見出し画像

モッテルモッテルモッテ~ル!?/連載エッセイ vol.110

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.112(2019年・第3号)」掲載(原文ママ)。

「もってる」という言葉……。

それは、2000年代初め頃から、主にスポーツ選手が使い始めて広まったとされる、「特別な何かを持っている様、強運を持っている状態」を指し示す言葉である。

そして私はよく人様から、「もってるヒト」だと形容される。
しかしそれは、日常が幸運で満たされているというよりも、出先で良くも悪くも様々なアクシデントに遭遇する事が多いからであると自認している。

(この事は、この連載エッセイのマニアな愛読者の方であれば、ご納得頂けるであろう。)

そしてこの春の数日間は……今思うに、確かに「もってる」日々だったのかもしれない……。

改元に伴う、史上最大の大型連休における最初の週末。
私は富士山の麓へ向かっていた。
静岡県の姿勢調整師会の面々が、初めて一般市民対象の大規模講演会を開催する事となり、その記念すべき初代講師という大役を賜った為である。

土曜日。

全国的に暖かい日が続いていたのに反して、この日は全国的に曇天&トコロにより荒天。
ひんやりとした空気に包まれた盛岡を昼過ぎに出発。
約2時間後、東海道新幹線へ乗り換える為に降りた東京駅も、想像以上に低温。
そして、普段はなかなか利用する機会のない「こだま」に乗車し、一路、翌日の講演会場のある富士市へ。

しかしながら、静岡県に入るや否や、強めの降雨。
降車予定の1つ手前の駅を通る頃には、雷まで轟き始める始末。

「嗚呼……初めての静岡だってのに……歓迎されてないのかな、ワタクシ……」などと少し気落ちしつつ、「間もなく『新富士』…」という車内アナウンスへ耳を傾けた刹那……真っ黒い雲の隙間から急に日光が差し込み、ホームへ降り立つ頃には、麗しの富士山が少しずつ見え始めたのである。

駅前のロータリーで乗り込んだタクシーの運転手さん曰く、「今さっきまでヒドイ雷雨だったんですよ~。それが今じゃあ、お日様も差してきて、富士山も顔を出してきて……お客さん、良かったですね~!!」 

うむ……モッテル!

日曜日。

前夜は遅くまで現地スタッフと打ち合わせを行い、当日も午前から会場入り。
なにせ彼の地にとっては、初めての大規模講演会。
しかも運営スタッフは、他地域よりも圧倒的に少なく、一般ボランティア的な方々の助力も仰いでいる状況。
そこで老婆心ながら、様々な直前アドバイスをしつつ、講演は時間通りにスタート。

運営面は……正直「ツッコミどころ」満載で、私自身ヒヤヒヤものであったが(特に、予定されていた講演後の「質疑応答」をすっ飛ばされ、盛大に見送られつつ会場を後にし、運営サイドが進行ミスに気づいた後、再び登壇させられるという、前代未聞の「カーテンコール@講演会」には……オラ、ハラハラしたぞぅ!!)、スタッフの熱意と、一般参加者の優しさにより、みんな笑顔の大団円。

会場の外では、この時期、ガスがかかって綺麗な姿を見せる事の少ないといわれる富士山が、絵画の如く見事なまでに、青空とコントラストを描いていた。

よし……モッテルモッテル!!

月曜日。

この日は、折角の「初・静岡」なので、地元へ戻る前に、系列店舗の見学と近場をプチ観光。
前日の講演会準備の関係上、備品やら配置やらが「シェイク」され、店内に足を踏み入れる事が叶わない(らしい)状況の為、店先から覗き込む形で店舗見学が地味に終了。

その後、そのオーナー院長とスタッフ、そして小学校中学年になるオーナーの娘さんと私の4人で、「田子の浦(たごのうら)港」へ移動した。

何故に田子の浦か? 
勘のよい方ならお気づきかもしれない……。
そこには、名物の「生シラス丼」を食べさせてくれる「漁港食堂」があるからなのだ!!

食堂の開店時間に合わせて到着。
幸運な事に、最後の1スペースで駐車完了。
降車して、食堂があるという建物の向こう側へ、満を持して回りこんだ瞬間……「な……なんじゃコリャ~!!」。
数十人に及ぶ客が、既に長蛇の列を成していたのである!!

ま……マジか!? 
動揺する私に、しかしながら地元同行者は優しく諭した。
曰く、みんな注文するのはシラス丼なので、すぐに順番は来るし、ここは漁港で、観光施設ではないので、みんな食べたらさっさと移動する……との事。

確かに、列は目に見えて進んでいくし、食事スペースも「ほぼ満席」という状態が続くものの、席を探して立ち尽くしている方は「ほぼ」見かけない。
私は安心して注文口へと続く列に身を任せた。

そして私の順番まで、残り20名ほどになった頃、注文口でのヒトの流れに「ちょっとした異変」が起きているのに気づいた。
目を凝らすと、どうやら地元TV局が、地元名物たるシラス丼を、嬉々として受け取る「非地元民」の様を撮影しているようであった。

「もう少しタイミングがずれていたら、映れたかもね~。そしたら、昨日の講演会に参加した方がTV見て、びっくりしたかもね~。」などと話しながら、その様子を見るともなく眺めた。
そして自分達の受け取り順が来る頃には、目前のシラス丼に心を奪われ、その事はすっかり忘れ、海辺に近い席に腰を下ろし、舌鼓を打ち始めたのであった……。

数分後……。

最初は違和感だった。
なんだろう……視線を感じる!!

斜め後方に視線だけを配ると、どうやら先ほどのTVクルーが、同行しているオーナーの娘さんが、大きな丼を覗き込むように、シラス飯を必死に掻き込んでいる様子を、遠目で撮影しているようであった。

そりゃあね……小さな娘が食べてる様は可愛いし、ピースフルさ……でも……でもね……折角だからさ……。

数秒後、背中から「存在感オーラ」緊急発動。

数十秒後……
「すみませ~ん。
 どこからいらっしゃったんですか~? 
 えぇ~~!! 
 岩手からですかぁぁ~~!!」。

数時間後……
生シラス丼を熱く語る、「岩手からの観光客」の姿がローカルニュースとしてTVに映し出されていたのだった……。

YES!! モッテルモッテルモッテ~ル!?

(後日談。
講演会の模様は、後日、取材に来ていた地方新聞2社によって記事として掲載された。
2社とも、令和元年5月1日付で……!! 
やっぱりワタクシ……モッテル??笑)


☆筆者のプロフィールは、コチラ!!

☆連載エッセイの
 「まとめページ(マガジン)」は、コチラ!!

※「姿勢調整の技術や理論を学んでみたい」
  もしくは
 「姿勢の講演を依頼したい」という方は
  コチラまで
  お気軽にお問合せください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?