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ぐん税ニュースレター vol.37 page01 -ご挨拶-

 9月に入っても、いつまでも暑さが去りやらぬ毎日ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
 
 今年の夏は観測史上、最高に暑い夏ということで、長めの夏休みを取りました。前月号でご紹介しました不服審判の準備書面の作成などで疲労を感じていたこともあり、日々の仕事から離れて充電をしてきました。とはいっても沖縄や神戸に視察に行ったり、WEBミーティングがあったりで、あまりのんびり過ごすことはできなかったのですが。残念ながら仕事のことが完全に頭から離れるようなことはありませんでした。
 それでも仕事以外のことを考えることができるまとまった時間があると、いろいろな気づきがあります。今回はそれを話したいと思います。

 お盆休みの次の土曜日に中学の同窓会がありました。60歳になる年ということで(私は早生まれで来年60歳になります)、300人の同期のうち80人位が集まりました。私は20歳の時の中学の同窓会に1度出ただけなのですが5年に一度開催しているそうです。そこで会ったのは中学3年の頃から顔、体形も性格も変わらない同窓生たちです。皆さんいろいろな人生を送ってきて、今年で定年だとか、早期退職をして転職したとか、東京で会社経営をしている人もいました。親が自営業の人はそれを継いでいる人がほとんどです。そこで感じたのは中学3年生で進学など進路を決めて、当時に想定された通りの人生だなあということでした。つまり、中学3年生の時点で将来どんな人になるかがほぼ分かっていたということになります。三つ子の魂百までのことわざ通りです。意外な人、例えば芸能人になったとか、国会議員になったとか、一部上場企業の社長になったような人はいませんでした。
 同時期に、人間の能力は遺伝で決まるという本を読み、いろいろな遺伝に関する解説動画を見ました。遺伝の影響かどうかを調べるときには同じ遺伝子を持つ一卵双生児で異なる環境に育った子供を追跡調査して統計的に調べます。身長体重は両親の影響であることは外見ですぐにわかりますが、同様に数学、音楽、スポーツなどは80%以上が遺伝の影響です。また性格面においても遺伝が大きく影響しています。勤勉性と開拓性は52%。神経質と外向性は46%が遺伝の影響だそうです。反社会性は男性で63%、女性で61%が遺伝の影響で、犯罪者の子供は犯罪者になる可能性が高いというデータもあります。また遺伝の発現は年齢によって異なり、幼児期は環境に大きく影響されていますが、だんだんと遺伝の影響が大きくなり43歳がピークになるそうです。それから遺伝の影響は低くなっていくそうです。最近の例では大谷翔平選手で、彼のお父さんは元社会人野球選手でお母さんは国体出場経験のある身長170cmのバドミントン選手だそうです。体格も運動神経も両親から受け継いでいることが良くわかりますね。またゴルフの宮里聖、優作、藍の3兄弟がゴルフの世界で活躍しているのを見ると同じ遺伝子を受け継いでいるのだから当然なのでしょう。

 さらに、ある動画で中小企業の組織が壊れる原因の一つに問題社員が多いという指摘がありました。問題社員であっても、俺がうまく教育してやるという気持ちで雇用を続ける経営者(特に若手経営者には多い)がいるのですが、人間を変えるというのはほとんど無理なので、1か月の解雇予告手当を払ってでも辞めさせた方がいい、というのがその解決法でした。
 遺伝で全て決まってしまうって、環境にも影響されないって、本人の努力が意味ないっていうことじゃない。そんな社会は不公平だって怒る方もいるかもしれませんが、近年この傾向が強くなってきているように感じます。
江戸時代はどの家に生まれたかで一生が決まるような時代だったのだと思います。ところが、明治維新になって薩長の出身者が政財界で幅を利かすようになり、下克上が当たり前になりました。また、まじめに勉強して官僚になったり滅私奉公することで立身出世ができるようになりました。その後、財閥が形成されて世の中が安定してくるとそこでは家柄が重要になってきます。しかし敗戦によりゼロからのスタートになって、遺伝よりも環境、本人の努力によって出世することができるようになり、高度経済成長時にはたくさんの成功物語が出ました。しかしバブル崩壊と失われた30年(1990年からもう30年です)の間に、また政財界が安定化=固定化することになって、家柄によって一生が決まるようになり世襲が増えてきました。最近、格差の固定化が問題だと言われますが、格差の固定化はイギリス、フランスなどの欧米諸国や米国などでも日本より前から問題となっています。不確実性の時代とか言われて社会が不安定と思いがちですが、社会階層の固定化はどんどん進んでいます。
 社会が不安定な方が立身出世というか下克上が起こりやすいのです。それは定型的な判断よりも非定型的な判断が多い方が偶然性が高まり、さいころを転がす回数が多くなるからです。定型的な判断をやっている限り、各人の判断に差が出なくなるので、能力、性格などで優秀な遺伝子を持っている人の方が有利です。非定型的な判断が求められる場面が多くなればなるほど、偶然性が高くなり、遺伝も能力も関係なく運のいい人が成功する確率が高くなります。一代で成功した経営者が成功の要因を聞かれて運が良かったと答えているのは謙遜している面もありますが、自分より努力をしている優秀な経営者や技術を持っている企業になぜ自分が勝ち残れたかと考えたときに、やはり判断が正しかった(運が良かった)という正直な感想だと思います。
 企業を急成長させるような破天荒な経営者は必ず不安定な市場で勝負します。銀行業界で急成長している新興企業は皆無ですが、IT業界には急成長企業は当たり前です。その経営者は庶民であることが多いです。孫正義さんがいい例です。

 ところが最近の若者は(若者だけでなく高齢者も)、安定志向で不安定な市場や企業を避ける傾向にあります。これは長い間デフレ経済下で、低成長かマイナス成長の経済に慣れてしまい、リスク回避傾向が強くなったせいでしょう。また、マニュアルがないと仕事ができないとか、自分の作業や責任範囲を明確にしたがる若者も多いです。また中小企業の経営者が高齢化し、さらにデフレ経済下では値下げとコストダウンでやってきたというつまらない成功体験(失敗しなかった体験)にとらわれて、値上げや投資などのチャレンジをしていないため、デフレ不況がさらに長引くという悪循環が続いてきました。利益を出すために賃金カットや投資抑制をしてコストダウンをするのは各企業にとっては正しい戦略ではあったのですが、日本企業の全社がそれをやると不況になってしまいます。まさしく合成の誤謬です。
 

※合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)
個々のレベルでは正しい対応をしても、経済全体で見ると悪い結果をもたらしてしまうこと。例えば、景気悪化に対応して企業が一斉に費用削減を行った場合、経済全般がさらに悪化してますます企業業績が落ち込むようなケースが該当します。また、大多数の個人が消費を節約して貯蓄に励むと、景気が悪くなってその人の給料が減り、貯蓄を取り崩すことにつながるケースもあります。

日本経済全体から見るとデフレ経済は次のようになります。
売上減→値下げ→賃金カット&投資抑制→利益確保→賃金カットによる購買力減→売上減→値下げ
この賃金カット競争を30年間やってきたのが日本企業です。インフレにするためにはどうしたらいいかということで、アベノミクスが目指していたのは賃金UPと投資です。
値上げ→賃金UP&投資→賃金UPによる購買力増→売上増→投資需要による売上増→値上げ→賃金UP&投資

 これが政府の経済界に対する賃上げ要請の根拠です。賃金UPをするには値上げが必要、そうすることによってデフレを退治するというのが狙いです。ただ、あくまでも値上げは賃金UP&投資のためですので、企業利益や経営者の報酬だけを増やすために使わないようにしてください。企業利益や経営者の報酬だけを増やしても購買力増の効果が小さくなり、インフレ効果が出ないことになります。
 何に投資したらいいかわからないという経営者もいるかもしれません。そういう経営者は引退された方がいいかと思います。日本には投資も雇用もしないじり貧のゾンビ企業がたくさん存在し、中小零細企業に対する税制上の優遇措置に守られて廃業も倒産もしないため、新規企業の市場参入の阻害要因となっています。起業家精神のない経営者は後進に道を譲るか、廃業をして日本経済の新陳代謝に貢献すべきだと考えます。過激な意見かもしれませんが、そんなゾンビ企業だけになってしまったら日本は恐ろしいことになると思いませんか?これも合成の誤謬です。厳しい事を言うようですが、資本主義に反することをすると社会のためになりません。

 そして、日本経済社会の閉塞感はかなり高まっているようです。上述の中学の同窓会で政治の話になり、日本の国会議員はなんであんな酷いのばかりなの、自民党だってどうしようもないぐらい酷いという話になりました。群馬県でもろくな政治家がいないので、最近は選挙には行ってないという人が結構多かったです。利益誘導型、政治団体主導型の利権議員ばかりで国民生活の向上や世界平和への貢献などを実現してくれそうな人はいないので、投票する気になれないということでした。そこで私は世襲議員が多すぎるからという意見をしました。群馬県は保守王国と言われますが、世襲議員が多すぎます。金儲けのために政治を仕事にしている世襲議員には投票しない、せめてそのくらいはやらないとねっと意見を言いました。世襲議員はその存在自体がまさしく既得権益であり、それを支える後援会の人たちの既得権益を守ることにその存在意義があります。そのため、国家の大計よりは既得権益の保全のことを優先してしまします。わかりやすく言うとしがらみにどっぷりつかっているのです。一方で、政治こそ非定型的な判断の連続です。前例のない新しいことをやるかやらないかを判断するのに世襲議員が決めるのは非常に恐ろしいと思います。世襲を廃止して、政治団体や支持基盤の相続をできないようにして、同じスタートラインから政策と本人の人柄だけで競争を勝ち残った人に政治をやって頂きたいと思います。日本の国会では世襲議員は自民党で約30%(閣僚級自民党議員だと50%前後)だそうです。世襲議員は若くして議員になれるので閣僚になりやすいというメリット(弊害?)もあります。
 この話を同窓会の2次会でした2週間後には百田尚樹氏が百田新党を立ち上げ、世襲議員が多すぎるから減らしますと宣言してくれました。

 「僕の会社は建設会社だから○○議員を応援しないと、来年の受注が取れなくなるから、応援しますよ」という経営者もいます。そういう投票行動を日本人全体がやったら利権議員ばかりになって、日本は土建国家になってしまいますね。これも合成の誤謬ですね。誰かに泣いてもらわないと全員が損をするのです。
 夏休みの間、こんなとりとめのない事を考えていました。

 さて、最後に税理士法人らしいニュースを一つ。
 来月10月1日からインボイス制度がスタートします。課税事業者の皆様はもう準備終了されていると思いますが、免税事業者の方はインボイス制度に登録するか否かで迷われている方も多いと思います。
 登録をしない場合には免税事業者のままとなりますが、免税事業者からの仕入れについても、制度実施後3年間は消費税相当額の8割、その後の3年間は5割を仕入税額控除が可能です。
 インボイス発行事業者として登録すれば課税事業者として、売上にかかる消費税の2割を納めることになります(簡易課税の小売事業者と同等)。一方で、免税事業者からの仕入れでは消費税の全額を仕入れ税額控除ができます。
 つまり、売上先が消費者または免税事業者に対する売上だけという人は今まで通り免税事業者のままで問題はありません。また売り先が売上高5000万円以下で簡易課税を選択している場合にも今まで通り免税事業者のままで問題ありません。
 登録を考えなければならないのは売り先が売上高5000万円超または本則課税の事業者の場合です。売上が990万円の場合、当該企業の納付すべき消費税額および売り先における仕入れ税額控除額は以下のようになります。

注)免税業者からの仕入れについて制度実施後3年間は8割=72万円、
その後の3年間は5割=45万円を仕入税額控除が可能

 ということで、売り先が本則課税をしている場合には、事業者登録をした方が得になりますが、このインボイス制度については各方面から反対の声が上がっており将来がどうなるかわかりません。またインボイス制度の実施を契機として取引条件等を見直したりすることは下請け法や独占禁止法の違反ですので、売上が減少するなどの影響はないかと思います。なので、無理に発行事業者登録をする必要はないでしょう。

ぐんま税理士法人
代表社員 小林浩一


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