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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.74 ナンバー2の役割①補佐役の機能

組織運営には役割分担が大切です。なんだ当たり前のことだと思われるかもしれませんが、多くの会社では辞令にあたって肩書を与えるだけで、役割、責任、裁量範囲などを示している場合は多くはありません。

評価制度がある程度固まっている会社であればまだ各人の役割は理解しやすい状況かもしれませんが、中小企業の多くでは評価は社長の感覚だけというのもまだまだ根強いです。

その状態のまま仕事をしていて、取り組んだことが上手くいっている時はよいのですが、そうでない時に「それは君の役目だろう?」と社長から突然言われても言われる側も困惑するでしょう。

本稿ではナンバー2を育成したいと考えている経営者の方に向けて、

・ナンバー2が期待通りに動いてくれないという悩み
・孤軍奮闘で疲れ切っている悩み
・ナンバー2に具体的に何をさせればよいのかわからない悩み
・ナンバー2のイメージが湧かない悩み

こうしたモヤモヤする悩みを解消して頂くための記事です。

目次


1.ナンバー2の役割って何だろう?

そもそも社長自身がナンバー2に何を期待するのかを明確にしないとナンバー2の役割が定まりません。

役割というのは言語化しにくい側面もあるかもしれません。

例えば、「社長のサポート」と一言で言っても、具体的に何をするべきかが明確になっていない場合がほとんどです。

※こちらにまとめ記事があります。

さて、「社長のサポート」をかいつまんでみると以下のようなことが言えるかと思います。

・社長の負担を減らすために業務を肩代わりすること
・社長の苦手なことのうち、自身が得意な分野の仕事を引き受けること
・社長の意思決定を支えるために異なる意見や情報を提供すること
・社長の考えや指示を現場の従業員に誤解なく浸透させること
・社長が仕事をしやすいように手際よく段取りすること
・社長のご機嫌を取ること
・これら全てを行うこと

ざっと「社長のサポート」に分類されるだろうことを書いてみましたが、期待される役割は社長の能力、性格、事業の推進、転換など会社の状況によっても異なりますから臨機応変な変数も多く含まれます。

言語化を試みても全てを具体化するのは難しいことですから、まして「言わなくてもわかるだろう」と以心伝心を期待したところでそれはさらに難しいことだと思われます。

またその前提として、目標と戦略が明確になっていないといけないです。
いつまでに何をどうやって達成したいのかが具体的でなければ役割もまた不明確になってしまうからです。

2.補佐役という役割

私自身はナンバー2の役割は全部で12あると考えていて、そのひとつに補佐役というのがあります。

補佐役としての役割をさらに細分化すると、以下のように分けられます。

(1)社長の弱みをカバーし、社長の強みを発揮させること
(2)社長の精神的、物理的な負担を軽減させること
(3)情報の収集、提供を含め、進言、諫言することで社長に失敗の少ない意思決定をさせること

厳密に言えばもう少し広がりがありますが、かえって整理がつかなくなりますし、それは残りの11の役割をお伝えする時に詳細に改めようかと思います。

(1)社長の弱みをカバーし、社長の強みを発揮させること

社長も万能の存在ではありませんから得手不得手があります。

例えば、

・ビジネススキルは高いが、部下に伝える力や部下を動かす力が弱い
・営業は得意だが、実務や管理が苦手
・商品企画や開発、製造が得意だが、営業が苦手
・アイデアマンで決断力と行動力はあるが、計画性や緻密さに欠ける

どうでしょうか?
自己分析してみると、自分に当てはまると感じる方もいらっしゃるのでないかと思います。

弱みに足を引っ張られてせっかくの強みが発揮できないとしたら勿体無いです。

社長と言う責任感で何もかも自分一人でどうにかしようと、この状態で事業をしていると次のような弊害が生じてしまうことも少なくありません。

・売上は右肩上がりだが、クレームなども多く、離職率が高く、内部崩壊している
・従業員に指示したことが予定通りに捗らず、目標が未達であることが多い
・従業員から意見が上がらず、活気もなく、社内の雰囲気が悪い

売上が増えていても、社内体制が脆弱だと何かの拍子に顧客を失ってしまうかもしれませんし、社長一人が旗を振っているだけで組織として成長している実感がわきにくいかもしれません。

社長というものは責任感が強く、人によっては人一倍プライドも高いかもしれません。社長である自分の弱みを見せることはできないと考える人も多いでしょう。

ただ、前述したように弱みによって強みが発揮しにくい状況だと事業運営に支障をきたしてしまうこともあります。

逆に、強みで弱みを打ち消す、弱みを自分以外の存在によって補うと考えた方が社長自身も無用な負担やストレスから解放されます。

そうした存在を得た方が社長と組織にとってのメリットは大きいです。

(2)社長の精神的、物理的な負担を軽減させること

社長は孤独とよく言われますが、確かに全ての最終責任は社長が負いますから孤独という面はぬぐい切れません。

ただ、最終的な責任は負うものの、そこに辿り着くまでの過程や判断においてナンバー2の存在によって負担が軽くなるのであれば一考を要すると思います。

一人で全てを背負うにしても、社内に自分の理解者や味方がいるだけで気持ちがぐっと強く保てるからです。

それこそ精神論に聞こえるかもしれませんが、常に自分の判断や言動に従業員から声にならない批判ばかり受けている状態なら、社長としても気分も良くないでしょう。

決してイエスマンを囲えということではなく、自分の本当の理解者が身近にいるだけで精神的には楽になります。

そして、物理的な限界を超えて何もかも自分が関わることを良しとしているのであれば、検討事項の遅延、判断の遅れや間違いを起こしやすい状況になりますし、そもそもやりきれないでしょうから、新しいビジネスの種を見つけたり育む余裕もなくなってしまうでしょう。

自分が負わなくてもよいことは何か。そしてこれを誰に負担してもらうのかを考えることも社長の役目です。

(3)情報の収集、提供を含め、進言、諫言することで社長に失敗の少ない意思決定をさせること

VUCAの時代と言われて久しいところですが、自社を取り巻く環境の変化を日々肌で感じている社長は多いでしょう。

社長の個人的な過去の成功体験や従来のやり方だけで乗り切ることができるのかと本音では不安を感じている場合もあるでしょう。

環境の変化に対応できるかどうかは言うまでもなく会社、事業の運命に影響を及ぼします。社長一人の才覚に頼り切りで現状維持が精一杯であるのであればリスクとも言い換えられます。

昨今の環境変化の一例として、

・少子高齢化による人手不足(特に中小企業での採用難)
・Z世代のマネジメント
・長時間労働の制約、賃上げ、社会保険料の負担増
・生産性、効率性の追求
・物価上昇、原材料の高騰
・市場の飽和、縮小
・テクノロジーの進歩、DX化の波
・ビジネスモデルの変化、異業種の参入
・コロナ渦で生じた価値観、労働観の変化

このようにこれまで考えたことがない課題に向き合う機会が増えています。同じことの繰り返しですが、社長一人でそれら課題を抱え込んでしまうと対応できないのが現実です。

仮にコンサルをはじめとする社外の専門事業者を活用したとしても、実行するのは会社自身ですから社長が孤軍奮闘したとしても成果をなかなか上げられないのではないでしょうか。

情報収集に余念がない社長も多いかと思いますが、情報は一人で集めても限りがあるか、もしくは膨大な情報を集められたとしてもそれを整理、取捨選択し、活用するのは難しく、さらに情報に基づいて適切な判断も行わなければなりません。

同じ情報を見ても、どう受け止め、どう考えるかも人によって異なりますから情報を得るチャネルは多いに越したことはありません。

そして、情報収集のみならず、事業をしていれば日々大小さまざまな判断を行わなければなりませんが、特に重大な判断については多くの献策があるに越したことはありません。

また、社長にもよるかもしれませんが、独善的で利己的であったり、明らかに誤った判断を繰り返し行っていると組織のメンバーである従業員も愛想を尽かして去ってしまいます。

そうならないように、適切なタイミングで適切な内容の意見を言ってくれる存在がやはり必要になってきます。

状況を正しく把握できずに、誤った判断をしていると裸の王様になってしまうからです。

3.まとめ

補佐役のイメージはつかめたでしょうか。
社長と会社の可能性を拡張してくれる存在として認識して頂けたら幸いです。

過去の記事ではホンダ創業を支えた藤沢武夫さん、三国志から諸葛孔明を紹介していますが、こちらを読むと補佐役のイメージがさらに鮮明になると思います。

社長である自分を陰日向となって支えてくれる存在がいることで、自分にはもっとできることがあるのだと気づくはずです。

仕事はスキルだけではなく、心の持ちようや在り方というのが非常に重要で、社長であればなおさらです。

日々精神的にも物理的にも耐えかねる事柄をひとりで抱えすぎても良い結果は生まれません。

社長自身の弱みをいかに打ち消すか、負担を減らして本来やるべきことに専念するか、常に正しい判断をし続けるためにはどうすればいいか。ナンバー2をしっかり育て上げることで、ぜひこれらを実感して頂きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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<掲載内容>ナンバー2の選び方/ナンバー2の役割の理解/ナンバー2の育て方/ナンバー2を期待通りに活躍させる社長とは

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