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スパイシー・コリアン・ナイト/連載エッセイ vol.68

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.70(2012年・第3号)」掲載(原文ママ)。

先日、韓国・ハンソ大学院における『カイロプラクティック修士号課程(MSコース)』の最後(となる予定!?)の集中講義に、大陸を渡る黄砂が半島へ降り頻る中、参加してきた。

数えれば、今回が早くも4回目の訪韓。
今回のメインと言えば…やはり集中講義終了後の『24時間フリータイム・イン・ソウル』である!!(←半分、本気!!)

というのも、半年前になる前回の訪韓時は、集中講義終了直後の翌日から、所属する団体の技術セミナーにおける、講師&コーディネーターの大役が控えていた為、『フリータイム』がないどころか、集中講義中も、仲間達が授業後の宿舎で、ナニかしらを飲みながらマッコリしている時間帯も、独り部屋でセミナー準備をする毎日…。

ううう…。
これで誰が私の今回の『街歩きする気マンマン姿勢』を非難できようか、否、できまい!!(←ほぼ、本気!!)

そんな訳で、今回は前回の分を取り戻すが如く、集中講義終了後の24時間、ソウルの夜と昼を堪能しまくり!! 
我ながら…非常に濃密な時間であった…(←瞳を閉じて回想中…嗚呼…思い出したら……お腹が鳴った!!)。

そして今回は、遭遇した数多のエピソードの中で、最も印象深く、そして胸の奥がチクリとするお話をご披露しようと思う…。

4日間に渡る集中講義終了後、大学のバスにて仁川空港へ『集団輸送』されたら、いよいよフリータイムの始まり!! 

そこから改めてソウル市内へ移動となる訳だが、大きなスーツケースを抱えながらも、エレベーターレス&エスカレーターレスな地下鉄に苦しめられた1年前の過酷な経験を糧に、今回はタクシーにて市内のホテルへと移動。
有名な話ではあるが、改めて韓国のタクシー料金の割安さに感嘆。

そして、チェックイン後、再びタクシーを駆って向かったのは、市内を流れる『漢江』の南側、未踏の地であるカンナム地区。

1970年代以降に開発された新しい街が並ぶ地域で、今回はその中でも、『最もセレブな街』としても名高い、『アックジョン&チョンダムドン』へと潜入!!

韓国一高級といわれるデパートを軽く流したら、そのままオサレな路面店が並ぶ通り・『ロデオコリ』を散策。

ここで同行者達からあがった、『小腹が空いた』という要望を受け、醸造名人による手作りマッコリで有名なカフェバーの2階のオープンテラスにて、まずは一杯二杯(…や三杯四杯!!)。

少々気持ち良くなったトコロで、次に向かったのは、同地区にある、恐らく韓国で唯一スタンダードなジャズを楽しめるというライブバー。

まぁ、ジャズに関しては恥ずかしながら、『好き』を公言できる程、聞き込んではいないのであるが、なんと言っても、『テーブルチャージなし』という何とも韓国らしい『特典』に惹かれての入場であった事は…同行者達へは秘密である。

しかし!!

…まさか何気なく立ち寄ったこの場所で、今回の韓国滞在中、最も『スパイシー』なエピソードに遭遇するとは…!! 
まさに、『旅の閃きプライスレス』である…。

薄暗い店内に入ると、割合早い時間帯であったにも拘わらず、ステージでは既に演奏が開始。
ピアノ・ベース・ドラムのトリオ編成から始まり、途中、フルートやボーカルが加入してカルテット編成へと増強。

さすが世界的なジャズメンも上がるステージというだけあって、その実力はなかなか。
聴き応え十分である。
チーズやナッツの盛り合わせを肴に、チリ産の赤ワインを嗜み、一同は『非日常』を楽しんでいた…。

すると……演奏の途中で、突然店内に、蝋燭の灯ったケーキが…。

暗闇の中をゆっくりと進むその灯は、やがて、ステージ前の中央テーブルに座る男女の下へ…。

2人に対して語りかけるように捧げられる歌声…。
やがてステージに上がり、女性への手紙を読み上げる男性…。
恥ずかしそうに俯く女性…。

そして手渡されたプレゼント…それは、これから始まる2人の時を刻むであろう腕時計…。
そう…それは正しく、サプライズな愛の告白であった!!!!

万雷の拍手とともに、温かな雰囲気に包まれる店内。
斯く言う我がテーブルも、女子チームが熱狂!! 
いつのまにやら、自分が過去に受けたサプライズ演出の報告会へ発展!! 

もちろんワタクシは…次に向かう場所へのルートを確認する為、ガイドブックを熟読…するフリをして、『耳ダンボ』状態であったが……ナニか??

『ふむふむ…「電光掲示メッセージ」なんてベタかと思いきや…やっぱ…されると嬉しいもんなのか……でも…あれ…予算どれくらいなんだろう……あ!!……岩手には…そもそもそんなサービス自体ないか!!』

そんなお間抜けな妄想を余所に、店内には相変わらず渋い音楽が流れ続ける。
ステージはそろそろ佳境へと向かおうとしていた…。

なんて素敵なコリアンナイト…。

…とその時、誰ともなく『異変』に気付く…!!

『あれ…!? なんか…あの女の子の様子……変じゃない??』

件のテーブルの方へ、一斉に視線を傾ける一同。

そこには…先程までの瑞々しい笑顔はもうなく…下を向いたままの女性…所在無げな視線の男性…そして…手つかずのケーキと外された腕時計が…寂しげに並んでいた…!!

『これって…つまり……女子は最初から…照れていた訳ではなく…いわゆる……「男子やっちまった」…ってコト…??』

他のテーブルの人々も、徐々にその状況を察知し始め、店内には微妙なムードが漂う…。
知らんぷりして演奏に集中しようとしても、ステージ前には、お通夜状態な2人…。
ステージ上の演者も明らかに動揺を隠せず、ややキレを失った即興演奏を続ける…。

まさに、なんて非情なドツボナイトである…。

すると…女性が徐に席を立ち、お手洗い方向へ。

『私、ちょっと行って見てくる!!』…と野次馬精神旺盛な某メンバー。

『よしなさいって!!』…と口では言うモノの、止めはしない一同。

しかし…その『偵察隊』の報告を待つでもなく、答えは出ていた…。
そこには、女性が姿を消した隙に、テーブルに置かれた腕時計を箱に戻し、手つかずのケーキを持ち帰り用のバッグに詰めてもらう男性の悲しいシルエットが…。

そして…女性がテーブルに戻ると、1度も視線を合わせる事なく…2人は……店を後にした…。

その後暫くして、一行も退店。

地下鉄でホテルへ戻った後、仕切り直して、東大門地区の路地裏店で、豚ホルモンをつつく。

そう…誰もが、その後の2人を気にしていた…。
しかし…その事は皆、示し合わせたが如く口にせず、激ウマなホルモンを黙々と口にする…。

美味い…美味いぜ……そして…スパイシーだぜ……。

時計の針が天辺を回った頃、不意に目頭が熱くなったのは、辛みのせいか、湯気のせいか、それとも…2人のそれぞれの行く末を案じての事か…。

こうしてスパイシー・コリアン・ナイトは更けていったのであった…。


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