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第壱話「ウメ、伝来」

早春を告げる梅の花.
本記事では,お花見に先立ち,
1. 梅の開花時期や,2. 花見の歴史,3. 梅の起源
について述べる.


1. 梅の開花

梅の花がぽつぽつ咲きはじめ,春立つ2月の訪れを感じる.
すでにミツバチは働きだして,ヒヨドリの声もここちよい.

梅前線は,徐々に日本を北上している.

ただし開花日は,地域だけでなく,木によっても大きく異なる.

並びたつ梅

左の紅梅はすでに五分咲きの勢いだが,右はまだ開花していない.
奥には一分咲きぐらいの白梅がある.
右も白梅だと思うが,満開になるころに,また見にいこうと思う.

2. 花見

お花見と言えば,誰もが桜を見る会を思い浮かべるだろう.
ところが,花見文化のはじまりは,桜ではなく梅だったようだ.

花見の起源は,奈良時代の貴族にまでさかのぼると言われている.

遣唐使で有名なように,奈良時代の日本は,積極的に唐(現:中国)の文化を取り入れていた.
梅もその一つとされ,奈良時代以前に中国から日本へと伝来したようだ.

中国かぶれの貴族たちが,まだ中国のイメージが強かったであろう梅を庭木としてそだて,初春には優雅にお花見を楽しんでいた光景が,ありありと目に浮かぶ.

ところが,鳴くよウグイス平安京の平安時代に入って,梅にかわり桜が花見の対象になっていったと考えられている.
平安中期に唐風文化から国風文化へと遷移し,日本が中国から独立していこうとする時流の中で,中国の梅から日本の桜へと植え替えられていったものと推察する.

そうして花見=桜が国風文化の象徴的存在となり,現在にいたる.
しかし,梅が帰化した今となっては,梅=中国のイメージはないのだから,あえて梅の花見を避ける意味も,もはやなかろう.

2月〜3月には梅の,
3月〜4月には桜の花見をすればええじゃないか

仕事終わりにお花見できるほど日がのびた

梅の花は,満開になってもすぐには散らない.
お花見も,桜より気長に楽しめるだろう.

ウグイスの初鳴きも,そろそろだ.
梅の花を見ながら,ウグイスの声に耳を傾ける.
風流ここに極まり,春を感じられ癒されるに違いない.

梅にうぐいす
よい取り合わせのたとえ。仲のよい間柄のたとえ。

松村明:『大辞林 4.0』,(三省堂,2019).

ところで,一般的に「梅に鶯」として使われている画像の鳥は,ほとんどがメジロだ.
メジロは,その名のとおり目のまわりが白く,体はウグイスよりも鮮やかな黄緑色をしている.

メジロが2羽,どーこだ?
体毛も羽もうつくしい
次の瞬間,上の枝に飛びうつる
あらゆる角度で蜜を吸うアクロバティックなメジロ

メジロと違って,ウグイスは警戒心が強く,色もにぶくて目立たない.
ただ人生で一度くらい,本物の「梅と鶯」を見てみたいものだ.

3. 梅の起源

前述のとおり梅は,ふるく中国から日本へと入った.
しかし,正確な年代はわかっておらず,古墳時代とも弥生時代ともいわれている.

日本で見つかっている最古の「梅」の字は,日本初とされる漢詩集:『懐風藻|《かいふうそう》』(751 年)に記されている.
葛野王かどののおおきみの「春日翫鶯梅(春日鶯梅をもてあそぶ)」と題する五言詩だ.
この頃すでに「梅と鶯」がセットで鑑賞されていたことがわかる.

また,日本最古の歌集:『万葉集』では,梅を詠んだ歌が 119 首もあり,桜の3倍にのぼる.

また万葉集は,現在の元号:「令和」の元ネタであります(菅並感).

万葉集には,「初春の令月にして 気淑きよく風やわらぎ 梅は鏡前きょうぜんひらき 蘭は珮後はいごこうかおらす」とある.
ここから引用した「令和」の考案者に関する,連日の不毛な報道は,記憶に新しい.

一方,原産地である中国における梅の記録は,210 年ごろに完成したとされる中国最古の薬物学書:『神農本草経しんのうほんぞうきょう』にまでさかのぼる.
牛首人身の医神:神農の名を冠した本書において,すでに梅の効用が説かれている.

このように,梅の実の効用は古くから知られていた.
梅の花をみて,昔の人々のくらしに想いを馳せるのもよいだろう.

4. 結び

本記事では,

  1. 梅の開花時期,

  2. 花見の歴史,

  3. 梅の起源

について述べた.

梅の花をみに散歩にいけば,ほかにも多くの小さい春を見つけ,よろこびを感じられるられるだろう.

体が丈夫ならば、食べて旨く、働いて快く、眠って愉しい。
空の蒼く晴れていることも美しいし、太陽の輝くことも心を明るくする。
花咲き、鳥歌うもよろこびである。
作られた楽しさを追い求め、汲々として苦しんでいる如きは、生くることそのものが欣びであることを体で感じられないからである。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房,2013),p. 34.

これから,梅の花は見ごろを迎え,その後はいよいよ実の収穫だ.
私の家でも毎年,梅干しをつくっている.
今回は梅の花に焦点をあてたが,こんどは梅干し愛をあつく語りたい.

次回「梅干し、伝承」。
この次も、サービスサービスぅ!


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