!!
 ←それでもアカレンジャーは譲らんのか!?)。

その日の夜、カナディアンフレンチとワインを堪能した後、Dr.の奥様が指揮者を務めるオーケストラのプライベートコンサートに招待され、あまりの素晴らしさに号泣しつつも楽しい時間は刻々と過ぎ、いよいよホテルへ戻る事に。

運転手はまたもやDr.ご自身…
まてよ…
Dr.もさんざんワインを楽しんでいたような…??

不安に駆られた私は眼前を駐車場目指してサッサカ歩み進む彼に尋ねる。

『Are you OK?』

…Dr.は破顔一笑

『No problem!!』

しかしその時
私達は気付いていなかったのである…
物陰からひっそり様子を伺い
視線をコチラへ注ぐ存在に…!!

駐車場に入り、Dr.の車が止められているスペースへ踏み入った時だった。
スーっとライトを消した車が私達に横付ける…
見ると車体には…『POLICE』の文字が…!!

『ヤバイ!!
 飲酒運転巡回だ!!』

緊張感を漲らせる私などお構いなく、車の窓が音もなく降りていく…。
すると…暫しの沈黙の後…顔を出した警官の発した言葉は…

『先生!!
 お気をつけて!!』。

呆気に取られた私を置き去りにする様にパトカーは走り去り、そしてDr.は振り返って悪戯っぽく笑って言った。

『I said “No problem” !!』

そしてわたしは心の中で呟くのである…

『さすが…さすがだけど…
 我々の乗るべき車は
 私の右隣に停まっているヤツで
 Dr.が乗ろうとしているのは他の人の車っす…

 …「Are you OK??」』。


☆筆者のプロフィールは、コチラ!!

☆連載エッセイの
 「まとめページ(マガジン)」は、コチラ!!

※「姿勢調整の技術や理論を学んでみたい」
  もしくは
 「姿勢の講演を依頼したい」という方は
  コチラまで
  お気軽にお問合せください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?