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記事一覧

無感覚なままで生きているんです。心躍る出来事のない生活というものがこんなにも単調でこんなにも平和的でそしてこんなにも穏やかなことを知りませんでした。わたしは、
声が出ているんでしょうか。
仕事はどうですか、と聞かれるたびにどう答えて良いのかわからずに笑う癖をお辞めなさいと、言ってあげたかった。泣くのを、堪えたまま、笑うのは、情けのない、気持ちになります。岩石みたいなチョコレートケーキで誤魔化して、

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反射板の夜

ピストルが合法の国にいたらとっくの昔のこんな夜に死んでいただろうと思う。

わたしは
努力ができずそのくせ良い結果ばかり求め折り合いのつかなさに死にたがり他人に求めないふりをして投げ飛ばす、くせに、抱きしめてとせがみ左腕、ばかりを撫でてわたしとあなたの間に区切りをつける
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紙風船は潰れてしまうから
やさしく手を当てなさい
強く叩くと潰れてしまうから
やさしく叩きなさい

夕焼

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COVID-19

 
 
 適切な距離を保つ
 物理的な距離の分だけ連絡が途絶えた

 あの夜
 首元にハサミを突きつけられて
「きみならいいよ」といった唇
 責め立てる文章でしか話せないわたしの
 唯一の受容する愛だった
 のに
 きみの見えない日々にやり切れなくて
 別の人と口づけで交わる

 髪を撫でてくれた夜の分だけ
 何だって頑張れる気がしていた
 少しずつきみを蓄えて
 神様にだってなれる気がした

 

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ナウシカ

緊急事態宣言が発令された大型連休に乗換の地下道にいて、ただどこにいくあてもなくぼんやりと発車を知らせるアナウンスや、移動はおやめくださいという聴き慣れてしまった声を聞き流していた。どこにいけるあてもないのにポスターは渋谷にある老舗のカフェや新緑の鮮やかな京都を勧めてくる。どこにもいくことができないのに無人の駅に無人の電車が来て無人まま去っていく。
宛名を書き忘れた手紙みたいな人々が街にはたくさんい

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新たなる人

誰かのことを責めたかったわけじゃない
けれど責め立てなければ泣くことが出来なかった、怒らないでください、奪わないでください、できないんです、声が追いつかないんです、ごめんなさい、ごめんなさい、こんな人でごめんなさい、なにもできなくてごめんなさい、大人になったわたし、なにもできないままで、誰にも愛されない、何にだってなれるよ、だから自分を信じて。と投げられた言葉を何一つ理解できなかった、18歳の頃、

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うさぎ観音

うさぎの耳は案外小さくて
数字の一がふたつ
柔らかな手を合わせてこちらを見つめる

平成が終わりますね。
九月も三月もきっとそのうち忘れてしまいますね。
知らないという人々が、また沢山産まれてきますね。

海辺を歩ける日が来るのだろうか

かなしくなってしまうから
コップいっぱいに温めるだけの星をください

うさぎ色したミルクと
あの夜の蝋燭の灯と
あの夜の雪空と星

うさぎは艶やかな目をして

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明け方

「成人式で会ったのが最後になっちゃった。」
「お父さんはずっと発電所で働いていて、帰ってくるなって。お前は絶対帰ってくるなって。」

何が起きたのか分からなくてテレビをつけた
炎に包まれながら飲み込まれるように流れていった
車も家も木も人さえも

スーパーで籠いっぱいに食料品を詰め込んだ人々を見た
野菜も肉も牛乳も品切れ
冷凍できるように食パンを一袋買った
電気もガスも水道も止まらなかった
東京は

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白昼夢

きみが愛を語る日はいつもかなしい
ひたむきに生きてきた両腕を
真っ直ぐに伸ばす仕草が
太陽まで届かないことを知っている
横殴りの白線のような傷跡
向き合わなければならないのは
生と死 どちらなのか
小さな窓のある部屋で外の雨を眺めよう
守られていることに鈍感になり
鳥が撃ち落とされる
きみは甘いキャンディになるんだよ
なにもかも全て忘れてしまって
適切な体温の中、溶けていくのをゆっくりと感じとれば

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新宿地下道西口 21時17分

遠く冷えた日々に明け方を探して道を歩く
整理整頓をしましょう
正しく生きていくために
人生を整えましょう
正しく死んでいくために

地盤のゆるい土地は沈みます
沈めば家は傾きます
傾けば
もう誰も迎えにきてはくれません

床に散らばった皿の破片
蒼白した翌朝
明けはこない

大なり小なり
ずっと付き合っていくことになるでしょう
唱えられた言葉とともに
一粒ずつ身体に含む
誤魔化しながら

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差違

今夜はたくさん星が落ちてくるからってふたりで青山のイルミネーションをこの世から断絶した
暗闇は男も女もわからなくなる
最初から何も見えないまま出会えばよかったんだって、眼球ごとすり潰して、醜いほど美しい曲線を持つきみの横顔、隣合わせ香りだけ嗅ぐ犬のような
あなたは友達だからって
いつかきみが話してくれた
きみは男の人と手を繋いでいて
笑うと、きらきらきらきらきらきらきらきら
男の人はみな一様に

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ちよのほし

なにもなかったんだ、ほんとう
満員電車の中でもう合えない人の顔を重ねる
そらがぴかぴかして、ほら、ぴかぴかして、終わらない朝焼けに真冬なのにあせをぐっしょりかいてわたしの首は斜め45度になる。
カンパネラ、どこまでも一緒にいられればよかった。再建を壊し続けてひとはいつだって失ってしまう。喪失に慣れてさよならも亡霊もこわくない。どこにもいかないって約束したお母さんのゆりかごを壊されて床にどすりと転が

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囀り

ありあわせの嘘でしか運命を語れない
朽ち果てたからだ 精神が浮かんで見ている
最後に。って、話す校長の挨拶は長かった
愛してる。って、泣いたはずのあなたは存在しない人だった

暗がりで服を脱いで 眼を閉じて
耳をふさいで
こころを殺して
さぁ、一息。深呼吸で消えるわたし

死にたかったわけじゃない 消えたかったんです

理科の実験、水中に消えたアンモニアの気体のように
かげもかたちもかおりも

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秋の瀬

夕暮れの鱗雲を眺め
綺麗 と 呟く
と 同時に
死にたい と 呟く
こころが
どこにあるのか
死にたいと言いながらも
わたしは
物を食べ
水を飲み
排泄をし
ひとを好きになろうとし
愛そうとし
触れようと
夜を泳ぐ
こころがどこにあるのか
わたしは
死にたい と 溢れ落ち
崩れた
言葉のかけらから
生きたい と 同等の重さを拾い集める
手のひらから
指の隙間から
輝かんとするそれらを
もう一度口に

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ふたり

ほら、あそこが僕の家だったところ。

助手席から眺めたそこは、車が数台止まった駐車場だった
知らない間に家がなくなったと
前を見ながら明るく話す

同じように明るく笑いながら
そっか、あそこが。と、外を眺め続けた
遠ざかっていく駐車場
車内は青春時代の洋楽が流れていて

同じタイミングで
同じものを食べたいと思うようになる
同じタイミングで
同じ歌を歌いだす
同じタイミングで
同じ人を思い出

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