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コロナウイルス連作短編

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2020年5月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その26「やっぱり黒人っていうのは最高だよな」

 勝俣空はTwitterでアメリカのミネアポリスで起こっている暴動の写真を見つけた。それは日常…

コロナウイルス連作短編その25「ノエはワガママ」

 赤迫広恵は恋人である瀬戸ノエの首の上にのしかかる。その強烈な重さに、ノエは息ができなく…

コロナウイルス連作短編その24「ビリー・アイリッシュ」

 須加武史はビリー・アイリッシュの動画を観ながら、オナニーを始める。その動画においてビリ…

コロナウイルス連作短編その23「黒が駆けぬける」

 兼坂郁人は馬が飼育場から逃げて、現在逃走中であるというニュースを見た。そして興奮を抑え…

コロナウイルス連作短編その22「ヴィマラ・モレイラ」

 晴れやかな朝だった。だが曖昧なものが渦を巻いていた。ヴィマラ・モレイラは起きあがると、…

コロナウイルス連作短編その21「五月の蚊」

 動物園から巨大なニホンザルが逃げたというニュースを聞いてから、菅沼大典は寝室に行く。最…

コロナウイルス連作短編その20「このまま世界が終わればいいのに」

 刺すような暑さに、思わず私は目覚めてしまう。今はまだ五月なのに、妙に鋭さを増した暑さが雨のように町へと降ってきている。私には、全身の細胞が悲鳴をあげているのが聞こえる。こんな暑い日には出かけるべきだろうけども、今はコロナウイルスが猛威を振るっているから、どうしても躊躇ってしまう。だからしばらく私は家にいた。朝食を食べて、学校の宿題をして、Youtubeで動画を観る。だけど常に暑さはそこにあった。そして私に思わせぶりな視線を送ってくる。だから最後には我慢できなくなって、外へと

コロナウイルス連作短編その19「生きている、生きている」

 久遠ダーグは自宅で仕事をしていた。キーボードを叩きつづける間、外からは騒音が聞こえてく…

コロナウイルス連作短編その18「鴨のように飛ぶ」

 苗加梢は思いたって仕事中に酒を飲んでみることにする。もちろんオフィスで仕事をしていたら…

コロナウイルス連作短編その17「ご協力のほど感謝いたします」

 午後、磯貝摩耶は成宮大学へと電話をかける。背中がとても痒く、まるで細胞が蛙の死骸のごと…

コロナウイルス連作短編その16「#検察庁法改正案に抗議します」

 “#検察庁法改正案に抗議します”  曽根山幹弥の好きなアイドルである須藤瀬波がTwitterで…

コロナウイルス連作短編その15「布マスク2枚」

 仕事からの帰り道、鹿沢淳吾は公園に差しかかる。そしてそこに何者かがいるのに気づいた。今…

コロナウイルス連作短編その14「俺が禿げるわけないだろ」

 神藤徠がお風呂場で髪の毛を洗っている時、ふと手を見ると手のひらに大量の毛が付いているの…

コロナウイルス連作短編その13「うんこちんこまんこ」

 軽部朝坂はZoomを使って上司や同僚と会議を行っていた。最初はぎこちない雰囲気の中でそれは行われていたのだが、ある時彼女の友人である井浦さやかが笑った時から何かが変になりはじめた。他の出席者もまるで伝染病に罹かったかのように軽く笑いだし、雰囲気が怠惰なものとなってしまう。朝坂は意味が分からないまま、鼻を掻いた。“もしコロナウイルスが鼻の穴から入ったら?”という考えが頭に突然湧いてきて、急いで手を引っこめる。 「どうしたんですか?」  我慢できずに、朝坂はみなに理由を尋ねてみ