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コロナウイルス連作短編

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#短編

コロナウイルス連作短編その217「広背筋、大円筋や僧帽筋など」

 西東薫は,今バガンド・ガジイェフという男に自分の首筋が荒々しく貪られている状況が夢のよ…

コロナウイルス連作短編その216「どこか、より安心できる場所」

とうとうですよ 湖東優 とうとう 妻の湖東釈 妹の騎子 彼女のパートナー富士見野わかば 彼らに…

コロナウイルス連作短編その202「バーミヤンのあのCMの曲」

 頭のなかで何の脈絡もなしにとある曲が響きはじめると,そんな瞬間が間藤麻にはある.まるで…

コロナウイルス連作短編その145「あなたをかぎとる」

 とはいえ、茂刈唐はグエン・フォン・デルモンテと家にかえる。雪がちらつく頃、ニューヨーク…

コロナウイルス連作短編その144「本当に優しい子」

 しかし午後8時、宵川真昼が家に帰ってくる。「ただいま」と言うと、くぐもった返事がリビン…

コロナウイルス連作短編その94「クソみたいなこと言ってやがる」

 藤棚真嗣は自閉症スペクトラム障害を患っており、これが自分の生きづらさと苦痛の源であると…

コロナウイルス連作短編その92「俺も結構、黒人」

 吉武瑛士はよく"黒人のハーフ"と間違われるが、ただ肌の色が濃いだけだ。もしかするとアフリカ系の血が流れているかもしれないが、両親は純粋な日本人に思える。それでも彼らの肌は白人よりも白く、言い換えればアジア系に典型な病的青白さで、何故自分の肌だけがここまで黒いのか判然としない。"黒人のハーフ"と呼ばれる気分は悪くない。彼は日本で黒人が差別されるなど戯言としか思わない。確かに彼の通う中学にも"黒人のハーフ"がおり、実際虐めとは言わずともいじられの対象となっている。だがそれは"黒

コロナウイルス連作短編その89「1つの時代、肉体」

 志路摩誠は恋人である常川弓のヴァギナから自身のペニスを引き抜く。この行動で"もう絶頂に…

コロナウイルス連作短編その88「母の日」

 深夜、白井コウは一心不乱に車を走らせる。遺骨さながら乾き切った彼女の両腕はハンドルと既…

コロナウイルス連作短編その87「チェコの肉の塊」

 夕食にスパゲティを食べている際、小室安渡は突然皿に頭を突っ込んでそのまま動かなくなる。…

コロナウイルス連作短編その86「モザンビーク、ギニアビサウ」

 家庭教師として穂堂武瑠は、教え子の1人である堂崎ミウの勉学へのやる気のなさに呆れ果てて…

コロナウイルス連作短編その85「良心なき世代」

 前田圭は食器棚から1枚の皿を取り出す。それは大分県で作られた小鹿田焼の大皿で、半年前に…

コロナウイルス連作短編その84「キルギスの兄弟」

 夕食を摂取した後、小山田箔は眠るまでの5時間延々と、永遠とガムを噛み続ける。彼はクロー…

コロナウイルス連作短編その83「ずっと前から知ってたんだよ」

 朝、窓辺で掠れた陽光を浴びるプロリフィカ錦の美しさに、正角浅葱は見惚れる。その柔らかに膨らんだ肉厚の葉々は、まるで互いを慈しみあうように優雅に重なりあい、それを愛おしく思わずにいられない。その柔らかさを覆う薄い緑の色彩、そこに初冬の細雪さながら淡いピンクの彩りが振りかかっている。とても小さな存在だったが、見ているだけで心が静寂のなかで洗われる。  このプロリフィカ錦を育てることは、今の彼にとって日々の癒しになっていた。延々と、永遠と這いずり終りの見えないコロナ禍、その閉塞感