見出し画像

「清原愛のgoing 愛 way」で朗読。

昨日23日。

「SKYWAVEラジオ」16時00分~16時59分の
「清原愛のgoing 愛 way」で朗読された私の短編『不謹慎なお見舞い』を
一週間限定で無料公開します。

ラジオをお聞きになった方は、放送との違いを、
お聞きになっていない方は、文章で作品をお楽しみください。

・・・・・・・・・・・・・

『不謹慎なお見舞い』 夢乃玉堂

入院先の病院に悪友たちが見舞いに来てくれた。

「しかし、お前もしぶといな~。
あんな高い所からバスが落ちたのに、大きなケガも無くて」

遥人(はると)は相変わらず口が悪い。

「航太がしぶといかどうかは、これからだろう。
頭の精密検査がまだ残ってるし。
そうだ。検査が終わるまで何も食べられないんだろう」

悠馬は枕元の包みを見つめながら言った。
俺の容体より、メロンが気になるようだ。

「二人とも! 今日はお見舞いに来てるのよ。
失礼でしょ。御免ね。航太くん」

さすが委員長。結月はやっぱり優しい。二人とは全然違う。

「ありがとう。委員長。でも俺気にしないから」

「そうだよ。こいつは何かを気にするタイプじゃないだろう。おっと」

ベッドに座ろうとした遥人を委員長が腕を引っ張って制止した。
同級生相手でも、子供を諭す様に叱るところが
彼女の人気の秘密だ。

「でもこんなところにずっと寝てたら、
いくら航太でも気になるだろう・・・色々と」

「何だよ色々って」

「いや、あれだよ。寝苦しくって目を開けると、
胸の上に白い髪のおばあさんが乗っている、とか。
真夜中に人の乗ってない車椅子が、
カラカラカラっと勝手に動きまわる・・・とか、な。」

「俺は金縛りにはならないし、夜はグッスリ派だから、
何か起こっても分からないな」

「じゃあ。こういうの聞いたこと無いか?」

悪友どもは、俺が気にしないのをいいことに、
病院の怪談を面白がって話し始めた。

「4階の4号室は、普段は鍵がかかっていて誰も入院していないのに、
午前零時になると、必ずナースコールがかかるぅ・・・」

「この病院、3階建てだぞ」

「じゃあ。猫の呪い。何度も手術に失敗する手術室があって、
そこで手術するとメスで切った傷口から猫が覗いているのが見える。
実はそこは、戦時中動物実験に使われた場所だったぁ~」

「やだ。猫がそんな気持ち悪い事するわけないでしょう。
これだから犬派の連中は嫌いなのよ。
猫は可愛いい生き物なのよ。癒される話をしなさいよ」

「例えば?」

「例えばそうね。病室にどこからか白い猫が入って来て、
寝ている患者さんのベッドで居眠りをする。
退かしても退かしても、同じ患者さんの隣で居眠りしにくるの。
でも、その患者さん、元気そうに見えたのに
数日後に亡くなっちゃうのよ」

「死神かよ!」

男三人が同時に突っ込みを入れた。

「人が動けないのを良いことに、委員長まで俺を脅かしやがって」

「ごめんね。でもさ。こんな薄暗い病院、航太くんに似合わないよ」

「そうだよ。早く退院しろよ」

「ありがとう。みんなすごい熱演だったよ」

俺は嬉しかった。三人の言葉に、

『怖い事が起こるかもしれないから、さっさと治療を済ませて退院しろよ』

という励ましの気持ちが感じられるからだ。

「ホント、脅かし甲斐がないな。航太は」

「次までにメロン切っとけよ」

悪友たちは、順に俺の手を取って笑いかけてきた。

「じゃあ。行くね。元気でね」

最後に結月が手を握った時、俺はその顔を見つめて本心でこう言った。

「委員長。顔が半分無くなっても君は可愛いよ」

結月は少し恥ずかしそうに頷き、右目で涙を流した。
頬の断面でむき出しになっている筋肉が震えるのが分かった。

「左目はもう涙も出ないのよ。左からの方が自信があったのに・・・うう」

結月はそのまま泣き崩れそうになった。
左肩から千切れそうな腕をブラブラさせている遥人と、
全身血まみれの悠馬が、結月を両脇から支えた。

病室のドアの前で悠馬が言った。

「それじゃ。いつでも待ってるから」

「何だよそれは。待ってちゃだめだろう。・・・ハハハ」

三人は笑いながら手を振って、消えた。

本当にもう待ってなくて良い、
俺を心配しすぎると自分たちが迷っちゃうぞ。
気にしないで成仏してくれ。俺は大丈夫。頑張るから。

俺は、隠してある古新聞をベッドの下から取り出した。
隣に入院していた患者さんが忘れていった一月前の新聞だ。

一面のトップに「修学旅行のバス、高速道路から転落。
生存者一名は奇跡的に軽傷」という見出しがあり、
大破したバスと俺の写真が載っている。

ガタガタと立て付けの悪いスライドドアが開く音がした。

おっと新聞を隠そう。俺がショックを受けないように、
何も言わないでいる親の努力を無駄にしたくないから。


              おわり


ナレーター俳優として活躍中の清原愛さんが、
私の短編を思い入れたっぷりに朗読してくれました。
これからもよろしくお願いします。

SKYWAVEラジオは、インターネット放送で全国、
世界中でお聞きいただけます。

PCもしくはスマホで、「JCBAサイマルラジオ スカイウエイブ」で検索すると、
ほぼトップに出てきます。URLは下記で。

https://www.jcbasimul.com/skywavefm

お時間のある方は是非。


#朗読 #skywavefm #放送 #清原愛 #短編 #小説 #ショート #スカイウエイブFM #ラジオ #不謹慎なお見舞い #不思議 #謎 #清原愛のgoing 愛 way #同級生 #旅行 #事故 #不謹慎 #高校 #入院

ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。