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たりない、の魅力。

人間としての「たりなさ」を日々感じている。
どんな環境に身を置いても、それは変わらないものなんだろうと思う今日この頃。

そんな私が数年前に好きになった番組がある。

2012年に始まった「たりないふたり」という深夜に放送されていたバラエティ番組だ。

南海キャンディーズの山里亮太さんと、オードリーの若林正恭さんでユニットを結成し漫才をするという内容。

人見知りで心に闇を抱えたふたりが、人間としての「たりない」部分をさらけ出す、というもの。

社交性も社会性も恋愛もたりてないふたりのエピソードが痛快で、私はすぐにファンになった。

例えばテーマが『飲み会』の回では、

【早く帰るテクニック】
・その①
「僕デザートいっていいですかー?」と言うことで店員さんが周りのお皿を下げ始めてくれるため、終わりそうな雰囲気を作れる。(グッバイ。カチカチになったつくね)

・その②
話の途中でジャケットを羽織ってあたかも帰りそうな雰囲気を出して察してもらう。(通称ジャケットプレイ)

・2次会をかわすとき
エア知り合いを見つけたフリして、その場をナチュラルに離脱。

他にも、
会社の先輩に「私ってもう若くないし、、」や
「俺なんて誰からも尊敬されてないからさ、、」など
「そんなことないですよ~」としか返しようがないセリフにどう立ち向かうか。

などのテクニックを披露している。
(彼らの中でこれを『銃口ワード』と呼んでいる)

くだらないんだけど、、私のツボにめちゃくちゃハマった。

ただの悪口や自虐なんかは悲壮感しか生まないけど、このふたりの手にかかればそんなネタでも大笑いできてしまう。

前半はテーマに沿った自分たちのエピソードを出し合い、後半はそれをネタにしてオリジナルの新作漫才を披露する。

その漫才の完成度たるや。

前半のエピソードを上手く盛り込みながら、若林さんがはちゃめちゃにボケて、山ちゃんがキレの良いツッコミを入れる。
恐ろしいほど息の合った、でも緊張感のほとばしる、熱い熱い舞台である。

本当にこの人たち天才だな。。とつくづく思う。

でも本人たちはそんな世間の評価を尻目に、とてつもない努力を続けてきたように感じられる。

私が努力とか言っちゃうとなんだか薄っぺらくて申し訳なく感じるけれど。。

山ちゃんは、自らのドス黒い嫉妬をエネルギーに変えて、都度自分のパフォーマンスを鬼のように見返しながらノートに綴っている。

若林さんの斜に構えた物言いからは、何かを諦めているようで、でも決して諦めていない、確固たるお笑いへの純粋な想いが伝わってくる。

才能やセンスに甘んじることなく、貪欲にお笑いに向き合っているふたりに、なんだか私はグッとくる。

そんな番組を動画配信サービスで知った私は、次回作は今か今かと待ちわびていた。

しかし、更新されることなく数年が経ち、すっかりその番組のことも忘れてしまっていた。

でもつい先日、『たりないふたり』が5年ぶりに復活!という文字を目にした。

2019年11月「さよなら たりないふたり」ライブイベント開催。

えー!いつの間にか復活してる!

その後に公開された
「たりないふたり2020〜春夏秋冬〜」という新しいシリーズもはじまっていた。

食い入るように、すぐにそれらの動画を見た。
この感じ、懐かしい。。

結果、久しぶりに大笑いした。

環境の変化に戸惑いながらも、熱い笑いを求めるふたりが、センターマイクに立っていた。

この8年ほどで、彼らの立ち位置も大きく変わってきている。

ひな壇芸人としてどう立ち振る舞うかを話していたあの頃から月日は流れ、
今ではもう実力を認められ、番組MCを受け持つほどになっている。

先輩との付き合いや、ワイプでのリアクションについてあれこれ言っていたエピソードは、
後輩たちにどう見られるか、MCとしてどう振舞うか、などの話しに変わりつつある。

でも、センターマイクの前に立つふたりは、昔と何も変わらない。

きっと今も根底には劣等感や葛藤が渦巻いている。

そんなネガティブから生まれるとてつもない熱量が、視聴者の心をヒリつかせる。

若林さんは、度々名言を連発する。

『人間は常に新しい環境の新人です。』

彼らは「たりない」から卒業するのか?と思われた矢先、
このセリフで第2章が始まる。

足りてる足りてないとかじゃない。常に足りてない。
新しい足りなさがあるでしょ?と続ける。

結婚しても、MCになっても。

ネガティブを一周したふたりは今、新たな境地に立っているのかしら。

でも、変わらないものもある。

どうかいつまでも、たりないままでいて。
そんなネタで私を笑わせてほしい。

読んでいただき、ありがとうございます。

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