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「24分のX」・・・12 「その言葉の裏で起こっていた事」連続超ショートストーリー


その言葉とはこれだ。
「奥さんにバレたって? ザマアミロ。
因果応報、どうせお前だって、結婚する気は無かったんだろう」

腫れ物に触れるように、皆が距離を取る中、
あえて冷たい言葉を口にした。

言ってしまってから、心の底にじわりと苦い感情が広がっていった。

美晴とは、入社研修で知り合った。
特に共通点がある訳では無いが、
「話のやり取りが安心できる」とでも言おうか、
他の者には無い何かを感じていた、と同時にそれは恋などには発展しない、
という確信があった。
昨日までは。

美晴が課長と関係を持っていたことを知った時、
奇妙な感覚が心に湧き上がった。
何か、薄いガラスの瓶が割れて、どす黒い液体が流れ出てきたような感覚。

一番近いのは、怒りと嫉妬だ。

「どうして塚田課長なんかと」

波立つ感情を抑えられずにいた。

その感情に釣られて、彼女をなじる言葉が出た。
だけど、その言葉を口にした瞬間、胸が痛んだ。

「俺、一体何をしてるんだ?」と、自分の言動に呆れてしまう。
そんな言葉は似合わない自分だと思っていた。

しかも、このどす黒い感情のすぐ横に、貼りついて剥がれない気持ちがあることを俺は知っている。
それは、どうしても消えない愚かな期待だ。

「これで、俺の順番も一つ上がったかな」

               つづく



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