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毒親育ちが自分本来の誇りを取り戻すために  ⑰

あなたも過去を水に流せるかい?


父が他界してまもなく、きょうだいから「今までのことは水に流そう」と言われたことがあった。


その言葉は、半分共感できて、半分共感できなかった。


共感できないのは「なんかしっくり受け入れられんわ」だった。



(「許す」ことの難しさについては別のブログに書いています)


半分共感できる方の気持ちとしては

きょうだいもある意味で毒親育ちの被害者であるからだ。


だからといって下手な同情は禁物なのだけど。



付き合いの期間や密度によっても「どこまで一線を超えたら相手を許せるのか」というのは違ってくる。

自分の許容範囲はその時その人で関係性によるということだ。


付き合いの浅い他人だったらあり得ない事でも、長く一つ同じ屋根の下で愛憎劇に揉まれてきている家族だと感覚が狂ってしまっていたのもあると思う。



だから「水に流す」という表現がそこまでピンとこなかった。


流せるか流せないか、まで考えられるほど時は経っていない時点で余裕のない状態だったということもあるかもしれない。


イエス、ノーで即座に答えが出せるほど簡単なことではない気がする。



自分と人を同等な存在として大事に考えたなら、きっとそれはごく自然な感情だ。


関係修復をしたくても、相手と自分の気持ちの折り合いをどこでつけていくのかを探っていく時間は必要だろう。


機械のリセットボタンではないので、要求を示すボタンを片方が押したからといってもちろんその後の関係が自動的に修復されることが成立するわけではない。



逆に考えると、なぜそんなことを軽々しく言えてしまうのだろうか。


自分は大してダメージを負っていない時でないと、もしくは相手を軽んじている時でないと、そういう言葉は出ないんじゃないかなと私は思ってしまう。


それは私の感覚だから相手はまた違う言い分があるのかもしれないけど。


でももし逆の立場だったら、そんな事を言おうものなら怒り狂って殴りかかってくるかもしれないのに、とも思う。


きっと、母やきょうだいの信仰している宗教の教えの影響も関係しているのだと思う。



母ときょうだいの信仰している教団の教えに

「恨みつらみも持ち続けていては平和とは程遠い世界である。人間の過ちは全て祈りで消し去ることが出来る」というものがある。


だから、母もよく「そんな過去の話をいつまで引きずっているのだ」「まだそんなことを言っているのか」「全て消えていく業なのだから」「全ては‘今‘が大切」と口癖のように言い、全てを抹殺するかのようにすぐにお祈りを始める。



そして自分達の数々の言動は、自分達に都合のよい風にリセットボタンで消し去られる。



そのわりには、母もきょうだいもそれぞれ別に、ずっと根に持っているそれぞれの親類問題や対人関係については、ごく普通に執念深く恨みつらみを引きずっていたりする。


そこのリセットボタンについてはどうやら壊れているらしい。



人って所詮そんなもんじゃ?と思ってしまう所以もこういうところにある。


何十年もそんな姿を見てきて感じるのだが、シンプルに「感情」にちゃんと寄り添ってあげる事をせずに綺麗事で抑えつけようとすると、物事がとっても複雑に絡まっていってしまう気がする。


教団には申し訳ないが、平和とは程遠い説得力のない信者達だと思っている。


同じ御教えでも解釈する人により様々だと思うし、また違う信者さん達もいると思うので、教団や宗教自体を非難したいわけではない。


うちの母の姿を見ていると、なんというかとっても囚われて息苦しくて、自分と周りの首を絞めている感じがするのだ。

人間てもっと「人間」らしく泥臭くて自然でいいんじゃないかと私は思う。



だが、向こうから見るとそういう私は物事を単純に考えられない人間で複雑にすると思っているらしい。


簡単にリセットボタンで消せたらどんなに楽か、その難しさも自分達でよく分かってるんじゃないでしょうか、と思う。


人って自分がされたことはよく覚えているけど、した方は案外覚えていないものだ。


そのリセットボタンを使えるのなら、自分がした事だけでなくて、されたことも消した方が楽になれるわけなのに。


自分達にとって都合の悪い事だけ、相手に「消す」ことを要求するって、そもそも人としてどうなんだろうと思ってしまう。


そんな魔法みたいなリセットボタンがほんとうに存在してしまったら、この世は平和になるのだろうか。


人の心の機微はどこへ行ってしまうのだろうか。


その時にその世界に存在しているのはもはや人間ではなく、簡単にリセットボタンで記憶を消去できる心のないロボット達なのかもしれない。


そんな世界は怖くて住みたいと私は思わない。




続く








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