オリジナル ショートショート いつか、の、じけん ~あの世でもBBQ~
『三輪さん、亡くなったらしいで』
大学時代の同級生の理恵から、何年ぶりかに電話がかかってきたというのに、内容は訃報だった。
美輪さん? はて…
しかし、なぜ、いきなり美輪明宏の話題なんだろうか。
私はやや戸惑いながら、返した。
『まあ、ああいう感じの人だったから、病気の話もちらほら出ていたような気もするよね』
『? ああいう感じ? なんのこと?』
『えっ? まあ、ほら、ちょっとあの、あっち方面というかさ』
『何よ? どこ方面よ?』
『いや、だからさあ、LGBT系の、さ』
『ええええ!? 三輪さん、そうやったんか! 全然気付かんかったわ!』
『はあ? 日本人全員知っているもんだと思ってたけど・・・』
『いやいやいやいや!! いつからそんな話あったん? 入学当初から?』
『? いや、あの人の話だから、ウチらが物心ついた時には、知れ渡っていたじゃんか』
『知れ渡るって、同級生の私は知らんかったで!!』
『・・・同級生? 何言ってんの、理恵? 美輪明宏がウチの大学に在籍してたわけないだろ!』
『・・・あんなあ、三輪さんって、美輪明宏なわけないやろ! ウチらの同期だった三輪さんのことや!』
理恵は私の勘違いに呆れかえっていた。
『! ああ~、三輪さんね! 回り道して、老けていたあの三輪さんのことか!笑』
『ホンマにアホなんか!?』
『いや~、失礼、マダ~ム! 三輪さん、確かに老けてはいたけれど、びっくりだなあ。誰に聞いたの?』
『昨日送られてきた校友会誌の「逝去」の欄に載っとったわ』
『じゃあ、単なる噂じゃないな。間違いの無い話か・・・』
『まあ、人間、いつどうなるかなんてわかれへんもんやし、あんたもこっちへ来ることがあったら、ご飯しようや』
『そうだね。来月の出張がちょうど大阪だから、飲もう。また、連絡するわ』
娘も起きてきてしまったため、私はしんみりしながら電話を切った。
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翌日も、三輪さんのことは何だか心に引っかかっていた。
そうか、少し上だったとは言え、もう、同級生で鬼籍に入る人も出てくる歳に自分もなったんだな、と感慨に耽りながら、三輪さんのフェイスブックを開いてみた。
最近はどんな暮らしぶりだったのだろう。
あまり真面目な方ではなかったので、仕事は大丈夫だったのかな・・・
妻や子供も居たのかもしれない。
さぞ、無念だったろうに・・・
開いた画面は、今日の日付で更新されていた。
そこには、最高の笑顔の三輪さんが居た。
今日は、みんなで箕面に来てまーす!
BBQ、最高!!
私は静かな怒りに震えながら、校友会事務局へ電話をかけた・・・
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