見出し画像

人が多くいるから売上がたつ、に欠けている視点|週刊小売業界ニュース|2024/7/8週

2024年7月8日~7月14日のアメリカの最新ニュースから、
最近の小売り業界について紐解いていきましょう。

今週のおさらいに、ぜひどうぞ!


ニューヨークの駅構内にある小売り店は、75%ものテナントが空室状態 - The New York Times

<記事の要約>
店主たちが駅構内のテナントに惹かれたのは、顧客となる乗客の数が多いからだ。ニューヨークでは昨年、平日に約360万人が鉄道を利用した。しかし店主たちは「彼らは駅を通って家に帰るために歩いているのです。」「通勤途中に立ち止まって、200ドルのサングラスを試着するでしょうか?」と気付く。
リース・ヒル氏は2016年にマンハッタンにある駅構内にオーガニックレストランをオープンした。ヒル氏によると、市内で最も混雑する駅という立地だったにも関わらず、一度も黒字になったことがなかったという。同店は翌年2017年に閉店した。ヒル氏は「窓のない場所で食事をしたい人がいるだろうか?」と話す。


ECサイトで最大規模だから、とりあえずAmazonに出品しよう。
若者をターゲットにした商品だからショッピングモールに出店しよう。

アイデアの入口としては、このような発想もよいでしょう。

しかし、具体的な数字まで落とし込むプロセスであったり、
出店予定地の実際の消費者にヒヤリングするプロセスなどを
省いて施策を実行してしまうのは、とても危険
です。


あなたの商材を届けたい顧客は、そもそもそこを訪れるのでしょうか。

その顧客は、顧客プールにどれほどの規模いるのでしょうか。

顧客は、事業を黒字にするほどの単価をもたらすのでしょうか。


特集記事では、
平日に何百万人もが利用する巨大駅でも
顧客理解・市場理解を誤れば、
事業が黒字になることはない

という実例を突き付けています。


例えば駅ナカに飲食店を出店する場合を考えてみます。
駅ナカで飲食をしたい潜在消費者は、駅を訪れているのでしょうか。

特集記事では

「彼らは駅を通って家に帰るために歩いているのです。」

という指摘があるように、
ゆっくりと食事を楽しむ層は駅ナカには少ないかもしれません。

逆にSubwayの事例にもあるように、
手早く機能的に食事を済ましたいと
考える層は駅ナカに大勢いるのでしょう。

退店した特集記事のレストラン元オーナーは

「窓のない場所で食事をしたい人がいるだろうか?」

と指摘していますが、

窓のある場所で食事をしたい人が
ターゲット顧客であったならば、
オーナーがこだわったであろう
価格や味の改善も客足とは無関係。

そもそものターゲットの設定、
またはターゲットが訪れる立地

見誤ったと分析せざるを得ません。


物販のお店を出店する場合も同様です。

商品は用途と購入頻度という側面から、

  • 最寄り品

  • 買回り品

というカテゴリーに区別されることがあります。

最寄り品とは、習慣的に購入するような商品です。
日ごろ購入する飲食品やティッシュなどの雑貨が挙げられます。
単価は低いほど印象がよく、購入頻度は平均して高いです。

買回り品とは、顧客が主体的に比較し購入する商品です。
衣服や家電などが挙げられ、価格と機能のバランスが重要となります


特集記事には

「通勤途中に立ち止まって、200ドルのサングラスを試着するでしょうか?」

という指摘がある通り、
買回り品を駅ナカで購入したい/しようと
考える顧客は少ない可能性が高いです。

逆に、駅ナカスーパーなど帰宅道中に
機械的に最寄り品の買い物を済ませるという
需要を持つ顧客は大勢いるのでしょう。

大勢の人が行きかう駅ナカにおいて
物販店であってもターゲット顧客が
豊富かどうか分からないということになります。


顧客の生活やニーズ、出店を想定する場所での顧客の関心事など
顧客理解および市場理解を避けて出店戦略は立てられません

顧客が訪れる潜在性を定性的に吟味して出店をシミュレーションし
損益分岐点を超えるための客数や単価を定量的に逆算することが、
当たり前に聞こえますが、出だしを外さないために極めて重要です。



<担当者からの一言>
人がたくさんいるからといって自然と売上があがるわけではない、という現実を提示している事例だと思います。日用品だからといって、考えもなしにAmazonや楽天市場で売るのはどうなのか。飲食品だからといって、ショッピングモールのフードコートに出店するのはどうなのか。
一見当たり前ですが、事業の採算性を考えるうえで理詰めしきるのが面倒に感じるあまり、「潜在顧客のパイが大きい(実は潜在顧客でなく通り抜けてゆく人たち)から、当社選択率がこんなに低くても損益分岐は超えられる!」と思考を放棄してしまいがちな顧客・市場理解に、メスを入れる記事だと感じました。



★今週のアメリカ注目記事★

  1. なぜWalmartの戦い方が、ヘルスケアサービスの展開には不適合だったか - WSJ

  2. 小売りで成長したAmazonが、今や在庫倉庫の建設よりもAIへの投資に注力する理由 - WSJ

  3. 休暇シーズンのアクティブな消費者はPinterestでの支出を増やす | Retail Dive

  4. 量販店、Sam’s Clubの会員売上は、Z世代やミレニアル世代により増加 | Retail Dive

  5. 生地やクラフト素材の販売店大手、米 JoannがZ世代向けのブランドキャンペーンを展開 | Retail Dive

  6. 米Target、自社PBである「Auden」ラベルで新たな下着とパジャマを発売 | Retail Dive



▼▼▼その他の記事も是非!▼▼▼

関連のある記事

前週のアメリカ特集記事

私たちの価値観について


#出店戦略 #立地戦略 #立地 #出店 #消費者 #駅 #駅ナカ #テナント #店舗戦略 #ショッピングモール #買い物 #買い物客 #買い回り品 #最寄り品 #商店街 #消費者 #小売 #小売り #マーケティング #デジタルマーケティング #Webマーケティング #SNSマーケティング #ブランディング #グロースエンジン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?