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ぐん税ニュースレター vol.31 page03 -社会保険労務士の部屋から-

出産育児一時金

2023年4月から出産育児一時金が50万円に引き上げられます。平成6年創設当時は30万円でしたが、その後、平成18年に35万円、平成21年1月に38万円、そして平成21年10月に42万円と段階的に増額されてきました。
金額の引き上げと並行して、直接支払制度なども導入され被保険者や会社が請求手続きをすることはありませんが、社会保険雇用保険の各種の給付金や手当金の中では唯一定額支給のもので、改定のたびに『また上がるのか』と思っていましたが、今回8万円の引き上げは、制度創設以来最大です。また、支給額も創設時から29年経過で20万円増です。29年というとちょうど母子の出産年齢くらいの隔たりで、『お母さんが出産した時は30万円だったんだって。私は50万円もらえるけど』ということならあり得る話でしょうか。

厚生労働省の資料によりますと、令和3年度までの10年間で、出産費用(正常分娩)は年間平均1%前後で増加しているそうです。毎年1%でもコンスタントに値上げできるなんて私たちの業種では考えられません。廃業したり業務提携する産院や医療現場の人員不足のニュースなど時々耳にしますし、体制維持のために必要とは言え、値上げしても、一時金が増額するだろうという期待も背景にあるのでしょう。
また別の資料によりますと、公的病院の都道府県別の出産費用の平均値は、一番高い東京都の553,021円に対し、一番安いのは佐賀県で、なんと351,774円です。そして令和2年度の数字ではありますが、47都道府県のうち50万円超えは東京都と茨城県のみです。これだけ格差がありながら、現行通り全員に定額支給なのは疑問で、どうしてもっと公平な制度にしないのか、と私でも思います。
このあたりの整備も、4月に新設される子ども家庭庁に大いに期待したいところです。 

出生時育児休業

出産育児に関しては、育児・介護休業法も改正が重ねられており、2022年10月施行で大きく変わったことの一つは、出生時育児休業(産後パパ育休)の新設です。『育児休業』とは、原則的には女性の産後休業8週間の後に始まるものでしたが、出生時育児休業とはこの産後休業8週間の期間中に、男性が取得可能な休業で、一定の条件のもと、休業中の就業も可能です。

厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイント」より

育児休業の取得についての選択肢が増え、社内規定の整備や周知も必要ですし、手続きもなかなか煩雑で、事業主側からすれば大企業でないと対応しきれない、と悲鳴を上げるところですが、労働者側にはそんな事情は関係ありません。どこに勤務していようが、育児をする親として同じ権利を持っており、堂々と休業申請をしてきます。
前回話題にした有給休暇しかり、ワークライフのバランスがこれまでとは反対側に傾いているのを感じずにはいられません。育児中の親が、特に就学前の子どもと共に過ごす時間が増えることには私も賛成です。積極的に育児休業を取得することが、心身ともに健全な子どもの育成に寄与することを願うばかりです。

社会保険労務士 高橋

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